「ヒトの妊娠率は1カ月で20%」「体外受精での妊娠率は35歳→40歳で17%下がる」大切なのは、妊娠・妊活についてまず正しい情報を知ること【専門医】
2024年3月25日(月)、「妊活」について考えるスペシャルイベント、結婚と同時に考える「プレ妊活」supported by ユニ・チャーム製薬が開催されました。今回は、「プレ妊活」の基礎知識について生殖医療専門医/産婦人科医の市山卓彦先生にお話いただきました。
ヒトの妊娠率を知っていますか?
セミナーの冒頭「ヒトの妊娠率について知っていますか?」と市山先生からの質問。これには、参加者の皆さんそれぞれが首をひねっていました。
ウサギの妊娠率は90%、ヒヒの妊娠率は80%、そしてヒトの妊娠率は20%と断然下がるのだそうです。これは健康な男女の数値で、能(妊娠のしやすさや能力)と呼ばれ、年齢とともに低下し回復しません。1カ月で20%の確率で1年間性交渉を続けると93%の確率で妊娠しますが、逆に妊娠できない場合は「不妊」の可能性があります。
5年後の自分の姿を想像してみよう
次に「5年後のご自身の姿を想像したことがありますか?」と先生。子どもが1人いる未来、パートナーと2人でいる未来、子だくさんの未来……。そこで知っておいてほしいのが、妊娠における加齢と妊孕性の低下のこと。グラフは体外受精における年齢ごとの妊娠率と流産率。27歳から32歳では妊娠率が-1%ですが、35歳から40歳になると-17%とぐっと下がってしまうことがわかります。「同じ5年後でも今の年令によって妊孕性は大きく違います。特に35歳以降で出産や2人以上の子どもを望むなら、妊孕性を意識したスケジューリングが重要です」と先生。
不妊症の原因は女性だけではない事実を知ろう
不妊治療と聞くと、どうしても女性側の問題だと思われがちですが、「男性にも原因があることが多いのです」と先生。このデータを見てわかる通り、男性側に原因がある確率が24%、男女両方に原因がある確率が24%、つまり48%の確率で男性側に原因があることがわかります。そこで、クリニックでのブライダルチェックで自分自身の身体を知ることが大切になってきます。
ブライダルチェックとはどんなもの?
「ブライダルチェックとは“妊活版健康診断”のようなもので、未婚既婚・パートナーの有無関係なく受けることができます。そして受診することで不妊治療を強制されるものではありません」と先生。女性の場合、プランにもよりますがAMH(卵巣予備能・卵子の在庫数を予想する指標となる値)、女性ホルモン基礎値、クラミジア抗体検査などをチェックします。上のグラフはAMHの平均値ですが、女性は今ある卵子の在庫数を知ることができます。
一方、男性側は精液検査、クラミジア抗体検査などを行います。精液検査とは自宅で自己採精をして精液の状態を測るものです。乏精子症や無力精子症などコンデションが悪い場合も多く、実は100人に1人の割合で無精子症の方も見つかるのだそうです。
最後に先生からこんなメッセージがありました。「プレ妊活とは知ること。自分とパートナーの身体の状態を知って、ぜひその後の選ぶ時間を増やしてください。いつか子どもが欲しいと思っていたら、不妊や治療と考えず、まずは気軽にブライダルチェックを受けてみてください」。
お話/市山卓彦先生 撮影/花田 梢 取材・文/中島博子、たまひよONLINE編集部
プロフィール
市山卓彦先生(いちやまたくひこ)
医療法人torch clinic理事長・恵比寿院院長 日本産科婦人科学会専門医・指導医 日本生殖医学会 専門医
2010年順天堂大学卒。セントマザー婦人科、順天堂大学浦安病院不妊センター副センター長を経て、2022年5月torch clinicを開院。