基礎体温をつけてみよう【医師監修】
妊活の第一歩は、まずは生理周期の把握と、基礎体温をつけてみること。
きちんと排卵しているかどうかを知るために、まずは「基礎体温」を毎日つけることからスタートしましょう。
生理のバイオリズムやPMSでの不調について、またピルについても詳しく解説しています。今回は宮﨑薫先生にお話を聞きました。
4つの周期で変化! 生理のバイオリズム
女性の体が妊娠するために必要不可欠な生理。月経の周期は25日〜38日といわれていますが、その間、女性の体と心はさまざまに変化しているのです。
男女とも意外と知らない生理について学びましょう
「女性の生理について、男女が学ぶのは、高校時代の『保健体育』くらいまでです。そのわずかな時間の知識を、今でも覚えているかというと、かなり疑問ですね。でも妊娠を望むなら、生理が毎月きちんとあることが前提。生理の不調は、体の不調のサインでもあります。女性だけでなく、パートナーと一緒に、改めて生理について学ぶことが大切です」と宮﨑先生。
生理になると、下腹部の痛みがつらかったり、イライラして人にあたってしまったり…。でも、思い返してみると、もしかしてその言動、生理前や生理中に限られていませんか?
ここでは月経周期を大きく4つに分けて、女性の心身がどう変化するのかを紹介しましょう。
4つの月経周期における女性の変化
<1>月経期(生理中):1~6日
平均的な期間は5〜6日。自分の周期をきちんと確認して
妊娠しなかった場合は、黄体ホルモンと卵胞ホルモンの分泌が減少。不要になった子宮内膜が剥がれ落ち、血液とともに体外へ排出されます。
10日以上経血が続く場合は、子宮筋腫などが疑われ、逆に2〜3日で終わる人は無排卵の可能性もあるので、医師に相談を。
<2>卵胞期 (生理後1週間):7~11日
女性としての魅力がアップ。心身共に絶好調になる時期
卵胞刺激ホルモンの働きで、卵巣にある卵胞が成熟し始める時期。卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が増え、子宮内膜が少しずつ厚くなっていきます。この時期は肌や髪がツヤツヤになるなど、女性としての魅力がグンとアップ。
体調がよく、考え方もポジティブになり、気分もリラックスした日が続きます。
<3>排卵期 (排卵後1週間):12~15日
子宮内膜がふかふかになり、妊娠の準備が万端に整う時期
卵巣で成熟した卵子が飛び出す排卵が起こります。この排卵の2〜3日前から排卵日翌日までが、妊娠しやすい時期。受精卵が着床して妊娠したときに備え、子宮内膜はふかふかにやわらかくなります。
また、排卵日を挟んだ2〜3日間はおりものの量が多くなる期間でもあります。
<4>黄体期 (生理前1週間):16~28日
感情の起伏が大きくなり、体は不調のオンパレードに
排卵直後から「プロゲステロン」という黄体ホルモンが多く分泌され、妊娠しやすい状態をつくります。乳房や下腹部が張ったり、痛みがでたり、便秘や下痢、疲れやすくなったり…と、体の不調が次々と現れる時期。
イライラしたり、涙もろくなるといった、感情の起伏が大きくなるのもこの時期の特徴です。
生理痛はなぜ起こる? 生理のしくみについて
初潮の平均年齢は12才前後、閉経年齢は50才前後と言われています。女性は妊娠・出産時期を除き、多くの人は40年にわたって生理とつき合うことになります。
生理は女性にとって痛みを伴う負担です
「そもそも生理は、子宮内膜が受精卵を迎える準備を整えていたのに、残念ながら妊娠しなかったため、不要になった子宮内膜が剥がれ落ち、体外に押し出されることです。このとき、子宮の収縮が強くなると、下腹部が猛烈に痛くなったり、腰がだるくなったりする症状が強く現れます。また、昔より妊娠出産する時期が遅く、また機会が減った現代女性は、閉経までに迎える生涯的な生理回数が増えています。つまり、生理痛に悩まされる要因が増えているということです」(宮﨑先生)
とくに昨今は、長時間のデスクワークや立ちっぱなしの仕事などによる、血行不良や冷えからくる生理痛などが増加。また、ストレスや過度なダイエットも、生理痛が重くなる一因です。さらに20代後半からは、眠気や不眠、気分の落ち込みなどの月経前症候群(PMS)に悩まされる女性も増えており、さまざまな重い症状を訴える人が急増中。
生理中の女性は、男性が思っている以上の痛みや不快さ、ストレスを感じていることをぜひ、パートナーは理解しましょう。
生理と排卵のしくみ~5つのステップ~
生理と排卵のしくみの5ステップをご紹介します。
- 卵巣の中で卵子が成長
脳からの指令の下、卵巣内の原子卵胞が発育し、左右にある卵巣のどちらかで、1個の卵子が成長。卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用でエストロゲンが上昇し、子宮内膜がふくらみ、着床準備をします。 - 卵子が卵巣から飛び出す
脳の下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)の作用で卵巣で成熟した、たった1個の卵子が卵巣のかたい壁を破って、おなかの中へと飛び出します。これが排卵です。 - 卵管の中で精子を待つ
卵巣から飛び出した卵子を卵管采がつかみ取ります。このとき、卵管の先で待ち受けている精子と出会うと受精卵ができ、受精卵は卵管を通って、子宮の中へと運ばれます。 - 子宮内膜が厚くなる
黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用で、子宮内膜はふわふわに厚くなって着床準備を整えます。同時に赤ちゃんを育てるために必要な血液を蓄えて、受精卵が運ばれてくるのを待ちます。 - 子宮内膜が剥がれて外へ出る
受精卵が子宮内膜に着床すれば妊娠が成立。しかし、受精卵が着床しなかった場合、不要になった子宮内膜は剥がれ落ち、卵子や血液とともに体外に排出されます。これが生理です。
生理痛の原因は?
生理痛にはさまざまな原因が考えられます。
生理は妊娠をすることなく、不要になった子宮内膜が血液とともに剥がれ落ち、体外へ排出されること。この際に、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンという物質の量が多いと、必要以上に子宮が収縮し、下腹部などに痛みがでます。痛みがひどい場合は婦人科での受診をおすすめします。
出産経験のない女性の中には、子宮の出口が狭く、経血がスムーズに流れにくいことから痛みを感じる人も。また、生活環境の変化によるストレスを感じると、ホルモンや自律神経のバランスが崩れることから血行が悪化し、痛みを強める場合があります。
体が冷えると血行が悪くなるため、痛みの原因となるプロスタグランジンが骨盤内に停滞。痛みがより強くなってしまいます。そもそもプロスタグランジンの働きで、血行が悪く、冷えやすい状態になるので、下腹部や腰を冷やさない工夫をすることで改善が望めます。
ストレスによりホルモンや自律神経のバランスが崩れると、血行不良で痛みが強くなります。過度な緊張や睡眠不足などが、痛みをより強くする原因になるので、リラックスした状態をつくりだすことが大切。また生理中は体が冷えやすい状態なので、温めることも大切です。
極度の下腹部の痛みや腰痛、腹部の膨張感、吐き気など、さまざまな症状を伴う生理痛で、プロスタグランジンの過剰な分泌により、陣痛のような痛みが伴います。子宮内膜症の初期段階という場合もあるので、鎮痛剤をのんでも効かない場合は婦人科での受診をおすすめします。
子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの疾患が原因で起こる月経困難症のことを指します。鎮痛剤や漢方薬での対処療法が必要な場合があるので、早めに婦人科で受診しましょう。生理中は「痛くて当たり前」と思いがちですが、起き上がるのがつらい場合は治療が必要です
PMSによる不調の原因3要素とは?
PMSとは月経前の3~10日間続く不調のこと。生理痛がつらすぎるときに疑いたい症状の一つです。生理痛とは一線を画す「PMS」について勉強しましょう。
PMSの症状は200種以上!まずは専門医に相談を
「PMSとは、Premenstrual Syndrome(生理前に発生する症状)の略で、生理の3〜10日くらい前から感じる乳房の張りや痛み、むくみ、便秘、イライラ感、眠け、気分の落ち込み、肌荒れなど、その症状は200種以上あるといわれています」と宮﨑先生。
つまり多くの女性が生理前に感じる自覚症状が、PMSに当てはまるのかもしれません。ところが、まだ意外に知られておらず、「生理前だから、この痛みはしょうがない」とほうっておく人も多いそうです。
PMSかな?と思ったら、まずは専門家に相談することが、解決の糸口です。
PMSによる不調の原因3要素とは?
PMSによる不調の原因となる3つの要素を説明します。
原因その<1>黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響
気分の落ち込みが最大限に
プロゲステロンはインスリンの働きを抑制し、血糖値を不安定にします。すると、おなかがすいていないのに、おなかがすいた状態になって胃酸が出るため、吐き気や胃痛が起こります。ほかにもイライラ感や頭痛などを招きます。
原因その<2>脳内物質「セロトニン」の低下
メンタルが不安定になる
セロトニンは、ノルアドレナリン、ドーパミンと並ぶ、三大神経物質の一つ。別名「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンですが、生理前になると分泌量が低下することで、イライラや気分の落ち込みが現れやすくなります。
原因その<3>インスリンの減少による血糖値の急上昇や急降下
イライラしたりキレやすい
血糖値の急上昇や急降下があると、PMSが悪化する傾向に!生理中に限らず、イライラしやすい、キレやすいといった人は、食事などで血糖値をコントロールすることが重要です。栄養バランスのいい食事を心がけましょう。
その他、PMSによる症状が重くなる原因
□ストレス
環境の変化や多忙によるストレスで緊張状態が続いたときに、PMSの症状はより強く現れます。できるだけ、心がリラックスできる日々を過ごしましょう。
□食生活の乱れ
カフェインが多いコーヒーなどを愛飲している人は症状が重くなりがちな傾向に。栄養バランスのよい食生活はもちろん、お酒は控えめに。
□体力の低下
免疫力が低下していたり、自律神経が乱れていると重くなります。ウォーキングなどの軽い運動を1日30分以上、週3回程度取り入れましょう。
□性格や考え方
まじめで几帳面、物事は完璧主義!という人は、PMSの症状が出やすい傾向に。血糖値を上げにくい食生活をするなど、心安らかに過ごせる工夫を。
メリットもたくさん? ピルについて学ぼう
ピル=避妊薬ではありません。生理痛がつらすぎる人に見て欲しい。生理痛を和らげる正しいピルの使い方について基本を紹介します。
生理による体の負担を軽減するのはピルです
「ストレス社会の現代、重い生理痛や生理不順に悩んでいる人が少なくありません。でもこうした悩みから解放してくれるのがピルです。」と宮﨑先生。
ピルは避妊薬というイメージが強く、まだまだ抵抗感がある人が多いかもしれませんが、「女性ホルモンが含まれている低用量ピルは、生理周期を整えたり、生理痛を軽減する効果があります」(宮﨑先生)
服用後、吐き気やだるさを感じる場合がありますが、いったんホルモンが安定すれば、その症状が消える人がほとんどだそう。生理痛に悩まされているなら、ピルの処方を専門医に相談するといいでしょう。
ピルがいいといわれる理由とは?
生理による体の負担を軽減するといわれるピル。ピルがいいと言われる3つの理由を説明します。
【理由1】生理の周期を規則正しく整える
ピルを飲むと、女性ホルモンの量の変動が少なくなるため、血中のホルモン量が安定します。その結果、肉体的にも精神的にも安定して、生理による不快な症状がやわらぐというわけです。
また、ピルを正しく服用することで、一定の周期で生理が来るようにコントロールすることができます。生理不順に悩んでいて、ピルを試したことがない人は、ぜひ検討してみて!
【理由2】生理痛や月経量を軽減してくれる
排卵時、受精に備えてふわふわに厚くなる子宮内膜。この厚くなった子宮内膜には、プロスタグランジンが含まれており、これが子宮収縮を促すと同時に痛みの原因になっています。
ピルに含まれているホルモンは、子宮内膜の増殖を抑えるため、生理痛が軽くなり、経血量が少なくなるのが普通です。中には、経血がまったくなくなることもあります。
【理由3】子宮内膜症や、さまざまな病気の予防にも役立つ
ピルには女性特有の病気を防ぐ作用もあります。たとえば子宮体がんは、卵胞ホルモンが過剰になる一方で、黄体ホルモンが少なくなるときに発生しやすくなる病気。しかし、ピルは黄体ホルモンの量を一定に保つ働きがあるため、発生率が下がることがわかっています。
また、ピルが排卵を抑えることで、卵巣がんにもかかりにくくなったり、子宮内膜症や乳腺症などの予防などにも効果があることがわかっています。
理想的な基礎体温とは? この基礎体温グラフは要注意!
妊活の第一歩は、まずは生理周期の把握と、基礎体温をつけてみること。きちんと排卵しているかどうかを知るために、まずは「基礎体温」を毎日つけることからスタートしましょう。
理想的な基礎体温のパターンを知っておこう
【高温期】10日間以上、約2週間続いていれば正常
排卵後、プロゲステロンの分泌により体温が高い時期が続きます。高温期が14日以上続くときは、妊娠した可能性が高いと考えられます。
また、10日未満と短い場合は、黄体機能不全の疑いがあるので、きちんと検査を受けましょう。
【排卵期】妊娠可能期
基礎体温の低温期がガクンと下がるのが排卵日。その前後が妊娠可能な時期で、卵巣から飛び出した卵子が精子との出会いを待っています。
受精できなければ、その後、高温期が約2週間続くという折れ線を描きます。
【低温期】約11~14日間続く
卵巣から分泌されるエストロゲンの量が増えている期間は、基礎体温が低めになります。生理が始まるころから排卵の時期まで、グラフ線は横ばいに。
基礎体温は何度が正解というより、低温期と高温期が明確になっていることが大切です。
基礎体温、こんなグラフには要注意!
基礎体温は体の変化や異常を察知できるバロメーター。折線の描き方に注意して!
【CASE 1】基礎体温の折線がバラバラ
ライフスタイルが乱れています
忙しい日々が続いて就寝時間が遅かったり、睡眠不足が体温に影響。まずは規則正しい生活を心がけましょう。
【CASE 2】高温期がずっと続いている
妊娠が成立している可能性が!
排卵後の高温期が14日間以上続いているようであれば、妊娠が成立している可能性が。早めに婦人科で受診しましょう。
【CASE 3】低温期が長く続いている
早めに婦人科で受診を!
卵胞は排卵できるまで成長したけれど、結局排卵できなかった、または卵胞が成長できず、排卵がないといったケースが考えられます。
【CASE 4】高温期の途中で体温が下がる
黄体機能不全が疑われます
高温期が10日間をきるようであれば、受精卵が着床するための環境が育ちにくいことが考えられます。早めに婦人科で受診しましょう。
【CASE 5】高温期の体温が低い…
血行を促進するための努力を!
高温期と低温期の差が0.3度未満の場合、冷えや血液の不足による生殖機能の低下が考えられます。体を冷やさない工夫が大切です。
【CASE 6】高温期がまったく見られない!
ホルモンバランスの乱れが一因!?
不規則な生活やストレスを強く感じていると、体温は低くなりがち。最も多い原因がホルモンバランスの乱れなので、婦人科で早めの受診を。
基礎体温表をダウンロードして、基礎体温を記録していこう!
ここをCheck!基礎体温表
基礎体温表をつける際に注意してほしいことを説明します。
□基礎体温表は生理が始まった日から記録しましょう
生理が始まった日から次の生理が始まる前日までが1周期です。生理が始まった日から基礎体温を記録するといいでしょう。
毎朝計測した体温の点と点をつないで折れ線グラフにしましょう。
□基礎体温を測るのは「朝起きたらすぐ」が基本です
基礎体温は朝目覚めたら、起き上がらずに寝たままの状態で体温を測ります。毎日、できるだけ同じ時間帯に測りましょう。
休日など時間がずれたときは、MEMO欄などにわかるように記入して!
□おりものの色や状態は記号にしておくと便利です
記入例:黄色=Y、白やクリーム色=W、灰色=H、血のような色=B、ピンクまたは茶色=P、粘りけが強いおりもの=S、水のようなおりもの=L、白くてぽろぽろしたおりもの=E、においがある=G、かゆみがある=K
□気になったことはこまかく記入しておきましょう
基礎体温表は婦人科を訪れる時の大切な資料。
セックスの有無やピルの服用、生理や体調で気になったことなど、こまかく記入するほど役立ちます。また、予定やイベントを書き込んで日記代わりに使っても。
監修/宮﨑薫先生
イラスト/itabamoe
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。