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3才未満の子どもの発症が7割を占める難病「ランゲルハンス細胞組織球症」。中耳炎や発疹がいつまでも治らないときは要注意【専門医】

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ベビーガールの声
leungchopan/gettyimages

体中にさまざまな症状が出て、さまざまな経路をたどる、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)という聞き慣れない病気があります。“まれで不思議な病気”といわれるだけに、なかなか診断がつかないこともあるようです。乳幼児の発症率が高いLCHの基礎知識について、LCHの治療・研究に取り組む国立成育医療研究センター小児がんセンター血液腫瘍科医長の塩田曜子先生に聞きました。

“とてもまれな病気”。発症者の多くを乳幼児が占めている

「ランゲルハンス細胞」とは病理学者のランゲルハンスが発見した樹状細胞(※)のこと。皮膚や気道、消化管などに存在し、免疫を担当する細胞に情報を伝える「抗原提示細胞」として、私たちの体を守る役割を果たしています。

この種類の未熟な細胞が骨髄で作られる段階で異常を生じた病気がLCHで、体中のどこにでも病変を作ります。さまざまな炎症細胞をそこに集めてきて腫瘤(しゅりゅう)を作り、ひどい炎症を引き起こして組織を破壊していきます。全身の臓器に広がって重症化する例がある一方、自然に治ることもあり、長年原因不明の病気とされていました。
転機となったのは、2010年に出されたある報告だったそうです。

「2010年に、LCH患者さんの約半数の病変部組織に『BRAF(ビーラフ)遺伝子』の異常がみられたことが報告されました。これを機に研究が進み、炎症性骨髄性腫瘍としてがんに分類されることになりました。ただ、一般のがんとは異なるさまざまな特徴があり、さらに病態解明が進むことが期待されています。

LCHは“とてもまれな病気”で、その多くは乳幼児期に発症します。日本の子ども(0~20才)では年間60人~70人程度の発症が報告されており、そのうちの7割程度を3才未満の子どもが占めています」(塩田先生)

※皮膚や血液中などに存在する免疫細胞。名前のとおり、木の枝が伸びたような細胞表面を持っている

骨や皮膚に症状が現れやすく、一般的な治療を続けてもよくならないのが特徴

LCHは、薬を使っているのに中耳炎や皮膚の湿疹がいつまでもよくならない、たんこぶが1カ月たってもひかないなど、「いつまでもよくならないしつこい症状」が続くことが大きな特徴です。

「LCHが疑われた場合、病変部から小さな組織を採取する『生検』を行い、病理組織を詳しく検討します。
顕微鏡で見ると、病気の部分には、異常なランゲルハンス細胞(LCH細胞)がたくさん増えている様子が観察できます。LCH細胞は正常なランゲルハンス細胞と異なり、核にくびれやしわができてコーヒー豆のように見えます。同時に、リンパ球、好中球、マクロファージ、好酸球など、炎症を担当する細胞も多く集まっています。
LCH細胞と周囲の炎症細胞の間では、『サイトカイン』という物質による情報のやり取りが、異常なほど活発に行われています。

サイトカインは、体の中のさまざまな場面で、免疫を含めた機能を正しく調節して健康を維持する重要な役割を担っています。しかし、LCHの病変部ではサイトカインの嵐が起きているため、激しい炎症を起こし、ひどく腫れる、組織を破壊する、高熱を出すなど、さまざまな症状が現れます。
また、病変部には、多くの炎症細胞に加え、骨を壊す働きがある破骨細胞様の多核巨細胞も見られ、骨があっという間に溶かされて、丸く穴があくことが特徴です」(塩田先生)

<LCHの主な症状>
皮膚:水ぼうそうや水いぼとやや似た症状が現れ、薬でよくなったように見えても治りきらず、しつこく現れて、ザラザラ、じくじくします。

・頭頂部や側頭部の脂漏性湿疹
・下腹部を中心に胸背部や手のひらなどに広がる赤い丘疹
・首やわきのした、おまたのしわの部分のくっきりとした線状の発赤

骨:頭蓋骨、背骨、手足の長い大きな骨に症状が現れることが多く、病変部に骨腫瘤ができ、その部分の骨は丸く大きく欠損します。部位によって症状の出方が異なります。
・こぶ…かたく出っ張ってきたり、ぶよぶよしたり、そのうちへこんだりする
・背骨…背中や首の痛み、圧迫骨折
・側頭骨(耳のまわりの骨)…中耳炎
・目のまわりの骨…片目が腫れる(眼球突出)

そのほか
・赤ちゃんでは、肝臓や脾臓が腫れて高熱が続き、貧血を起こしたり血小板が低下したりして重症となる
・口の中のできものが腫れてくる
・頸のまわりのリンパ腺がひどく腫れる
・下痢が長引く
・体重が減る
など

上記のように、LCHは皮膚と骨で発症するケースが多いのですが、注意すべき病変部位として、中枢神経に関連する部位が挙げられます。内分泌ホルモンの分泌に関連する視床下部下垂体に問題が起こったりするからです。

中枢神経リスク部位:眼窩(目のまわりの骨)、側頭骨(耳のまわりの骨)、頭蓋底(頭蓋骨の中心部で脳を下から支えている部分)、顔面骨などの骨の病変のほか、これらの部位にLCHによる中耳炎や外耳道炎、口腔内の病変のこと

「内分泌ホルモンの分泌異常で引き起こされる代表的な症状は、LCHの腫瘤が下垂体付近にできることで起こる『尿崩症(にょうほうしょう)』です。LCHの腫瘤によって抗利尿ホルモンの流れがせき止められ、分泌がうまく行われなくなることで、尿量のコントロールができなくなります。そのため、1日数ℓ以上のおしっこが出るようになり、飲む量が異常に多くなります。
また、成長ホルモンの分泌障害による低身長、性腺ホルモン分泌不全による無月経なども見られます。さらに、小脳や大脳に影響して運動機能や精神発達に影響する例も報告されています。とくに中枢神経リスク部位に病変があった患者さんに多くみられるため、注意が必要です。

子どもがLCHを発症した場合、これらの症状は発症後数年以上たってから『晩期合併症』として現れることが多く、一度発症するとホルモン分泌障害や脳の変性病変の改善は難しいとされ、LCHに対する適切な治療選択とあわせ、何か困ったことが起きていないか、長期フォローアップも重要となります」(塩田先生)

病変がどこにできているのか体中を調べ、どのタイプかを見極めることが重要

LCHと診断されたら、どこにどのような病変ができているのか体中をよく調べ、「単一臓器型」なのか「多臓器型」なのかを判断します。

単一臓器型:皮膚のみ、骨のみなど、病変が1つの臓器に限られている

多臓器型:皮膚と骨の両方に病変がみられるなど、病変が複数の臓器にある

「『ちゃんと治療しなければ治りにくい』と考えられる『リスク臓器(肝臓、脾臓、骨髄)』に病変があるかを見極めることも非常に重要です。リスク臓器に発症すると重症化することがあります。薬の効き目が悪い場合には、治療の強化が必要となります。」(塩田先生)

<単一臓器型の治療法>ステロイド剤や抗がん剤を使用します

・骨の場合
1カ所の小さな骨の病変は、全身麻酔で生検を行う際に同時に掻把(少し削る方法)を行います。場合によっては、ステロイド剤の局所注射が行われることもあります。

複数の骨に病変が見られる場合は、増えてしまったLCH細胞や、周囲の炎症細胞同士のサイトカインによる情報のやりとりを制御するために、入院してステロイド剤の投与と化学療法(抗がん剤)を行います。

・皮膚の場合
多臓器型に進行することがあるので、経過観察を注意深く行いながら、治療を行います。ステロイド剤の塗り薬を使いますが、化学療法が必要になることもあります。病変が皮膚だけなら多くの場合は外来治療ですが、生まれて数カ月の赤ちゃんは重症化リスクが高いので、入院治療を行ったほうが安心です。

<多臓器型の治療法>入院治療と外来治療で1年かけてしっかり治す

ステロイド剤と化学療法を組み合わせて1年かけて治療を行います。最初の2カ月間は入院して集中的に治療し、その後は外来で治療を続けます。退院当初は2週間に1度通院し、半年過ぎたころから4週間に1度になります。退院後は普通に生活してよく、保育園・幼稚園、学校にも通えます。

「LCHは治療効果が現れやすく、薬を始めると、皮膚症状はすぐ改善が見られます。骨病変の腫れや痛みもすぐに改善し、溶けた骨は数カ月~1年で以前とほぼ同じ形に戻ります。
一方、リスク臓器に病変が現れた多臓器型の乳幼児で、化学療法の効果が見られない場合は、白血病と同じように造血幹細胞移植が必要になることもあります。将来的には、BRAF遺伝子変異を手がかりに、分子標的薬が登場することが期待されています」(塩田先生)

多臓器型は再発率が高く、大人になっても定期的な経過観察が必要

多臓器型の30~40%の症例で、治療終了後1~2年で再発が確認されています。その多くは初回とは別の部位に病変が見られるようです。

「再発はそのほとんどが骨に生じます。再発を繰り返す例もありますが、一般のがんと異なり、何回再発しても同じような治療で治り、元気になるケースがほとんどです。
ただし、再発した場合は晩期合併症が多くなることがわかっています。LCHはさまざまな部位に多彩な症状が現れるので、晩期合併症の種類や程度もさまざまです。とくに、中枢神経に関連した問題は、10年後にも起こることがあり、年1回の体調チェックは大人になっても必要です。そのため、ママ・パパがこの病気のことを理解し、主治医とよく話し合い、長いスパンで病気とうまくつき合っていくことを考えましょう」(塩田先生)

取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

お話・監修/塩田曜子先生

LCHはとてもまれな病気ですが、乳幼児の発症率は高く、重症化することもあります。一般的な治療を続けてもなかなかよくならない症状がある場合は、LCHを疑って医師に相談してみる必要がありそうです。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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