【医師監修】知らない人が半数以上!※妊婦健診での血液検査、何を検査しているか知っていますか?
妊婦健診で必ず行われる血液検査。実は血液検査の中でも、肝炎ウイルス検査について、妊婦さんの約50%が「肝炎ウイルス検査があることを知らない」と回答。今回は、「肝炎ウイルス検査」を中心に専門家の先生に聞きました。
※妊娠・育児中のママへの肝炎に関する意識調査 妊娠中、生後10カ月までの育児中の方
調査方法:たまひよインターネットリサーチ 2022年06月02日(木) ~ 2022年06月16日(木)有効回答数:353
★アンケートにご協力いただいた方には抽選でプレゼントも! ぜひ最後までお読みください。
お話を伺ったのは…
血液検査では主に何を調べているのですか?
考藤先生:妊娠中の血液検査は、妊娠初期に1回、妊娠24週から35週までに1回、妊娠36週以降に1回行われるのが基本。母体の状態はもちろん、妊娠経過に影響する病気や体質、胎内や産道で赤ちゃんに感染する可能性のある肝炎や風疹などの感染症や梅毒などの性感染症がないかを調べています。万が一、ママに何かしらの病気が見つかった場合に、適切な治療によって赤ちゃんへの影響を防ぎ、より安全な出産ができるようにするため、妊娠の早い時期に調べる必要があり、血液検査の多くは妊娠初期に行われます。
血液検査の項目にB型肝炎、C型肝炎ウイルスの検査があるのはなぜですか?
考藤先生:妊婦初期に行う血液検査項目の中に、B型肝炎ウイルス抗原検査、C型肝炎ウイルス抗体検査があります。B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスに感染すると、ある一定の割合でそれらのウイルスが残り、慢性的な感染状態、いわゆる“キャリア”になる人がいます。そして、キャリアの場合、肝硬変や肝臓がんなどの病気になる可能性があります。すでに治療をしている人も含め、B型肝炎、C型肝炎合わせて国内に約200万人ものキャリアがいるといわれていて、肝臓がんの原因のおよそ6割がB型肝炎、C型肝炎が占めています。しかしながら、肝炎ウイルスに感染して、深刻な状態になるまではほぼ自覚症状がなく、自分は健康だと思っていても実は肝炎にかかっていたということもゼロではありません。
C型肝炎の感染リスクはかなり低いですが、どちらの肝炎もママから赤ちゃんに感染する、母子感染がひとつの感染経路になるため、感染防止策として妊婦健診ですべての妊婦さんの感染の有無を調べているのです。
血液検査のどの記載を見たら感染しているかわかるのでしょうか?
考藤先生:肝炎に感染しているかどうかは、HBs抗原、HCV抗体という記載を見るとわかります。HBs抗原がB型肝炎、HCV抗体がC型肝炎の感染を示すものです。-(マイナス)であれば陰性、+(プラス)であれば陽性で、キャリアであることを意味します。HCV抗体が陽性の場合は、確認検査としてHCV RNA検査が必要となります。
自分が肝炎ウイルス検査で陽性だった場合、出産や産後はどうなるの?
考藤先生:検査の結果が陽性か陰性かは産婦人科の主治医の先生から説明があるはずですが、ママ自身も自分の結果がどうだったのか、関心を持ちましょう。検査の結果が陰性と覚えていれば、その後、肝炎ウイルス検査を受けなくても済みますから、意識しておくと安心です。
もし仮に結果が陽性だった場合はどうでしょうか?
考藤先生:B型肝炎のキャリアとわかると、出産後すぐ赤ちゃんにはワクチン接種とB型肝炎の抗体が含まれている「ガンマグロブリン」という薬が投与され、赤ちゃんにウイルスが根づかないようにします。この対策が始まってから、B型肝炎の母子感染はほとんどなくなっています。また、感染していない赤ちゃんは生後2カ月になると、住んでいる市区町村で、B型肝炎の予防接種を無料で受けることができるようになっています。C型肝炎の場合は赤ちゃんに対してワクチンで対処できないため、小児科で経過を見ることになりますが、母子感染は非常に少ないので心配しすぎることはありません。
注意したいのは、ママ自身の体です。症状がないと自分の問題として考えづらいかもしれませんが、ママがキャリアであれば、消化器内科などで精密検査(肝機能検査)をして、自分の状態知っておくことが大切です。精密検査は初回は無料で受けられます。妊娠中は薬を飲めませんが、産後、両肝炎とも飲み薬の治療でウイルスの排除や、増殖の抑制ができますから、それ以上に重い病気に進むリスクはほぼありません。症状がないと自分の問題として考えづらいかもしれませんが、赤ちゃんのためにもしっかり治療していきましょう。
ママが「陰性」でも要注意! もしパートナーや家族がキャリアだったら…?
考藤先生:ママは妊婦健診で検査を受けられますが、もしパートナーや家族に肝炎ウイルス検査を受けていない人がいたら、ぜひ受検をすすめましょう。調べてみると実はキャリアだったというケースは少なくありません。早期に発見して適切に治療すれば、重い病気は避けられます。感染の有無は一度の血液検査でわかります。40才以上であれば自治体の検診や、職場によっては健康診断で肝炎ウイルス検査を受けられる機会があります。地域の保健所でも年齢制限なく検査を受けることができますよ。
そこでもし、パートナーや家族がキャリアだとわかったら、やはり消化器内科などを受診して精密検査を受けて、肝臓の状態を調べて治療をスタートしましょう。
B型肝炎、C型肝炎ウイルスは血液を介しての感染、性交渉での感染もあります。夫婦のうちどちらかがB型肝炎またはC型肝炎の場合、感染を予防するためにはコンドームを装着するなどの対処が必要でしょう。その他のリスクを避ける方法としては、具体的には、かみそり、電動シェーバー、つめ切りなど、皮膚を深く切ってしまう恐れのあるものを共用するのは避けましょう。また、あまりないとは思いますが、歯ブラシの共用もやめましょう。
それ以外の、日常生活で一緒に食事をしたり、おふろに入ったり、トイレを共用したりすることは、まったく問題ありません。
母子の健康情報や検査結果が見られるマイナポータルでチェックする癖をつけて
母子健康手帳の改正が11年ぶりに行われ、現在は電子化が進行中です。肝炎ウイルス検査を含む妊婦健診の一部の情報は、2020年6月以降、マイナポータルを通じて、閲覧可能となっております。ママだけでなく、家族も自治体や健診実施機関で受けた検査結果等を自身のマイナポータルから見ることが可能に。家族みんなが自分の健康状態を手軽に確認することができるのはとても便利! 日ごろからチェックして、健康管理に役立てたいですね。
*「マイナポータル(情報提供等記録開示システム)」では、マイナンバーカードを使って行政機関(中間サーバー)から情報を取得して表示したり、行政機関でやり取りされた自身の情報を確認することができます。
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