チャートであなたのタイプをチェック!「絆ルート」と「溝ルート」の分かれ道は?! 夫婦がワンチームになる未来を実現させたい
妊娠・出産を経て、絆を深めてワンチームになっていく夫婦と、溝ができてすれ違っていく夫婦、その分かれ道はどこにあるのでしょうか?チームで育児をするための講座を提供する「親のがっこう」の運営をしているNPO法人ママライフバランス代表の上条厚子さんにお話を聞きました。
あなたは大丈夫? 夫婦の絆をチャートでチェック
育児をしていく中で、あなたはパートナーときちんとリレーションシップが築けているでしょうか。まずはチャートで診断をしてみてください。ママ用・パパ用があるので、それぞれにやってみて!
本稿の編集を担当し、二児のママである編集Kが挑戦したところ、結果は“溝ルート度80〜100%の超人的な頑張り屋さん”という結果に。このままだと育児に対するハードルが高すぎて自滅する可能性が……。みなさんはどうでしたか?
意識的に休んで自分を大切にすることがわが子の幸せにつながる
――上条さん、どうすれば絆ルートに方向転換できますか?
上条 お子さんが寝たあと、何をされています? 皿洗いとか掃除とか、家事をしていませんか? それ、絶対に今しなきゃいけないことですか? スキマ時間は「母」や「妻」を休んで、高級チョコレートを1粒食べるとか、10分間でも横になるとか、自分へのプチご褒美をプレゼントしましょう。24時間ママ業をしている状況から意識的に一人の時間を持つことが大切です。
それは何故か。一人の大人として心身ともに健全であることが、巡りめぐってわが子の幸せにつながるからです。
――とはいえ、休むことに罪悪感を持つママもいます。その心構えをどう切り替えればいいでしょうか。
上条 まず“育児は一人ではできない”と認識しましょう。自分が「母親としていたらないから一人でできない」とご相談をいただくことが多いのですが、違います。アフリカのことわざで「一人の子どもを育てるには村がまるごと一つは必要」というのが有名ですがその通りです。夫婦で協力しあうことや外部サービスを利用して第三の大人の手を頼ることは、むしろ必要不可欠なことです。真面目で責任感が強いママほど「これは私の役割だ」と育児の自分担当の範囲が広く、それがしんどさの一因です。疲れているなら食事は惣菜を買ってくるとか夫に任せるとか、自分担当の育児を一つずつ減らしていきましょう。パートナーや外部サービスに頼るのが上手な女性は、育児がしんどいとはなりづらいです。頼ること・休むことに罪悪感がないのでキャパオーバーにならず、ご機嫌に過ごせるからです。周囲に甘える練習をしていきましょう。
「絆ルート」を継続できるパパたちの2つの特徴
――絆ルートにいくために、パパにできることはなんですか?
上条 育児は夫婦二人で協力するもの、という意識が芽生えているパパは多いですが、産後数年たつとすれ違っていく夫婦が多いのが現状です。絆ルートのパパの特徴が大きく2つあるのでご紹介します。
1、家事・育児のスキル格差ゼロ
家事と育児のどのタスクをママがやってもパパがやっても問題ない。という状態を目指して育児の初動にスタートを切っていくことが大切です。
仕事に例えると、属人化しているタスクがあるとその人が休みづらい状況に陥りますよね?それと同じです。寝かしつけはママしかできない、うんちのおむつ替えはママしかできない、予防接種のスケジュールはママしか把握していない等が多いケースです。
「僕が子どもみているから、出かけてきたら?」と休息を提案しても、断られてしまう。という場合は、既に家事育児のスキル格差ができてしまっているサインです。「パパに任せる不安」が勝っているということです。女性の方が育休取得期間が長かったり、里帰り出産をしたり、育児に関わる時間が長いケースが今の日本社会では多数派のため女性の方が育児のスキルが高くなりやすい社会構造があります。意識的に家事育児のスキル格差をなくしていけるようにしていきましょう!
2、ママの状態の把握能力が高い
ママの機嫌がわるい。怒りっぽくイライラしている。疲れがたまっていそうだ。と感じたら、育児でキャパオーバーのサインです。
ママ本人も育児がはじめてなので、キャパオーバーに無自覚で、しんどくても「私ががんばらなきゃ」と抱え込んでいるケースが多いです。そのため、パパから積極的に家事育児を巻き取る提案をしていきましょう。どの部分でキャパオーバーになっているかを把握するためには、ママとの会話で、子どもとの毎日の中で「どんな時がしんどいのか」を意識的に聞いていきましょう。
子どもが生まれることで体型や体調に大きな負担があったり、キャリアプランを変更したり、パパが参加できるような飲み会に行けないなど、産後は様々な方面での制約がある中でママたちは育児をしています。パパもいっしょに育児をするのは大前提としても「出産」をした女性ならではのしんどさ、子どもと過ごす時間が「長い」ならではのしんんどさ(女性が育休期間が長い・産後離職した・復職後時短勤務)があります。そこを理解しにいく前のめりな情報収集力をもてると絆が育まれます。
育児の「しんどさも」を理解して、パートナーの心理的孤独を減らす
――パパはママにどう接するのがいいですか?
上条 今の日本では、仕事で家にいる時間が「短い」パパたちが多い傾向にあり、物理的に家事育児の割合や時間をママと「同じ」にする難易度は高いと思います。だからこそ、夫婦の日常会話の中で、ママの「しんどさ」を理解し、ねぎらいや感謝の言葉をかけていきましょう。これだけでママの心理的孤独はかなり少なくなります。
育児は夫婦二人で協力するものというのは、大前提としても核家族なら大人の手は圧倒的に足りていません。生後何カ月から、1時間いくらで、どこであずかってもらえるか。お住まいの地域で提供されている民間から自治体までの育児サポートサービスを、パパから提案してママといっしょに調べてみてください。ママの休息時間の確保、お互いに「一人の大人として」心身ともに余裕のある状態を意識的につくることができれば、思いやりが土台にあるコミュニケーションとなり絆が育まれます。
――相互理解を深めることで夫婦関係はどう変わりますか?
上条 スポーツでもそうだと思うんですけど、チームがうまくいっているときって1+1=2ではなく、1+1=10のパワーが生まれます。夫婦が協力体制の整ったチームメイトになると、コミュニケーションが「ケンカ」ではなく、建設的な「作戦会議」に変わります。そのためにママは遠慮を捨てて、パートナーや周囲を思いっきり頼りましょう!パパはママが安心して頼れるように家事・育児のスキル格差がない状態になれるように意識しましょう。
娘たち世代が育児のしやすい日本社会にするために
――「親のがっこう」を設立したきっかけを教えてください。
上条 一番大きなきっかけは、長女が7才、二女が2才のときに私自身が産後うつと診断されたことです。体も気持ちもなんかしんどい状態は、長女出産後もずっとあって。でも育児ストレスという自己認識だったので、病院には行きませんでした。上の子が幼稚園に入園して、元気になって次女が生まれて、また同じ状態になりました。
その際、泌尿器科と呼吸器内科の両方から心療内科に行ってくださいといわれ、産後うつと診断されました。産後ずっと続いていた不調にようやく名前がついた感じで。3人中2人のママは産後うつであることに無自覚だといわれていますが、私自身もまさにそれでした。
――産後うつの原因をどう自己分析していますか?
上条 当時は気づいていなかったんですけど“いい母親でなければならない”“お母さんってふつうはこうだよね”という自分の中での理想像があって。世の中でつくられた完璧なお母さん像に、自分の育児を合わせようとがんばっていたのが一番の原因だったのかな。
責任感や思い込み、1人で抱え込む傾向が私は強くて夫や親、友人が「手伝うよ」と声をかけてくれても「1人でできるから大丈夫」って好意をシャットダウンしていたんですね。病院で診断されたのが二女の幼稚園の入園式の日。それまでの24時間365日、子どもとずっといっしょの環境から登園している間は自分の時間ができました。投薬や通院もしましたが、それよりも日常が変わったことで落ち込んでいた精神衛生が好転したと思います。
――産後うつの経験が「親のがっこう」につながるんですね。
上条 子育てセミナーをいろいろ受けまくった結果、愛情だけで育児をするのはすごくハードモードって気づいて。知識も搭載することで育児が楽になったのを体感したので、しんどいお母さんたちをゼロにしたくて、2016年から個人事業主のセミナー講師として活動を始め、2020年に法人化しました。
法人化した理由の1つは、個人活動ではママたちに知識を授けるのも限界があること。個人事業主時代、1年で約400名のママに届けられましたが、4〜5年活動を続けても育児がしんどいママが減った実感が一向に持てなかったんです。
2つ目は2人の娘の存在。彼女たちが将来妊娠出産をすることになった際、今の日本社会のままだったら、私と同じ落とし穴に落ちてしまうのではないか、という不安があります。世間的に正しいとされる育児を要請してくる社会の空気には、ママ個々人の知識だけでは対抗できません。その2つの問題を解決するためには、私1人の力では足りない。そこで規模を大きくしようと考えました。産後うつは10人に1人といわれていますが、それは診断がついた人の数。育児ストレスを感じているお母さんたちが病院に行き始めたら、その人数はもっと増える気がします。子育てが楽しくないママは産後うつ予備軍だと思うので、そうなる前に子育てって楽しいよって引き上げる活動をしています。
―― 「親のがっこう」が目指す、子育てのミライを教えてください。
上条 子育てに正解はないし、ママが働く働かないも自由だし、キャリア形成も人それぞれ、キャリア形成もそうだし、世間的な正解に寄せていくのではなく、ママが幸せなのが一番。100家族いれば100通りの幸せの形があることを認める社会になってほしいです。
「親のがっこう」は、育児は楽しく幸せで尊いものということを体感できるパパとママを増やしていく機関。子どもが成人までの約20年の育児期間で、絆を深める家族が増えるお手伝いができたらいいなって思っています。
取材・文/津島千佳、たまひよONLINE編集部
【10月20日(日)まで!ぜひ投票にご参加ください】
現在たまひよでは、生み育てやすい社会の実現に向けて活動している3つの団体にフォーカスをあてた「子育てのミライ応援プロジェクト」を実施中。応援したいと思う団体を1つ選んで投票してください! 今回お話を聞いた「NPO法人ママライフバランス」もエントリーしているので、チェックしてみてください。
<プロフィール>
NPO法人ママライフバランス代表、親のがっこう代表 上条厚子さん
1981年生まれ、2児の母。産後うつの原体験から、「自分の人生」も「子育て」も心の底から楽しむ親で溢れる社会をつくるためにNPO法人を設立。名古屋市の子育て支援事業を受託。1万人のパパママのお悩み解決の知見を生かし、妊娠期から産後まで伴走型のオンラインスクール事業「親のがっこう」を開始。男性育休促進・女性活躍推進の研修として、三井住友フィナンシャルグループやパーソルキャリア等の導入実績他多数。