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消費者庁も注意喚起!乳幼児の加熱式タバコの誤飲事故が増加するワケ【専門家】

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若い女性電子タバコ屋外のオフィスビル
※写真はイメージです
diego_cervo/gettyimages

日本で加熱式タバコが本格的に販売されて5年がたちます。シェアも伸びており、令和2年4月~12月の紙巻きタバコの販売累計が767億本に対し、加熱式タバコは308億本。加熱式タバコの販売累計は、紙巻きタバコの約4割に当たります。40年にわたり禁煙活動を続ける、十文字学園女子大学教授健康管理センター長 齋藤麗子先生は「加熱式タバコの普及に伴い、子どもの誤飲事故なども増えており、新たな課題が生まれている」と言います。

日本全国で加熱式タバコが発売されて5年!誤飲事故は看過できない状況 

加熱式タバコとは、紙巻きタバコのようにタバコの葉をライターなどで燃やしません。その代わり、タバコの葉を加熱し、煙の代わりに蒸気が出て、タバコのにおいや味を感じる商品です。

「加熱式タバコが、日本で発売されたのは2014年11月です。最初は名古屋など地域限定で発売されました。日本全国で発売が開始されたのは2015年9月からです。まだ発売から6年弱しかたっていませんが、乳幼児の加熱式タバコの誤飲事故は看過できない状況です」(齋藤先生)

「タバコや吸い殻を口に入れたことがある」割合は、紙巻きタバコより加熱式のほうが高い!

誤飲しそうになった経験 タバコ(上) 吸い殻(下)

タバコの誤飲事故は、0~2歳に多く見られますが、消費者庁が2021年1月に行ったインターネット調査(※1)で、「タバコを誤飲しそうになった経験」を聞いたところ、紙巻きタバコよりも加熱式タバコのほうがタバコ・吸い殻ともに「口に入れたことがある」「口に入れかけたことがある」割合が高いことがわかりました。

※1 有効回答者数500人・全国の20~60歳代を対象に、0~6歳の子どもと同居しており、現在、タバコを喫煙する人を抽出

加熱式タバコの誤飲事故が多い理由の1つは、紙巻きタバコのように火を使わないことが考えられます。「火を使わないために管理が甘くなって、ママやパパの中には、子どもの手の届く場所に加熱式タバコを置いているおうちもあるようです」(齋藤先生)

加熱式タバコの吸い殻を、直接リビングのごみ箱に捨てるママやパパも

自宅での吸い殻の捨て場所(複数回答)

消費者庁で「タバコの吸い殻の処理状況」について調べたところ加熱式タバコの捨て場所は「今、吸っている箱の空きスペース」「リビングや自室のごみ箱」「台所のごみ箱」という回答も。捨て方も「そのまま捨てる」が60人(71.4%)でトップでした。

齋藤先生は、捨て方にも十分注意が必要と言います。
「加熱式タバコは、タバコの葉を詰めたカプセルや葉をかためて巻いた部分が約1.5~2.5cmと小さく、子どもののどのサイズより小さいため、万一、子どもが口に入れた場合、丸飲みしやすいのです。誤飲のリスクは紙巻きタバコよりもはるかに高いと思います」(齋藤先生)

“加熱式タバコ=有害でない”は間違い。健康被害を考慮して、販売していない国も

「加熱式タバコは、煙が出ないから有害物質は出ない」と思っているママやパパもいるようです。

「煙が出なければ安心・安全という訳ではありません。加熱式タバコは、日本で発売されて5年しかたっていないので、死亡率や肺がんのリスクなど健康被害のエビデンス(根拠・証拠)はまだありません。健康問題を考慮して販売していない国も多数あります。販売しているのは日本、ロシア、ウクライナ、韓国、カナダ、ニュージーランド、EUなど、ごく限られた国です。

また加熱式タバコAと紙巻きタバコの成分を比較したところ、ニコチンは紙巻きタバコの46%でしたが、アルコールの1種であるグリセリンは紙巻きタバコの6780倍。化学物質のプロピレングリコールは、紙巻きタバコの2909倍という結果が出ています。ニコチンも含まれているので、万一、子どもが誤飲したときは急性ニコチン中毒になる可能性もあります」(齋藤先生)

加熱式タバコの葉は粉状で、誤飲すると体内にニコチンが吸収されやすい

齋藤先生は、加熱式タバコの葉は粉状の製品もあるので、誤飲すると体内にニコチンが吸収されやすいとも言います。

医療機関ネットワーク事業に寄せられた、加熱式タバコの事故事例とは!?

加熱式タバコの誤飲事故は、次のようなものがあります。以下の事故事例は、加熱式タバコの誤飲事故として、医療機関ネットワーク事業(※2)を通じて寄せられたものです。

【使用前の加熱式タバコの誤飲/1歳男児・入院】

朝、1人で起き出して、リビングで遊んでいた様子。保護者は隣の部屋で眠っていて見ていなかった。30分後に麦茶を飲ませたら、すぐに嘔吐して茶色いものが出てきたが、麦茶だと思っていた。2時間後に2度目の嘔吐があり、床にタバコフィルターが落ちていることに気づいた。いつもはリビングの出窓に置いているが、たまたま棚の上に置いていたタバコに手が届いてしまったようだ。加熱式タバコの箱に1本残っていたが、もう1本がなくなっていてフィルターだけが床に落ちていた。
※2 医療機関ネットワーク事業は、参画する医療機関から事故情報を収集し、再発防止にいかすことを目的とした消費者庁と国民生活センターとの共同事業。2010年12月から運用を開始。

「ニコチンが体内に吸収されると、事故事例のように嘔吐する子が多いです。
万一、誤飲したときは、紙巻きタバコ同様に、その場で吐き出させて、急いで小児科へ。水などを飲ませるのはニコチンの吸収を早めるので逆効果です。加熱式タバコを誤飲すると嘔吐したり、顔色が悪くなったり、急性ニコチン中毒の疑いがある場合は入院が必要になります。こうしたことからも、加熱式タバコは決して安心・安全なものではないということがわかってもらえると思います」(齋藤先生)

データ提供/消費者庁・国民生活センター 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

お話・監修/齋藤麗子先生

本来は禁煙がいちばんですが、もし同居する家族が、どうしても加熱式タバコをやめてくれない場合は、たとえ煙が出なくても、蒸気が出ているので家の外で吸ってもらったほうがいいそうです。また齋藤先生は「外で吸ったときは、少なくても深呼吸を5回して少しでも肺をきれいにしてから家に入りましょう。加熱式タバコは多くの化学物質が含まれているので10年後、20年後に吸っている本人だけでなく、まわりの人にどんな健康被害が出るか想像できるでしょう」と言います。

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