「お金持ちになって…」長男が宿題で書いた将来の夢を見て反省。子どもへのお金の価値の伝えかた【俳優・加藤貴子が専門家に聞く】
8歳と5歳の2人の男の子を育てる俳優の加藤貴子さん。子どもの成長にともなって教育費もかさむなかで、子どもにお金の価値をどう教えたらいいのかを悩んでいるのだとか。そこで、家庭でのお金の教育についてファイナンシャルプランナーの坂本綾子先生にアドバイスをもらいました。加藤さんが育児にかかわる悩みや気になることについて専門家に聞く連載第17回です。
身近なお金の流れを見せて、お金の価値を教える
加藤さん(以下敬称略) 最近、長男が習いごとを「今日は行かない」とサボろうとするようになってしまいました。最初のころは「そんなときもあるよね」と寄り添いながら、たしなめて行かせたりしていましたが、何度も繰り返すので「レッスン代は、お母さんとお父さんが働いて支払ってるんだよ。そんなにイヤならもったいないからやめて」と、口に出してしまいました。そしたら、そのあとに将来の夢を書く宿題で「ぼくはお金持ちになってお金の心配のない生活をする」なんて書いていて・・・お金のことをこまかくいうべきじゃなかったのかな、と反省しています。子どもにお金の価値や、収入を得るには労働が必要だ、ということはいつごろからどんなふうに伝えたらいいんでしょうか?
坂本先生(以下敬称略) まず最近の社会状況としては、とくに先進国では子どもに対するお金の教育が重要だというのは共通の認識です。日本でも時代の変化に対応するため、2020年から文部科学省の学習指導要領が大きく改定され、お金の使い方や消費者の役割などを以前より詳しく学ぶようになっています。30代以降の親世代は学校でお金についてあまり学ばなかった時代ですが、今の子どもたちは学校の授業の一部で学ぶので、家庭でも補完する形で、ぜひお金の教育を心がけてもらうといいと思います。
加藤さんの長男が小学3年生というと、ちょうどいい時期だと思います。息子さんが「お金持ちになりたい」と言ったのは、やりたいことができるだけのお金を自分の手で稼ぎたい、と理解したということでしょう。一般的には、小学校に入学すると算数で足し算・引き算も学ぶようになるので、その後の子どもの興味に合わせて、家庭でのマネー教育を始めるといいと思います。
加藤 どんなことから始めるといいでしょうか?
坂本 家庭では実際のお金の動きを見せてあげるといいと思います。加藤さんは息子さんたちと一緒にスーパーに買い物に行くことはありますか?
加藤 上の子は、何か買ってもらいたいものがあるときだけ一緒に行きます(笑)
坂本 そうですか(笑)。一緒に買い物に行って欲しいものが見つかったら、たとえば「これは160円だね」と金額の事実を伝えます。その商品を買うにはレジで200円を出したら買えて、40円のおつりをもらえるね、と言いながら一緒に買ってみましょう。日常生活の中で、ものとお金の流れを見せて体験することを積み重ねることで、欲しいものはお金と交換して手に入るという意識が身につくといいと思います。
最近はスーパーのレジでも現金を使う場面が減ってきているので、ものやサービスとお金が交換されていることを目にしにくくなっています。子どもと一緒に買い物に行くときには現金で会計をして、意識して見せるようにするといいかもしれません。ものを選ぶときには「これはちょっと高いよね」「今日はセールで安くなってるね」と話しながらもいいでしょう。日常的にお金のやり取りを身近にしていると、学校で金銭教育があった際にも理解しやすいと思います。
お金の話は恥ずかしいことではない。親子で話し合える関係がベスト
加藤 子どもたちは外食が好きなんですが、何度も外食したり、好きなだけ頼んだりすると結構な金額がかかってしまいます。外食したいと言われても「ラーメンならすぐ作れるから、もったいないから家で食べるよ」なんて言ってしまいます。すると、別の機会に外食をして支払う際に「いくらだったの?高かった?」とお店で聞かれちゃって恥ずかしい思いをすることもあるんです(笑)。
坂本 そうやって興味を持つのは全然悪いことじゃないですよ。大人になれば、自分が手に入れたものやサービスが支払ったお金に見合っているかの判断をしながら、収入の範囲で暮らしていかないと破綻してしまうわけです。だから、これは普通より高いのか、安いのかといったことや、この食事は高かったけどおいしかったからよかった、とか、ちょっと損した気分だね、などと自分なりの判断や理屈づけの経験を積むのは大事なことだと思います。
加藤 たしかに、外食したときに「この味だったら安いと思うよ」なんて大人ぶって評価したがることもあります(笑)。
坂本 親としては人前で言われると恥ずかしい面はありますね(笑)。でもお金とものを結びつけて考えることを、口に出してはいけない雰囲気を作ると、子どもが興味を持ったり疑問を感じたときに話しにくくなってしまいますよね。
知り合いのファイナンシャルプランナーで小学校でお金の教育の出前授業をやっている人がいますが、大人がお金の話をしにくい雰囲気を作ると、子どもは敏感に察知して口に出さなくなるそうです。その人が授業のなかで「お金の話は恥ずかしいことではないし、きちんと知識をつけないと困るんだよ」と教えると、子どもたちからたくさん質問が出るんだとか。本当はお金のことに興味があっても大人に聞けない子どももいるかもしれない、と話していました。
加藤さんの息子さんは、親に対して率直に話をできる関係がすごくいいと思います。そのような関係性を大事にしておくと、万が一金銭トラブルにあったときにも、きっとすぐ相談してくれるでしょう。
お金のやりくりのしかたをどう教える?
加藤 長男はサッカーと水泳を習っていますが、水筒に持たせた飲み物がなくなると、帰り道にペットボトルを買ったり、お友だち同士でおやつを買って食べることもあります。今は習い事のたびに1回500円の現金を持たせているんですけど、毎回使い切るほど買ってしまって困っています。どんなふうにお金の使い方を教えたらいいでしょうか。
坂本 そうですね・・・1カ月だと子どもにとっては長いから、まずは1週間で息子さんがどのくらいのお金を使っているのか一緒に調べてみましょう。
サッカーの日はジュースを買った、スイミングの日はコンビニでおやつを買った、のように、曜日と品目と金額を書き出します。次に、買ったものが本当に全部必要だったかな、と一緒に考えてみましょう。
暑い時期には飲み物は必要ですが、家におやつを用意してあるならコンビニでおやつを買わなくてもいいよね、と、一つ一つチェックします。その結果、1週間で必要なものを一緒に確認して、必要な金額を渡してみるのがいいと思います。
おこづかいの決め方は?
加藤 毎月決まったおこづかいを渡す場合、金額はどんなふうに決めるといいですか?
坂本 お金の教育の面で考えれば、先ほどお話ししたように1週間や1カ月で大体これくらい必要だ、という金額を子どもと一緒に考えて、プラスして少し余裕を持った金額を渡してあげるといいでしょう。あんまりやりくりの余地がないと苦しくなってしまいます。その上で、どうしてもたりない、買いたいものがあると言われたら、お手伝いでお金を得る方法もありますね。
わが家の場合は、布団敷きをしたら1回いくら、食器を洗ったらいくら、とお手伝いの内容によってお金を渡していました。私も仕事をしていたから、少しでも手伝ってもらえると助かっていました。毎月おこづかいを渡すか、欲しいものがあるときにその都度買うのがいいのか、お手伝いをした報酬制にするのがいいのか、家庭によってさまざまだと思いますので、親子で話し合って決めていけるといいですね。
お話/加藤貴子さん、坂本綾子先生 監修/坂本綾子先生 撮影/山田秀隆 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
そろそろおこづかいを渡したほうがいいのかな・・・と考え始めたら、まずは親がお会計する様子を見せたり、お金について親子で話し合う機会を増やすといいのかもしれません。
●記事の内容は2023年7月の情報であり、現在と異なる場合があります。
加藤貴子さん(かとうたかこ)
PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。
坂本綾子先生(さかもとあやこ)
熊本県生まれ。明治大学在学中より雑誌の編集に携わり、卒業後にフリーランスの雑誌記者として独立。1988年より、女性誌、マネー誌にて、お金の記事を執筆。1999年 ファイナンシャルプランナー資格取得。2010年ファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所設立。現在は生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師なども行う。著書に『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』(朝日新聞出版)など多数。
『子どもにかかるお金の超基本』
子どものために毎年いくら貯金すればいい? ため時はいつ? 教育費のメリハリはどうつける?など、妊娠中から大学を卒業するまで、子育てにかかるお金のギモンにすべて答える一冊。
坂本綾子著/1705 円(河出書房新社)