子どもの歯がでこぼこスカスカになる理由
子どもが将来、しっかりものをかんで健康的な生活を送るためには、歯並びがとても重要です。その歯並びに、実は日々の生活習慣が大きくかかわっていることはご存じですか? 子どもの歯並びをきれいに保つには、普段からどんなことに気を付ければよいのでしょうか。こどもと女性の歯科クリニック 院長 岡井有子先生に聞きました。
「歯並びがでこぼこスカスカ」を防ぐために、避けたいこと
お答えいただいたのは
こどもと女性の歯科クリニック 院長
岡井有子先生
子どもの歯並びがでこぼこスカスカになってしまう理由としてよくいわれているのは、次のようなものです。
●おしゃぶり、指しゃぶり
赤ちゃんのときからおしゃぶりを使っていると、かたい異物(おしゃぶり)が前歯の同じ位置にずっと当たり続けることになり、上顎前突(じょうがくぜんとつ=出っ歯)になりやすくなります。また、おしゃぶりをずっと使うことで口腔内が陰圧(吸う力が持続的に上顎にかかっている状態)になり、上あごがゆがみやすくなり、歯並びに影響しますので、歯科医師としては、乳幼児のおしゃぶりの使用はおすすめしていません。
指しゃぶりも、歯並びに影響するといわれていますが、おしゃぶりに比べると指はやわらかいので影響は少ないでしょう。「夜に寝ながら無意識でずっと指しゃぶりしている」など、長時間延々と続けているのでなければ、それほど心配しなくても大丈夫です。
●むし歯
乳歯のむし歯が悪化して抜歯すると、歯と歯の間のバランスが悪くなり、次に生えてくる永久歯の歯並びに影響します。乳歯のエナメル質は永久歯よりもやわらかく薄いため、むし歯になりやすいので、毎日のブラッシングと仕上げ磨きをしっかりしましょう。ヘッド部分が小さく、ブラシの毛束が短くかための子ども用の歯ブラシは、乳歯の汚れが取れやすいのでおすすめです。
●口呼吸
ポカンと口を開けて息を吸う「口呼吸」も、歯並びに大きく影響します。口呼吸が習慣になると、本来なら上あごの内側のくぼみに収まっているはずの舌の位置が下がり、下顎が下がります。すると、上下のあごがうまく発達しないだけでなく、口呼吸になりやすくなり、舌あごの位置によって、上下の前歯がかみ合わなくなる「開咬(かいこう)」、逆に上の前歯が下の前歯に過剰におおいかぶさる「過蓋咬合(かがいこうごう)」、歯並びがいわゆるでこぼこの状態「叢生(そうせい)」、受け口といわれる「反対咬合」などになってしまいます。普段からしっかり口を閉じ、鼻呼吸の習慣をつけることが大切です。
「姿勢」や「首まわりの緊張」も、歯並びに影響が!
歯並びの原因が、赤ちゃん時代からの姿勢にあるケースも珍しくありません。
赤ちゃんのころ、首が反るような姿勢でずっと抱っこやおんぶをされていたり、寝ているときに首が反っていた子どもは、首のまわりが緊張しがちになります。すると、下あごが後ろに引っ張られてだんだん下がっていき、舌が上あごにつかなくなってしまいます。
お口がポカンと開いている子どもも、上の右のイラストのように舌が落ちて、上あごにつかない状態になっています。
あごの形は、唇周辺の筋肉と舌の力のバランスで決まります。上の左のイラストのような丸い上あごが正常な状態ですが、舌の位置が下がると、上あごに舌の力がかからなくなり、だんだん前がとがった三角形のあご(右)になっていきます。
三角形のあごのまま成長すると、上の歯並びがでこぼこになったり、下の歯が舌の圧力でゆがんだり。さらに、舌が下がることにより、下あごが下がりそれにより気道を圧迫します。そして気道が狭くなるのでいびきをかくようになったり、歯ぎしりをしたり、鼻炎になりやすくなるなどの症状が出てきます。また、下あごが下に引っ張られるので、顔立ちが面長になりやすくなります。
首周辺が緊張している子どもは、首の後ろをマッサージしてほぐしてあげることで、舌の位置が改善する場合もあります。寝る前などに下から上へと、やさしくさすってあげましょう。日ごろの姿勢も大切です。最近の子どもはスマートフォンやタブレットなどを見る機会も多く、猫背になりがちですが、背筋を伸ばして姿勢を正すことを心がけてください。
でこぼこスカスカの治療は、いつから?
歯並びがおかしいと思ったら、まずは歯科医に相談しましょう。矯正が必要な場合は、乳歯が生えかわる6~7歳以降から矯正を始めてあごを広げ(小児矯正)、成人になってからあらためて矯正を行うケースが一般的です(成人矯正)。ただし、当院も含めて一部の歯科医院では、未就学児のうちから矯正を始める場合もあります。矯正をするかどうかにかかわらず、気になる症状があったらぜひ歯科医院を訪れてみてください。
歯並びは、子どもの体の健康にも密接にかかわっています。これまでご紹介したように、歯並びが悪くなっている原因には、そもそも舌の位置や首まわりの緊張、気道の狭さなどが背景にあるのかもしれません。歯並びの悪い子どもが治療の結果、それまで悩まされていたいびきや歯ぎしり、鼻炎もあわせて改善することがよくあります。広い視点で症状を見た上で、歯科医だけでなく耳鼻科、小児科などにも相談してみてください。さまざまな症状を根本的に改善するヒントが得られるかもしれません。
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