今年も始まった中学受験への道 親の介入はどこまで?家庭でできることは?【専門家に聞く】
朝の人気情報番組でも度々特集や密着取材が組まれ、注目度が高い中学受験。中学受験は「親子の受験」とも言われますが、親は子どもの勉強にどのくらい関わればいいのでしょうか。
口コミサイト「ウィメンズパーク」から経験者であるママの実践例を紹介するとともに、子どものやる気を引き出す塾・プラスティーの塾長八尾直輝さんにお聞きしました。
成績を上げたいのは子どもの意思? それとも親?
まずは、ママの声を紹介します。
■ 子ども本人に任せるか、親も一緒にとことんやるか悩み中
「新5年生の母です。うちの子は小学4年生から入塾し、1年で偏差値が52から56に上がりました。希望としては、今後60台に上がって欲しいと思っています。
これまで、親が塾での内容を見てあげたりすることはなく、宿題も自分でやっていて成績が上がっていたので、いいと思っていました。
でも、5年生になると内容が難しくなると聞きます。今後は子ども任せではなく、親の誘導も必要かなと思っています。みなさんは、どうしているのでしょうか」
■ 成績の上がり方は子どもによってまちまち。親ができることはあまり多くない
「偏差値の壁というものがあります。それは子どもによってまちまちだそうです。
比例グラフみたいに上がり続ける子、入試直前にぐーーっと上がる子、いったん上がってそれ以上は上がらない子など。
有名な脳科学者が言うには、学力を上げるためには『言語力』『計算力』『やる気』が必要なのだそうです。そのどれか一つが欠けても、頭打ちになるとのこと。
私が自分の経験から感じるのは、計算力は日ごろの積み重ね次第ということ。あとは、当人のやる気次第でしょうか。親は、宿題をこなせているかチェックするだけで良いと思います。あとは、やる気を上げるために、体験授業や文化祭見学へ行ったり、やりたい部活や修学旅行について教えたり、高校受験をせずにすむメリットなどを伝えることでしょうか」
■ 親ができることはたくさんある。でも…
「塾で習ってきた単元のテキスト教材を親もしっかり目を通して理解し、子どもができなかったり疑問があったりしたら、教えて解決すること。それでも分からなかったところは、塾へ連絡して聞くこと、などでしょうか。
塾で習ったテキスト教材は音読を5回させ、問題は全て3巡は解く。次回の予習を親も一緒にやって、子どもに教えてから塾へ行かせるなどもしていました。もっと、と言うなら苦手な単元の問題集を本屋さんで買って解かせたり、個別に家庭教師を雇っている人もいました。成績を上げるために親が関与することは幾らでもあると思いますが、どこまでやるか…難しいですね」
ポイントは『子どもの成長のプロセスを分割して考える』こと
中学受験の準備に入ったら、家庭では、子どもの勉強にどれだけ関わるといいのでしょうか。実際に日々、子どもの学習指導に携わっている八尾直輝さんに、勉強がわからないという子どもへの対処についてアドバイスをいただきました。
どこまで親が関わるか…難しく永遠のテーマですね。
読ませていただいた『ママの声』からも、日々みなさんが葛藤している様子が伝わってきました。学習塾をはじめ、さまざまな教育現場に関わってきた立場から、アドバイスさせていただきます。
まず大前提として、理想の状態は『子どもが自分でやる主体的な状況』ですよね。
すべて子どもが主体的にやってくれたら…こんなにラクなことはないでしょう。でも現実は『言ってもやらない、言われたこともすぐ忘れてしまう』。こんなところかと思います。
ひとつ考えていただきたいのは、この『理想的な状態』と『現実』の間に階段を付けて考えることです。
A:主体性に加え、自分で創意工夫をする理想的な状態
B:主体性を発揮し、自分から取り組む状態
C:やり方を知っているが、やろうとしない状態
D:そもそも正しいやり方を知らない状態
この4段階で考えてみましょう。
たとえば『解いたら答え合わせをして、解き直しをする』ことを子どもにやってもらいたいとします。そのときは、上の4段階は以下のように考えることができます。
A:自分で答え合わせをする。間違えた問題は解法をする。別の解き方や、間違い対策を自分で考えることができる
B:自分で答え合わせをする。間違えた問題は解き直しまでやる
C:言われれば自分で答え合わせをする。間違い直しも言われればやる
D:そもそもやり方を知らない。間違い直しの重要性も知らない
ポイントは『子どもの成長のプロセスを分割して考える』ことです。
Dの『知らない』状態ではそもそも行動することはできません。その場合、多くの親御さんが子どもに正しいやり方を教えていることでしょう。でもそれだけでは『A』になりません。『ホームランの打ち方解説動画』を見たところで、実際にホームランが打てないのと同じように、勉強も正しいやり方を知るだけではダメで、必要な『トレーニング』を重ねていく必要があるのです。
では、どのようなトレーニングが必要なのでしょうか。
Cの段階では『手取り足取り』をイメージしてください。上の例であれば、問題を解き終えるごとに『答えわせをして』『解き直しはした?』『解き直しのノートを見せて』という具合に、細かく介入していくイメージです。
Bでは少し介入を減らします。たとえば『1つの教科の学習が終わるごと』に適切に答え合わせができているかを確認する、といった要領です。こうすることで、子どもが自分でできる量を増やしていくのです。
段階を踏むこと自体は意識されている方もいらっしゃると思いますので、ぜひ上のように『A-Dの表』を作成してみてください。言語化することでお子さんとの関わり方も整理されるのではないかと思います。
この段階は『勉強のやり方』に関して作成するのがポイントです。
高学年になると学習内容もグッと難しくなります。親が楽しく関われるのであれば別ですが、私の経験上、小6の最後まで親がすべて管理するのは質・量の両面でなかなかに難しいことです。『やり方』や『学習習慣』に関しては積極的にご家庭で関与し、学習の内容は塾にお任せするという方法を考えてもいいでしょう。
特に以下の2つは、ぜひご家庭でも『A-D表』を作成してみてください。
①起床・就寝時間を守る
②学習開始時刻を守る
2つとも時間に関するものですね。時間を守れないときの(C)の状態では、積極的に声掛けをしてください。そのときは『何時から始められる?』『◯時になったよ』など、質問や事実を伝えるスタンスで関わり、子どもが『自分で動いた』感覚を持てるような介入を意識するのがコツです。
『1を聞いて10を知る』という言葉もありますが、現実はなかなか難しいことも多いものです。意識して段階的に子どもを見守ることで、お子さんの状況に合わせた主体性の引き出し方が見つかります。ぜひやってみてください!
(お話/八尾直輝さん)
勉強に親が関わるといっても、子どもの状況に応じて関わり方が変わるということですね。表を作ることで、子どもにも自分の状態が把握しやすくなりそうです。(取材/文・橋本真理子)
※文中のコメントは「ウィメンズパーク」(2022年1月末まで)の投稿を再編集したものです。
※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
八尾直輝さん
PROFILE
勉強のやり方を教える塾「プラスティー」を創業、現在は取締役・塾長として、会社の経営、塾の運営全般に関わっている。共著に『子どものやる気を引き出すゲーミフィケーション勉強法』(講談社)、執筆協力に『中学生からの勉強のやり方』『図解 中学生からの勉強のやり方』(ともにディスカバー・トゥエンティーワン)がある。
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