SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 1歳になる娘は世界で1200人ほどしかいない希少疾患「FOXG1症候群」だった。てんかんで息が止まる恐怖の中、娘を守り抜いた10年…【体験談】

1歳になる娘は世界で1200人ほどしかいない希少疾患「FOXG1症候群」だった。てんかんで息が止まる恐怖の中、娘を守り抜いた10年…【体験談】

更新

FOXG1

神奈川県在住の堀田絵美さんは、長女(12歳)、二女(10歳)、パパの健一さんの4人家族。二女の歩美ちゃんは、1歳のときに「FOXG1(フォックスジーワン)症候群」と診断されました。FOXG1症候群は、世界で患者数が1200人ほどの希少な疾患です。

診断された当時は情報がゼロに近く、すべてが手探り状態だったという絵美さん。自身の経験から、同じ悩みを持つ人の心のよりどころをつくりたいと、健一さんとともに「FOXG1症候群患者家族会」を立ち上げました。

今回は、歩美ちゃんの病気が判明した当時の心境やこれまでの育児について、絵美さんと健一さんに振り返ってもらいました。全2回のインタビューの前編です。

順調だったはずの健診で一転。告げられたのは聞いたこともない病名だった

生後4日目の歩美ちゃん
生後4日目の歩美ちゃん

妊娠中の経過は順調で、出産したときも大きなトラブルはなかったという絵美さん。その後の健診でも、とくに異変を指摘されることはありませんでした。ところが生後4カ月をすぎたころ、ある変化が訪れます。

「自治体の3~4カ月児健康診査を受けた日のこと。その日も、問題なく終わろうとしていましたが、帰り際に医師から『少し気になることがある』と診察室に呼び戻されたんです。そこで、平均に比べて頭囲が小さいことを指摘されました。

ただ、そのときは『そう言われてみれば、たしかに少し小さいかも?』ぐらいで、お姉ちゃんと比べてもそこまでの違いは感じなかったんです。でも、その日から注意深く観察してみると、視線が合いにくかったり、夜泣きではすませられないほどずっと泣いて、眠らなかったり、少しずつ気になることが増えていきました。

それからは、紹介された医療センターで髄液の検査やMRIなど、あらゆる検査を受けました。それでもなかなか原因がわからず、最終的に遺伝子検査を受けた結果、FOXG1という遺伝子が欠損していることが判明しました。ちょうど、歩美が1歳を迎えたタイミングでした。

診断結果が出たときは、頭が真っ白になってしまって…。『歩けるようになりますか?』『口からごはんは食べられますか?』と、思いついたことを次々とお医者さんに聞いた気がします。

それまでFOXG1という言葉自体、聞いたこともありませんでしたし、ネットで調べてみても外国語のサイトばかりで欲しい情報が得られなくて。『この子は、これからどう成長していくんだろう』と、とにかく不安でいっぱいでした」(絵美さん)

5歳で激しいてんかんの発作が起こるように。「娘の呼吸を止めない」と走り回った日々

歩美ちゃん5歳のころのお写真
歩美ちゃん5歳のころのお写真

FOXG1症候群は、脳の発達に関わるFOXG1という遺伝子の働きに異常が生じることで起こる疾患です。主な症状として、自分の意思とは関係なく体が動いてしまう不随意運動や内斜視などの視力障害、睡眠障害、てんかんなどがあります。

症状のあらわれ方は人それぞれですが、歩美ちゃんの場合は遺伝子そのものが欠損している状態。そのため成長するにつれて、少しずつ周囲との発達の差や重い症状が目立つようになっていったのだそう。

「1歳になると、歩き出す子も増えてきますよね。でも歩美はおすわりもできず、なんとか片方に寝返りができる程度。ただ、そのときはてんかんなどの症状は見られなかったので、薬を飲まずに過ごせていました。

ところが5歳になる2日前のこと。家族旅行で訪れていた箱根の宿で、初めててんかんの発作が起きたんです。そのときは比較的軽い発作で、しばらくすると落ち着いたのですが、そのあとから、少しずつ発作の頻度が増えていって…。それにともなって、体にぎゅーっと力を入れたり、大きな声で叫んだりと、症状もしだいに重くなっていきました。

病院で詳しく調べてもらったところ、発作の最中に息が止まっていることがわかって。一般的に、90%を下回ったら救急要請が必要だといわれる酸素濃度が、歩美の場合は30〜40%まで低下。常に死と隣り合わせの状況と知って、恐怖を感じましたね。

それからは、発作が起きたらすぐに救急車を呼んだり、病院へ駆け込んだりする日々が始まりました。病院から処方された発作を抑えるための座薬は、絶対に忘れないようにすべてのカバンに入れて、『もし出先で発作が出たら、どこで座薬を入れよう』と常にシミュレーションをして。とにかくその当時は、歩美を守り抜くために必死でした」(絵美さん)

障害を理由にしないパパの姿勢にハッとさせられて

こども医療センターで採血待ちの歩美ちゃんと健一さん
こども医療センターで採血待ちの歩美ちゃんと健一さん

日々の通院に心の余裕がなくなり、押しつぶされそうになっていた絵美さんを救ってくれたのは、パパの健一さんでした。

「病院へ通い詰める毎日の中で、『どうしてうちの子が』という思いが消えませんでした。わが家だけが大変なわけではないと理解していたし、パパも仕事の調整をして歩美の送迎をしてくれていたのですが…。とにかく心が苦しかったんです。

それに当時の私は、歩美が意思疎通できないことで『これってもう育児じゃなくて介護なんじゃないか』と、悲観的になっていた部分があって。つい、歩美の目の前でそんな思いを口にしてしまうこともありました。 そんな私に、パパは『ちゃんと歩美も聞いているからね』と言ったんです。障害があることを理由にせず、歩美を1人の人間として尊重する姿にハッとさせられましたね。

通院についても『こういうのは全部、歩美の習い事だよ』と言ってくれて。その言葉でふっと気持ちが楽になりました。パパのおかげで、少しずつ前を向くことができました」(絵美さん)

健一さんがそんなふうに前向きな言葉をかけられたのは、彼もまた、自分なりに歩美ちゃんと向き合い、ひとつの「気づき」を得ていたからでした。

「僕の場合は、どちらかというと診断が下りるまでの病名がわからない時期がいちばんきつかったんです。一般的な育児方法はどれも当てはまらないし、夜通し泣き続けている理由もわからない。何もしてあげられないのが、すごく苦しくて。

でも、『FOXG1症候群』と診断されてからは『夜寝ないのも、この子の特徴なんだ』と受け入れられたというか。そこからは視点が変わって、『じゃあ、この子はほかの子と何が違うんだろう?』と考えられるようになりました。
ほかの子だって、習い事のために遠くの教室まで車で通ったりしますよね。そう思えば、歩美を病院へ連れて行くこともそれと同じなんじゃないかなと思えてきて。隣で悩んでいた妻にそのまま、自分の気持ちを伝えました」(健一さん)

現在、小学4年生。自分なりの意思表示ができるように

風船割りゲームをする歩美ちゃん
風船割りゲームをする歩美ちゃん

現在、歩美ちゃんは10歳。相変わらずてんかんの発作に見舞われることもありますが、薬の効果もあり、現在は年に1回程度にまで落ち着いてきました。とはいえ、目が離せない大変さは、今も変わることはありません。

ただ、そんな日々のなかでうれしい変化がありました。歩美ちゃんの確かな成長を感じる場面が、少しずつ増えてきたのです。

「以前は、ミキサーにかけたごはんを口に運んでも、不随意運動で舌が突出してしまい、食べ物を押し出してしまうことがよくありました。ひと口食べるのに5〜6回は運びなおさなければならず、食事にすごく時間がかかっていたんです。でも最近は、運び直さなくても食べられることが増えてきて。それだけでも私たちにとっては大きな進歩なんです。

言葉でのコミュニケーションは、やっぱり難しい。でも、自分の気持ちにそぐわないことがあると歯ぎしりをしたり、低い声を出したり。逆にうれしいことがあると、不随意運動が止まって視線を合わせてくれたり、口を閉じたり。歩美なりに意思表示が少しずつできるようになってきました。

ちなみに、最近の歩美がハマっているのはいたずら。普段は触っちゃいけないものや、お姉ちゃんの持ち物に寝返りをして手を伸ばすんです。マスクやメガネ、ストラップなどを器用に引っ張っていますね(笑)。

あとは、視線入力装置(視線で操作するデバイス)を使って、絵を描いたりゲームをしたりするのも大好きです。1年生のころはあまり集中できなかったのですが、今では特別支援学校の先生から『もうやめる?』『そろそろ時間だよ』と声をかけられるほど、夢中で取り組んでいます」(絵美さん)

これが私たちの家族だから。地域やお姉ちゃんと共に歩むこれからの未来

地元の小学校に登校したときの歩美ちゃん(※小学校の了承を得て撮影・掲載しています)
地元の小学校に登校したときの歩美ちゃん(※小学校の了承を得て撮影・掲載しています)

暗闇の中を歩くような時期を乗り越え、自分たちらしい病気との向き合い方を見つけてきた絵美さんと健一さん。これからの未来、そして家族に対してどんな思いを抱いているのでしょうか。

「歩美の疾患は重いので、今後どうしても地域の方々に助けてもらわなければならない場面が出てくると思います。だからこそ、『ここに歩美がいるよ』ということを皆さんに知ってほしい。歩美の友だちを、この地域にたくさんつくっていきたいんです。

今は特別支援学校に通っていますが、地域の小学校と交流する『副学籍交流』という制度を使い、年に4〜5回は地元の小学校にも登校しています。まわりのみんなに知ってもらい、地域とのつながりをつくっていけたらうれしいですね」(絵美さん)

そんな家族を支えるもう1人の大切な存在が、小学6年生のお姉ちゃんです。

「上の子には、甘えたい時期に我慢をさせてしまった部分も大きいと思っています。歩美が泣き出せば、出かけたくても待ってもらわなきゃいけない。申し訳なさを感じることもありましたが、今では家族のことを理解してくれる友だちもでき、自分でできることも増えて、たくましく成長してくれました。

これから彼女は、たくさんのことを経験すると思いますが、どんなときも、妹の病気の有無にかかわらず『これが私の家族なんだ』と胸を張ってもらいたいと思っています。そのためにも、お姉ちゃんの考えや人生を、これからも大切にしていきたいですし、自信を持って歩んでいってほしいなと願っています」(健一さん)

お話・写真提供/堀田絵美さん・健一さん 取材・文/しばたれいな、たまひよONLINE編集部

▼続きを読む<関連記事>後編

症例がほとんどないFOXG1症候群に、手探りで向き合ってきた堀田さん家族。その経験を生かし、絵美さんと健一さんは『FOXG1症候群患者家族会』を立ち上げ、現在は精力的に活動のサポートを行っています。続くインタビュー後編では、家族会を立ち上げた経緯や、活動に込めた思いについて、詳しくお話を聞きました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

堀田絵美さん・健一さん

PROFILE
二女が希少疾患「FOXG1症候群」を発症したことをきっかけに、2018年にFOXG1症候群家族会を立ち上げる(正式発足は2020年)。現在は、当事者家族同士の情報共有をはじめ、医学会でのブース出展などを通して、FOXG1症候群の認知拡大や患者とその家族の支援に向けた活動を行っている。

FOXG1 症候群患者家族会のHP

FOXG1 症候群患者家族会のInstagram

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2026年1月の情報で、現在と異なる場合があります。

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。