【家電女優・奈津子】将来の妊娠に備えて受精卵を凍結保存。選択の理由と公表を決めた思いは…?
「家電女優」として活躍中の奈津子さんは、もうすぐ3歳になる男の子を育てるママ。このたび、将来の2人目妊娠に備えて、受精卵凍結をしたことを教えてくれました。受精卵の凍結という方法に決めた経緯や公表することを選んだ理由とは…?
2人目はほしいけれど、仕事もあきらめたくない。将来の妊娠に備え、受精卵の凍結を選択しました
―—将来2人目を妊娠したいという気持ちから、受精卵凍結(胚凍結:以下受精卵凍結)をしたということですが、2人目について考え始めたのはいつごろからですか?
奈津子さん(以下敬称略) 私自身、4人姉妹+母の母子家庭で育ち、これまで家族で助け合ってきた経験があります。とくに、姉妹は父の死や経済的な困難など、荒波を一緒に乗り越えてきた「同志」のような存在。できれば、息子にもそんな同志がいたらいいな…と思っているんです。
夫も結婚当初から、「サッカーチームを作れるくらいの人数の子どもがほしい」と言っていたほど、子どもが好きな人。夫婦ともに多忙なので、11人の出産は現実的に難しいですが、息子が2歳になって大変だった夜泣きが落ち着いてきたころから、「2人目がほしい」という気持ちが強くなってきました。
ただ、ずっと続けている俳優・タレント業でも、最近はすばらしい機会をいただけるようになってきていて、今以上にキャリアアップしたいという気持ちもあります。だから、2人目はほしいけれど、タイミングについては、ずっと悩んでいたんです。その葛藤が今回の受精卵凍結のきっかけになっています。
―—卵子の凍結という方法もあったと思いますが、そうではなく、受精卵凍結を選んだのはどうしてですか?
奈津子 私も初めは卵子凍結をしようと思っていたんです。でも、卵子凍結を行っている不妊治療専門クリニックの先生と話し合いをしたり、自分でも調べていくうちに、配偶者がいる場合は、出産への期待値がより高まる可能性がある「受精卵の凍結」ができることを知りました。
私は現在34歳で、3歳になる息子を育てています。現状ですでに育児と芸能活動との両立で忙しいのと、さらに仕事にまい進するには、今すぐには妊娠・出産という決断ができなかったので、私には受精卵凍結が最善だと感じました。
私自身の健康面での都合もあります。前回のインタビューでお話ししたとおり、2度の流産を経験していて体質的に不育症になる傾向があって、流産のリスクや不安もある。“受精卵を保存している”ことで、より前向きに次の妊娠・出産に臨めるのでは…と思っています。
金銭面や通院など、夫の協力が必要!夫が積極的に動いてくれてありがたかったです
―—受精卵凍結には、男性パートナーの協力も不可欠だと思いますが、夫婦でどのような話し合いをしたのでしょうか?
奈津子 わが家の場合は、夫婦で「2人目がほしい」という気持ちと、「不安要素は少しでも減らしたいよね」という気持ちがまったく一緒で。夫に受精卵凍結のことを相談してみたら、すぐに賛成してくれました。
今回、私が行った、将来の妊娠のための受精卵凍結は、保険適用外のため費用は全額自己負担(※1)。夫婦そろっての同意がないとできないことなので、承諾書などたくさんの書類に夫婦それぞれのサインをしなくてはなりません。受精卵を凍結するためには、私の排卵日に合わせて採卵&顕微授精をする日が決まるので、スケジュール面での調整も必要。
採卵&顕微授精の処置をする日は、私の卵巣から卵子を採取したあとに、すぐに新鮮な精子を持参しなければいけないので、そういう面でも夫の理解と協力がないと絶対にできません。
私が受精卵凍結をした不妊治療専門クリニックは、子どもの同伴がNGなのですが、採卵があった日が祝日で、息子の預け先がどうしても確保できなかったんです。だから採卵の日はクリニックのそばにあるレンタルルームを借りて、私が採卵をしている間、夫と息子はそこで待機。採卵が済んだら私が夫と交代し、急いで夫がクリニックへ向かうという方法で乗りきりました。夫が他人ごとではなく、自分のこととして、積極的に動いてくれたので、ありがたかったです。
―—受精卵を子宮に戻して妊娠するタイミングについてはどのように考えているのでしょうか?
奈津子 受精卵を子宮に戻す「胚移植(はいいしょく)」については、5年後の39歳くらいを予定しています。5年という期限を決めることで、「それまでには堂々と仕事を休めるように、もっと結果を出さないと!」という気持ちになっています。5年後の自分が思い描いていたような結果を残せていなかったとしても、今、「もっと仕事で挑戦してみたい」という気持ちを諦めて後悔するより、「やりきった」という気持ちで妊娠・出産に臨めるんじゃないかなぁと思っていて。もちろん、5年後、必ず妊娠できる保証があるわけではないということも理解しています。
―—受精卵は何個くらい保存したのですか? 5年間保存することで、費用はさらに高くなるのでは?
奈津子 最終的には、4カ月かけて、6個の受精卵を凍結しました。この数については、不妊症専門クリニックの先生と相談して決めました。
私が通っていたクリニックでは、検査や採卵、顕微授精などの費用のほか、受精卵凍結の保存管理料が1年ごとに加算されるシステムなので、5年間保存することでさらに費用は高額になります。でも、私の場合、30代後半で2人目を望んだ場合、不妊治療でもっと高額な費用がかかることも考えられます。将来の妊娠・出産の可能性が高くなること、「34歳時の受精卵がある」ということで今は不安なく仕事に集中できるので、将来の安心材料が作れたと思っています。
妊娠・出産とキャリアの両立で悩んでいる人に、受精卵凍結という選択肢もあることも知ってほしい
―—今回、受精卵凍結をしたことを公表しようと思ったのは、なぜでしょうか?
奈津子 前に流産のことを公表したとき、同じような境遇の人からたくさんのメッセージをいただいて、私も大きな勇気をいただきました。なので、今回、私が受精卵凍結を公表することで、私と同じように、妊娠・出産とキャリアの両立で悩んでいる人や、将来、妊娠・出産したいけれど今すぐには決断できない人に、こういう例もあるんだ…と参考にしてもらえたらと思っています。
最近は卵子凍結についてはよく耳にしますが、「配偶者がいる場合は受精卵凍結ができる」ということは、まだあまり知られていませんよね。卵子凍結と同様に、認知度が広まっていくといいなと思っています。
もちろん、健康面でも環境面でも、妊娠・出産を後ろ倒しにしないで済むのであれば、それに越したことはありません。受精卵凍結については、倫理的な抵抗がある人もいるでしょうし、賛否両論があることも理解しています。
リスクがゼロというわけではないし、経済的な壁だってあると思います。私自身、この先必ず2人目を産める保証はないですし、「絶対にやったほうがいいですよ」とおすすめしたいわけではないんです。
でも、産む側・育てる側の選択肢は、もっと豊かになってもいいのでは…という思いはあります。産むのにも育てるのにも当事者のライフプランというものがあるし、自分の生き方の主導権を握るのは自分しかいないですよね。
私自身、すでに生まれてきてくれた息子のことも大好きですし、育児そのものも楽しんではいますが、妊娠・出産の際にどうしてもキャリアが一時的に途絶えてしまうことや、親になって発生する責任の重さなどを考えると、医療の力を借りて、妊娠・出産のプレッシャーを軽減する選択肢があるということが、もう少し広まってもいいのかな…と思っています。そして、いろんな意見があるとは思いますが、将来の妊娠に備えて行う卵子凍結だけでなく、受精卵の凍結に関しても、助成金の検討が行われていくといいな…と。今回の受精卵凍結は、私自身もいろいろなことを考えるきっかけにもなりました。今後は妊娠中でも育児中でも働きやすい社会がこれまで以上に実現されていって、私のように医療の力を借りて保険をかけるようなことをしなくても、「産みたいときに産む」という選択ができる人が増えるといいな…と願っています。
※1 将来のためではなく、不妊治療として受精卵の凍結・受精卵の移植をする場合は、条件によっては保険適応となります。
妊娠・出産とキャリアの両立で悩んだという奈津子さん。同じように悩んでいる人に、いろいろな選択肢があることを知ってもらいたいという願いから、受精卵凍結をした体験を詳しく教えてくれました。奈津子さんはご自身のSNSでも、仕事や育児の近況を発信しています。ぜひcheckしてみてくださいね。
取材・文/渡辺有紀子、たまひよONLINE編集部
奈津子(なつこ)
Profile
ドラマ「野ブタをプロデュース」で女優デビュー。以降、多くの作品に出演。俳優業と並行してSDN48のメンバーとしてアイドル活動も経験。その際、劇場が秋葉原の電気街に近かったことから家電にハマりグループ卒業後に難関の「家電製品アドバイザー」を取得。現在は家電女優の愛称で活躍しTOKYO FM「スカイロケットカンパニー」レギュラー。4/1放送「GTOリバイバル」などに出演。私生活では150台以上の家電と3歳になる息子を育児中。
公式Instagram natsuko_kaden
公式X @natsuko_twins
公式YouTube 奈津子の家電クリニック
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
●この記事は個人の体験記です。
●記事の内容は2024年3月の情報で、現在と異なる場合があります。