SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 娘の病気は、医者も詳細を知らない「FOXG1症候群」。先が見えない不安の中、「自分たちでやるしかない」と家族会を立ち上げた夫婦の挑戦【体験談】

娘の病気は、医者も詳細を知らない「FOXG1症候群」。先が見えない不安の中、「自分たちでやるしかない」と家族会を立ち上げた夫婦の挑戦【体験談】

更新

FOXG1

神奈川県在住の堀田絵美さんは、長女(12歳)、二女(10歳)、パパの健一さんと4人で暮らしています。二女の歩美ちゃんが1歳で診断された「FOXG1(フォックスジーワン)症候群」は、世界でもわずか1200人ほどしか症例がない希少な疾患。

診断当時、国内での症例は今よりもさらに少なく、「主治医も病気について詳しく知らない」という状況でした。どこにも頼れなかった苦しさをバネに、絵美さんと健一さんは「FOXG1症候群患者家族会」を立ち上げる決意をします。

今回は、家族会を立ち上げた経緯や、活動に込めた思いについてお話を聞きました。全2回のインタビューの後編です。

▼<関連記事>前編を読む

「自分たちでやるしかない」手探りの中で決意した家族会の発足

2018年 厚生労働省、AMED「レット症候群とMECP2重複症候群」班会議に参加
2018年 厚生労働省、AMED「レット症候群とMECP2重複症候群」班会議に参加

歩美ちゃんが、FOXG1症候群と診断されたことがきっかけで、家族会を立ち上げた絵美さんと健一さん。その大きな原動力となったのは、希少疾患ゆえにどこにも頼ることができなかった、当時のやるせない思いにありました。

「診断を受けたとき、FOXG1症候群は主治医の先生でさえまだ情報を持っていない病気でした。当時は、遺伝子が原因で起こるレット症候群の類(たぐい)ではないかと言われていましたが、症状を詳しく見ていくと異なる部分も多くて。しかも『FOXG1』とネットで検索しても出てくるのは外国語のサイトばかり。そのため、ほとんど情報を得ることができなかったんです。

そんなとき、たまたま私たちの出身地である福岡県に、レット症候群の研究センターがあることを知りました。結局、そこではFOXG1症候群についての情報は得られなかったのですが、レット症候群の関連疾患の会議に招待していただけることになって。

そこで出会った方に『情報共有だけならSNSのコミュニティをつくればいいけど、もし治療法の開発や研究を進めてほしいなら、自分たちで機会をつくるしかないよ』と助言をいただいたんです。

当時はまだ、国内にFOXG1症候群の家族会がなかったこともあり、『それなら、自分たちでやるしかない』と決意をしました。とはいえ2人だけでは限界があるため、まずは同じ疾患をもつ患者さんや、FOXG1について研究されている先生を探すところからスタート。協力してくださった先生を介して、初めて同じ疾患をもつ患者さんご家族とつながったときは『仲間に出会えた』と、とてもホッとしました。

同時に、疾患名を整える取り組みも始めたんです。実はそのころの日本では、『FOXG1症候群』という正式な呼び名がなかったんです。たしか、『FOXG1の遺伝子変異』とか、そんな名前で呼ばれていたような気がします。

でも、それではなかなか知ってもらえないと思ったので海外での呼称を参考に、医学部の教授の意見も伺いながら『FOXG1症候群』という名称を掲げて、ホームページを開設しました。2018年から内々で家族会の活動を開始して、正式に今の『FOXG1症候群患者家族会』として発足させたのは2020年の1月。歩美が5歳のときでした」(絵美さん)

情報を「集める」から「届ける」へ。メンバーとの対話で見えてきた次の指針

オンラインお話会の様子。お話会では群馬大学 三好悟一教授に勉強会を開いていただくことも

病気に関する情報がとにかく少なかったからこそ、まずは自分たちで情報を集めようと奔走してきた絵美さんと健一さん。最初は情報共有の場として始まった家族会ですが、メンバーとの対話を重ねる中で、その役割は少しずつ変化してきたといいます。

「家族会を発足した当初は、情報を集める場所をつくりたい一心で。ホームページを立ち上げるなど、メンバー間での情報共有を中心に活動していたんです。ただ、続けていくうちに『情報は集まってきたけれど、この先、私たちは何をしていくべきなのか?』と考えるように。

そこで、今後の方向性を定めるために、メンバーと直接集まってミーティングを重ねるようになりました。でも、しばらくしてコロナ禍が始まり、物理的に集まることが難しくなってしまって…。

それなら、オンラインで集まってみようと始まったのが、今も続く『オンラインお話会』です。メンバーは日本全国、そして海外にもいるので、住む場所に関係なくつながれるオンラインはとても相性がよかったんです。今はあえて『会議』ではなく、日々の困り事や悩みを自由に話せる場として運営しています」(健一さん)

そして、そういったメンバーとの対話は、活動の指針を「情報共有」のその先へと押し進めることになりました。

「メンバーと話し合う中で、家族会には2つの明確な目標ができました。 1つ目は、創薬などの研究を後押しすること。希少疾患では、処方された薬が合わないリスクがつきものなので、根本的な治療薬の研究や開発をより進めていただきたいと考えています。

2つ目は、医療従事者への情報発信をしていくこと。医師の間でもまだ認知度が低いため、FOXG1症候群に関する正確な情報を届けていくことで診察の精度を上げて、まだ診断が下りていないFOXG1症候群の患者さんやそのご家族の不安を少しでも取り除いていきたいです」(絵美さん)

立場が変わっても、かつての私たちが欲しかった場所を大切にしたい

2025年7月 日本遺伝子細胞治療学会学術集会 ブース出展
2025年7月 日本遺伝子細胞治療学会学術集会 ブース出展

発足当時、12家族だったメンバーは現在33家族にまで増えました。発足からしばらくは“とりまとめ役”として活動をしていた絵美さんと健一さんですが、現在は代表となった池田真紀子さんとともに精力的に活動のサポートを行っています。

「私たちがとりまとめていたころには成し遂げられなかったことを、今では代表の池田さんが形にしてくれているんです。たとえば、医学会にブースを出してメディアや医療従事者に直接FOXG1症候群を知ってもらう機会をつくったり、英語力を生かして、アメリカの支援団体『FOXG1 Research Foundation』との連携をさらに強固にしてくれたり。そのおかげで、アメリカの遺伝子研究データが入ってくるようになり、メンバーにとっても大きな希望になっています。

ほかにもSNSでの発信やホームページのリニューアル、相談窓口の設置など、対外的な活動も活発に。まだ診断が確定していない段階の患者さん家族から連絡をいただけることも増えてきました。以前の私たちのように情報が得られず苦しむ患者さんを、少しでも減らせていることを実感しています。

また最近、遺伝子検査前に不随意運動や内斜視などの症状を見て、FOXG1症候群の予測を立てられた例があったと聞いています。私たちが診断を受けたときは、症状から病名を予測することはほとんど不可能だったので、これも私たちが集めてきたデータや症例が先生方に届いたからなのかなと。そう思うととても感慨深いですね。

もちろん、私たちも活動から身を引いたわけではありません。横浜など近隣で学会があれば参加しますし、海外との連携も自分たちにできる範囲でしっかりサポートしています。

歩美が診断を受けたとき、お医者さんが『家族会がないんですよね』と残念そうだったのが、個人的にずっと心に残っていて。だからこそ、患者さんだけでなく先生方にとっても、家族会は『心のよりどころ』になると思うんですよね。この場所を大切に、これからもチーム一丸となって活動の輪を広げていきたいです」(絵美さん)

子どもは頑張っている。だから悲観的になりすぎないで

現在の歩美ちゃん
現在の歩美ちゃん

最後に、たまひよ読者やお子さんを育てるパパ・ママたちに伝えたいことを聞きました。

「以前、知り合いから『普通に生まれて、普通に育つことって、すごいことなんだよ』と言われて、それがずっと心に残っているんです。『普通ってなんだろう?』って。わが家にとっては歩美がいる毎日こそ普通。それは、決してだれかの普通と比べられるものではないと感じています。
私も以前は、まわりと比べて『どうしてうちだけ』と落ち込むこともありました。でも、パパに相談して『これがこの子の個性なんだ』と受け入れたら、心がすごく楽になった。だから、もし今困り事を抱えている方がいたら、1人で抱え込まずにだれかを頼って、自分たちなりの『普通』を歩んでいってほしいなと思います」(絵美さん)

「もし、わが子に病気や障害があるとわかったとしても、あまり悲観的になりすぎないでほしいです。その子はその子なりに、頑張って生きていると思うので。

僕も、最初は『どうすればいいんだろう』とつらい気持ちになったこともありました。でも今は、歩美の一挙手一投足に夢中というか。『今、いたずらしようとしているよね』『おいしいものを食べたいんだね』なんて言いながら、家族で笑い合えている時間が何よりの幸せです。

わが子をしっかり見てあげることは、本人のためでもあり、自分たちのためでもある。だから大変な状況にいるご家族もなるべく抱え込まずに、前を向いて生きていってほしいです」(健一さん)

お話・写真提供/堀田絵美さん・健一さん 取材・文/しばたれいな、たまひよONLINE編集部


自分たちのように情報が得られず、苦しい思いをする人をなくしたい。そんな切実な願いから始まった「FOXG1患者家族会」の活動。その精力的な取り組みは、今や患者家族だけでなく医療現場にも届き、疾患の認知度を着実に引き上げています。希少疾患を知ること。それは今、不安の中にいるだれかを救う大きな力になるはずです。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

堀田絵美さん・健一さん

2025年10月FOXG1 JAPAN meeting
2025年10月FOXG1 JAPAN meeting

PROFILE
二女が希少疾患「FOXG1症候群」を発症したことをきっかけに、2018年にFOXG1症候群家族会を立ち上げる(正式発足は2020年)。現在は、当事者家族同士の情報共有をはじめ、医学会でのブース出展などを通して、FOXG1症候群の認知拡大や患者とその家族の支援に向けた活動を行っている。

FOXG1 症候群患者家族会のHP

FOXG1 症候群患者家族会のInstagram

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2026年1月の情報で、現在と異なる場合があります。

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。