【妊産婦2,000人大規模調査PART2】7割の母親が日本は産み育てにくいと実感。最大の理由は経済的不安
0〜18カ月の子どもをもつママ約2,000人にを対象に、2020年春以降における生活・意識を調査した『2021たまひよ白書』。その調査結果・分析結果を、専門家のインタビューとともに紹介する3回連続企画の第2回目は、「出産・育児をめぐる母親の意識」がテーマです。
出産ジャーナリストの河合蘭さんにデータを見ていただきつつ、お話しを聞きました。
※今記事末に本調査より抜粋したデータを掲載しています。
育児は「楽しく充実してる」けど、「産み育てにくい社会」がママたちの実感!
育児を頑張っているママたちは、出産・育児に対してどのように感じているのでしょう?「子どもを産んでよかったと思うか?」という質問に対しては、回答者のほぼ全員が「産んでよかった」と回答しました。育児についても「楽しい、幸せに感じる」93.0%、「充実している」89.5%と、ほとんどのママがポジティブにとらえています。
子どもをもう1人以上ほしいと考えるママも76.1%と多く、配偶者や周囲の支援に満足している人ほど、その傾向が強くみられました。
しかし一方で、育児を「自分なりにうまく こなせている」と思う人は65.4%で、悩みや不安を抱えている人は少なくないことがわかります。「孤独感」をもつママも32.2%おり、なかでも専業主婦は36.8%と高ポイントに。
「2020年に気になったニュース」についても「産後うつ」が1位となるなど、産前産後のママにとって孤独感は見逃せない問題と言えそうです。
さらに、今の日本は「産み育てにくい」と感じているママが、67.9%と過半数を占めました。理由の1位は「経済的な負担」。「もっと子どもがほしいけど、難しい」と回答した人の理由1位も経済問題で、出産・育児の大きな足かせとなっていることがわかりました。
これらの調査結果を受け、出産ジャーナリストの河合蘭さんは、「これまで多くのご夫婦を見てきて感じるのは、配偶者のサポートに満足かどうか、ママが孤独を感じるかどうかは、家事育児の分担率だけが問題ではないということ。それよりもコミュニケーションがとれているかどうかがとても重要です」と指摘します。
「たとえ配偶者が仕事で忙しくても、自分を理解し気遣ってくれていると感じられれば、女性は“支えがある”と思えるでしょう。日本は夫婦共働きが当たり前になりましたが、意識はまだ昔ながらの“言わなくても察してほしい”という文化が根強いように感じます。それは男性だけでなく、女性も同じ。互いの立場でできること、できないこと、それに対する不安や対策などを、夫婦が互いに言葉にして伝え合うことがとても大切です。
男女はもちろん平等なのですが、生物学的には異なるのが事実、ホルモン分泌も違いますから、男性は、人によっては、子どもを優しく扱う行為が苦手で妻をいらいらさせます。その場合、男女は常に同じことをすべきだという意識は、男女どちらも幸せにしません。それよりも、各家庭なりの役割分担を考えて協力することが必要で、自分たちらしい形を探すためのコミュニケーションが大切です。
出産・育児は大変なことですが、楽しさや喜びも多いものです。今、育児は「負担」という言葉とセットで語られることが多いのですが、2人で“負担を背負う”のではなく、“楽しみや喜びを分け合う”という目線で、コミュニケーションが取れるといいと思います」(河合さん)
経済問題などのシステムを変えるには、「どうしてほしいか」を皆が言葉で伝えることが大切
「日本は少子化が深刻で、実際、2人目3人目はほしいけどあきらめたという声が多いのが現状です。その最も大きな理由は、今回の調査結果からもわかるように “経済的不安”です。特に教育に関するお金の負担は大きく、子どもを大学に行かせるため貯金のほとんどを使い果たしたというご家庭も少なくありません。
2人目以上の子どもの教育費はすべて無料にするなど、思い切ったシステムを作らなければ、決して子どもは増えていかないのではないでしょうか。
そういう現状を、多くのママ・パパが言葉にして、地域や会社、社会に伝えることがとても大切です。皆がそれぞれの言葉で伝え続けることが、社会を変えることにつながります。
この先の社会で生きていく子どもたちのためにも “言う”ことをあきらめずに、安心して出産・育児ができる社会をつくっていきたいですね」(河合さん)
育児にやりがいや楽しさを感じる一方、つらさや負担感を抱えるママも
出産・子育てに対するイメージは、「産んでよかった」「楽しい・幸せを感じる」など、ポジティブなものが大半。特に20代を中心に、子育てをポジティブに捉えています。
不安意識項目については、「自分の時間がほとんどなくつらい」が41.4%、「子育てを負担に感じる」34.0%、「子どもの成長に不安がある」30.7%「「孤独を感じる」32.2%が目立ちました。
子育てについて感じていること
属性別では、育児への肯定感(楽しい・充実)は、20代ママほど高い。孤独を感じるは、専業主婦ほど高くでていました(36.8%)
2020年に関心を持った妊娠・出産に関するニュース
2020年に関心を持った妊娠・出産に関するニュースでは、「産後うつ」が64.0%で最も多く、「不妊治療保険適用拡大」「ポテサラ論争」「新型コロナウイルスの妊婦・母子感染関連」「出産費用のゼロ」などが続きます
※ポテサラ論争(子ども連れの母親が総菜コーナーでポテトサラダを買おうとしたところ高齢の男性に「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言われたという出来事を、見かけた女性が、SNSに投稿し話題になった)※イクメンのフリだけ夫(イクメンと言われていた芸能人のスキャンダルなど)
「出産・育児をしにくい」原因も、子どもを増やせない理由も「経済的負担」が第1位
日本社会を「出産・育児がしやすい社会」と感じる割合は、14.4%と極めて低く、現在の環境が「出産・育児をしにくい」と感じているママが67.9%という結果に。「産み育てにくい」と感じている層ほど、職場の支援を十分と感じておらず、近親者や周囲のサポート も十分に受けていないことがわかりました。
なお、「出産・育児をしにくい」と思う理由の1位は「経済的負担」で、「職場や社会の子育てへの理解支援不足」「保育園不足」「配偶者の協力不足」と続きます。
日本は子どもを産み育てやすい社会と思うか
コロナ禍の出産時期や、年収、年齢など、属性に関係なく、産み育てにくい
産み育てやすい社会だと思わない理由
産み育てにくさは、経済的な負担のほか、職場や社会の理解不足も多く声があった
育児支援環境別 産み育てやすい、産み育てにくいと感じる人の違い
子どもを「あと1人以上欲しい」と思う人は76.1%。配偶者の育児・家事参加や周囲のサポートがある人ほど、子どもがほしいと考える傾向がうかがえます。
一方、「欲しいが難しい」と答えた人も11.3%いて、その理由の1位は「経済的負担」で78.4%。経済的負担が重いため共働きをせざるをえないけれど、制度や配慮が整っているところは少なく、そのため配偶者や周りのサポートが頼みの綱という現状が見え隠れします。
今後、ほしい子どもの数
子どもがあと1人以上ほしいは76%。20代では83%
子どもを1人以上ほしい人、ほしくない人との違い
配偶者や近親者のサポートがある人ほど、子どもをほしいと思う傾向に
これ以上は子どもをほしくないと思う理由
子どもをこれ以上ほしくないと回答した人に聞いた理由では、経済的理由がトップ。家事育児の負担感も約4割が大きいと感じている
「日本は産み育てやすい社会だと思わない」回答理由 フリーサンサーより
■子どもが泣いていると嫌な顔して見られることがある。子どもが熱で保育園から電話がかかって来た時など、職場の人に陰口を言われる。
■小さな子どもを連れていると見知らぬ人に育て方について小言を言われるなど、日本では子どもに対して周囲からの理解や歓迎が受けられないと感じることがある。助けてくれたり、手厚くしてとは言わないが、攻撃的になるのはやめてほしい
■男性が仕事を休めなかったり、多くは休みづらいこともあって、結局母親がすごく家事育児どちらともの負担を感じていると思う
■育休取得に否定的な会社などが存在している事実が、男性であるという理由だけで父親は責任を問われることがないことを示している
■保育園がなかなか入れないし、フルタイムと子育ての両立は大変だから短い時間で仕事に戻りたいが、そうすると保育園は入りにくくなり認可外にいれるしかなくなるが、今度は収入がたりなくなる
■共働きでないと食べていけない。働き方は変わっているのに育て方は変化していない。
【記事監修】
出産ジャーナリスト
河合蘭さん
Profile
3人の子どもを育てつつ、出産、不妊治療、新生児医療を追い続けてきた出産専門のフリージャーナリスト。『出生前診断-出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新書)で、2016年科学ジャーナリスト賞を受賞。
http://www.kawairan.com/
【調査概要】
調査名 たまひよ妊娠出産白書2021
調査実施期間 2020年10月29日~2020年11月2日
調査手法 インターネット調査
調査エリア 全国
調査対象者 20-39歳の女性で0~18カ月の第1子のいる母親 2060名
※子ども月齢で以下の通りグループ分け
0-5カ月:20年5〜10月 緊急事態宣言解除前後、解除後に出産
6-11カ月:19年11月~20年4月 通常期~新型コロナウィルス感染拡大期に出産
12-18カ月:19年5〜10月新型コロナウィルス感染拡大前に出産