元テレビ朝日アナウンサー 竹内由恵 妊活体験談 「周りに流されず自分で選択することが大事」
「仕事」と「妊活」の両立は難しく、仕事は妊活を進める上で大きな壁として立ちはだかることがあります。
テレビ局勤務のアナウンサーとして活躍していた竹内由恵さんはどのように考え、どんな選択をしたのでしょうか。
竹内由恵さんの妊活振り返りインタビュー<後編>は、竹内さんにとって妊活はどんな時間だったのか、妊活たまごクラブがお聞きしました。
もし授かれなかったら……そんな不安も夫に相談
タイミング法を続けること、約半年。ついに赤ちゃんを授かることができました。
●竹内由恵さん(以下竹内由恵)「妊娠検査薬で陽性が出たときはうれしかったけれど、大喜びという感じではありませんでした。妊娠初期は流産の可能性も高いから、『まだ安心はできない』という思いが強かったんです。夫にもすぐには伝えず、ちょうどそのころだった夫の誕生日に『陽性だったよ』と伝えました。夫のうれしそうな様子を見て、私もやっと『いろいろあったけど、よかった〜』と涙が出ました。とはいえ、夫も『まだ安心はできないね』と。2人とも慎重派なんです(笑)」
「胎動(※おなかの中で赤ちゃんが動くこと)を感じるようになって、ようやく安心できた」という竹内さんに、マタニティライフの過ごし方を教えてもらいました。
●竹内由恵「静岡に住みながらできるフリーの活動を始めていたので、本当はもっと仕事をしたかったのですが、新型コロナウイルスの影響もあり、あまりできなくなってしまって……。でも、それはしょうがないと気持ちを切り替えて、妊娠中は自分が好きなことや今できることをいろいろやりました。もともと好きだったコーヒーについて勉強して資格を取ったり、パッチワーク教室に通って赤ちゃんのおくるみも作りました。新しいことを始めたことで達成感も生まれ、楽しかったです」
もちろん、夫婦の時間も大切に
●竹内由恵「静岡は自然がたくさんあるので、週末は夫と一緒にドライブに行って、自然の中でストレスフリーな時間を楽しみました。子どもが生まれたらなかなか夫婦の時間が持てなくなると聞きますから、妊娠中に2人で過ごす時間をたくさん持てたことはよかったと思います」
妊活を経てのマタニティライフで、ご主人に対する思いにも少し変化があったといいます。
●竹内由恵「夫に対して、『一緒に家庭を築いてくれる仲間』と思えるようになりました。妊活〜妊娠中は悩むことや不安に思うことも多く、それを共有できるのは夫しかいません。そのことを実感したし、チームの仲間として支えてくれたことで夫への信頼感も深まりました」
妊活中の休日はゆったり、のんびり。夫とドライブに出かけたり、静岡のカフェ巡りを楽しんだりしました
ご主人への信頼感が増したのには、こんなエピソードも。
●竹内由恵「どんなに妊活を頑張っても、必ず子どもを授かれるわけではありませんよね。できない可能性もある、できなかったらどうしよう……。私が不安を口にするたびに、夫は『年齢も若いわけではないし、子どもが授かれない可能性も考えた上で結婚しているから大丈夫だよ』と言ってくれました。『2人の時間を楽しむという生き方も幸せだと思う』とも。その言葉で私は安心することができた。妊活をしたからこそ夫婦の絆が深まったと感じています」
自分自身と向き合い人生設計を立てました
結婚、退社、移住、そして妊活。竹内さんは、その都度、強い意志を持って自分の人生を選択してきました。今振り返ると、竹内さんにとって妊活はどんな時間だったのでしょうか。
●竹内由恵「夫婦で向き合う時間であり、自分自身とも向き合う時間。自分の人生プランを考える時間でもありました。私は妊活を通して人生観がガラッと変わったんです。就職活動をして会社に入り、無我夢中で仕事をしているときは、常に目の前の目標をめざして走っているような感じでした。でも今はもっと先に目を向けられるようになり、自分は何が好きなのか、どういう人生を歩みたいのかを考えるようになりました。これまでにない時間だったし、とても充実した時間だったと思います」
同時に考えたのは、幸せとは何かということ。
●竹内由恵「たとえば、仕事で成功するというのはわかりやすい幸せだと思います。20代までは仕事での自己実現が私の幸せでした。いずれ家庭を築き子どもが欲しいとは思っていましたが、それは当たり前のように手に入るものだと思っていたのです。実際に妊活してみると、子どもを授かることは奇跡だと思い知り、感謝できるように。私にとって幸せの尺度が変わった期間でもありました」
周りに流されず自分で選択することが大事
竹内さんは「いつか子どもが欲しい」という思いや「マタニティライフのあるある」話などをエッセイ漫画としてインスタグラムに投稿しています。
●竹内由恵「もともと、さくらももこさんが大好き。妊活中にさくらさんの『そういうふうにできている』というエッセイを読んで、笑いながら楽しみました。そんなふうに明るい気持ちになれて、皆さんが共感できるようなものが描けたらな〜と思って、漫画を描き始めたんです」
実はそれまで、漫画などまったく描いたことがなかったそう。
●竹内由恵「だからヘタクソなんです(笑)。でも、普段生活している中で起こった出来事などを『このエピソードを漫画にしたらおもしろいかも』と、自分自身が楽しみながら描いています。クスッと笑えるような話を描くのが好きなので、子どもが生まれたら育児での発見を漫画にしたいなと思っています」
最後に、これから妊活を始めようと考えている皆さんに、竹内さんからのメッセージ
●竹内由恵「周囲の理解が得られないと、仕事と妊活の両立は難しいかもしれません。仕事をしているときって、『仕事以外のことを考えるなんて甘い』『もっとしっかり仕事と向き合わないと』と思い込みがちですから。でも、本当に子どもが欲しいなら『私は今、ちゃんと妊活に取り組みたいんだ』と強い気持ちを持ったほうがいいと思う。自分の人生ですから、周りに流されることなく、自分で決めて進むことが大事だと思います。そして、妊活が思いどおりに進まず落ち込んでしまうこともあるかもしれませんが、そういうときこそ夫や周りの人に相談して、優しさに触れてほしい。貴重な時間を大切に過ごしてほしいと思います」
さらに、夫の立場である男性へはこんなアドバイスも。
●竹内由恵「女性の人生の中で、子どもを産む・産まないというのはすごく大事な部分。男性にももっと意識してほしいなと思います。妊活中も妊娠中も、妻にとって常に相談できる・共有できる相手は夫しかいません。男性はなかなか自覚を持てないかもしれませんが、妊活においては自分も当事者だということを忘れないでほしいと思います。『今日のクリニックはどうだった?』と聞いてくれるだけで、女性は『気にかけてくれているんだ』と気持ちがラクになります。実際に何もできなくても、声をかけてあげるだけで妻は励まされるんです。妻を安心させてあげることも夫の大切な役割です」
妊活エッセイ漫画「神様お願い!」
●竹内由恵 Profile
1986年生まれ、東京都出身。2008年、テレビ朝日に入社。アナウンサーとしてニュース報道、スポーツ、音楽、バラエティー番組などで活躍。2019年に退社し、静岡県へ移住。現在はフリーとして幅広い分野で活動中。インスタグラムでは仕事や静岡での暮らしぶりのほか、マタニティライフを描いたマンガも公開。
●取材・文/本木頼子
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