小児救急電話相談#8000って知ってる?~専門家に聞く上手な使い方とは~
子どもが夜間や休日に突然体調が悪くなったときや急にけがをして受診を迷うとき、看護師や医師に無料で電話相談できるのが「#8000」小児救急医療電話相談です。2022年3月に行われたオンラインイベントが好評だったことから、2022年9月中旬に2回目となる「休日・夜間の子どもの救急 こんなときどうする?」が行われました。イベントの第2部から、昭和大学江東豊洲病院 こどもセンター小児外科の吉澤穣治先生と、豊橋市民病院小児科の小山典久先生の講演の内容をリポートします。
子どもがのどにものをつまらせた!どうすればいい?
子どもの事故の危険は日常生活にも潜んでいます。0〜14才の子どもの不慮の事故による月齢・年齢別の死亡原因で、0才は窒息が最も多く、1才を過ぎると溺水(できすい)が増えます。また、年齢が上がるにつれて交通事故も増えます(※1)。0才児の死亡原因で最も多い窒息について、小山先生のお話をご紹介します。
「赤ちゃんが寝る環境にも窒息のリスクがあります。赤ちゃんはふかふかの寝具に顔が埋まって窒息することがあるため、寝具はかためのものを使いましょう。ベッドのまわりにあったひもで、首がしまって窒息した例もあります。赤ちゃんが寝ているまわりには何も置かないようにします。
また、便利なスリングですが、お母さんの胸で寝ていると思っていたら、窒息していたことも。赤ちゃんの顔が見える状態で使用しましょう。
食べ物でも窒息は起こります。プチトマト、もち、あめ玉などは、気管にはまり込んでしまいます。とくに凍らせたゼリーは気道に張り付いてしまうので食べさせてはいけません。直径3cm よりも小さなものは 子どもの口に入るため、窒息や誤嚥(ごえん)など思わぬ事故につながります。子どもの手の届かない高いところに保管しましょう」(小山先生)
窒息のときの緊急措置は?
では、大人が近くにいる場合でも、赤ちゃんがのどにものをつまらせてしまったときにはどうすればいいでしょうか。
「すぐに気づいて、子どもの口の中に確認できるものは大人が指でつまみ出しましょう。意識があれば、本人に咳(せき)をさせることで異物が出てくることがあります。また、呼吸ができなくなったときは、すぐに救急車を呼び、救急車が到着するまでの間に大人が応急処置をする必要があります。
のどにものがつまってしまったときの応急処置についてお話しします。
赤ちゃんの場合には、腕やひざの上に寝かせて背中を5回たたき、次はあお向けにして胸の真ん中を5回圧迫、また背中を5回と、異物が出てくるまで繰り返します。
1才以上の場合は、後ろから抱きかかえて、みぞおちに握りこぶしをあてがい、上方に引き寄せるように、ギュッギュッと力を入れて異物が出てくるのを促す方法もあります。
元気に成長している子どもが、事故などで突然命を落としてしまうとご家族の悲しみは計り知れません。防ぐことのできる事故で命を落とすことのないよう、安全な環境を作ること、またいざというときの処置を知っておくことが大切です」(小山先生)
子どもの急な病気やけがで受診を迷ったら、#8000をプッシュ!
#8000は、夜間や休日の急な子どもの病気やけがに対して、いますぐ受診すべきか、様子を見ていいのかの判断に迷ったときに、電話で医師・看護師へ相談できるサービスです。平成16年に一部の県でスタートし、平成22年には全国で実施されるようになりました。生まれたばかりの赤ちゃんから中学生まで子どもならすべての年齢に対応しています。
日本全国どこでも電話機やスマートフォンから「#8000」とプッシュすると、都道府県の「子ども医療電話相談」窓口に自動転送されて、医師や看護師に相談することができます。
「今すぐ病院に行ったほうがいいのか、それとも家で様子を見ていても大丈夫なのか、といった判断を求める相談が最も多いです。こんなこと聞いてもいいのかな…なんて心配はいりませんので、安心して相談してください。
相談員は経験豊富な医師や看護師です。子どもの月齢や年齢、いつからどんな症状があるか、熱や呼吸の状態などを質問しますので、保護者の方は子どもの症状を観察して、話してください。その症状をもとに、自宅で様子を見るか、すぐに受診したほうがいいかのアドバイスをします」(吉澤先生)
一方で、#8000の目的は受診の判断をすることであるため、診断や薬のアドバイスなどはできないことは知っておく必要があります。
「発熱やせき、腹痛や嘔吐・下痢などのほかにも、頭や体をぶつけたなど、子どもの医療に関する相談には何でも対応しますが、オンライン診療とは異なります。医師が病気の診断をすることや、薬の処方などは行いません。『市販の薬を買ってきたけど飲ませていいですか?』という相談にも答えることはできません。
また、一部の県ではオンラインでの相談をやっていますが、基本的には電話での相談となります。電話で直接医師や看護師の声を聞いてもらうほうが、保護者も安心することが多いですし、子どもの状況や保護者の気持ちも医師・看護師によく伝わると考えています」(吉澤先生)
電話がつながりにくいときは別のツールも合わせて利用しよう
#8000の実施時間帯は都道府県によって異なりますが、ほとんどが午後7時ごろから翌朝まで対応しています。日曜や土曜の日中も受け付けているので、医療機関が休みのときに相談できます(※2)。
ただ「時間帯によって相談が集中し、つながりにくくなることもある」ようです。
ただ、時間帯によって相談が集中し、つながりにくくなることもあるようです。その場合は時間をずらして再度かけるか、#8000以外にも子どもの急病で困ったときに対処法や医療機関を調べられる、以下のツールも参考にしてみてはいかがでしょうか。
子どもの救急 オンラインQQ
「こどもの救急」で検索するとウェブサイトで生後1カ月~6才の子どもを対象に、受診判断の目安となる情報を得ることができます。
サイドバーから気になる症状を選んで、子どもの様子で当てはまる項目のチェックボックスを選択すると、様子を見るか、すぐ受診するべきかが表示されます。子どもの事故にあったときの対応や乳児の心臓マッサージの方法の解説もあるので、ぜひ参考にしてみてください。
(http://kodomo-qq.jp/)
子ども救急ガイドブック
各自治体で作成・配布されている冊子で、受診の目安や症状別の対処法などがまとめられています。最大の特徴は、地域の受診機関の情報があることです。形式は各自治体で異なります。各都道府県のホームページからPDFファイルもダウンロードできるところもあるので、チェックしてみてください。
救急医療情報システム
インターネットで「○○県、救急医療情報システム」と検索すると、各都道府県の緊急時に受診できる医療機関を探すことができます。都道府県ごとにフォームは異なります。
お話・監修/吉澤穣治先生、小山典久先生 協力/公益社団法人 日本小児科医会 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
子どもの急病で困ったときの情報は、日本小児科医会ホームページの「小児救急医療情報ツール」(https://www.jpa-web.org/sharp8000/sharp8000_2.html)というページにもまとめられています。このサイトには、各都道府県の救急医療情報システムのリンク先と、子ども救急ガイドブックのリンク先がまとめられています。ブラウザのお気に入りに入れておくなどして、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
また、今回のイベントの様子はたまひよ公式YouTubeに掲載しています。ママたちのリアルな小児科専門医が回答しています。ぜひご覧ください。ぜひご覧ください。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※1 消費者庁 ⼦どもの不慮の事故の発⽣傾向〜厚⽣労働省「⼈⼝動態調査」より〜「3.年齢別に多い死亡事故の割合」
※2 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(♯8000)について」