2度の流産・緊急帝王切開を経て産まれた息子が1歳に。家電女優・奈津子が妊娠・出産を振り返る【前編】
家電女優の奈津子です。昨年生まれてきた息子が5月で1歳を迎えました。出産を境に、これまで息つく間も無く突っ走ってきましたが、4月からは保育園に入園したので風邪という洗礼を受けながらも、親子ともに新たなルーティンに少しずつ馴染んできています。
今回は私自身が経験した流産、そして出産までの過程を前後編にわけて振り返らせていただくことになりました。あくまでも個人の経験談にはなりますが、同じような境遇の方に少しでも参考になる部分があれば幸いです。
初めての妊娠で2度の流産を経験。無気力に襲われる日々
私は妊娠8週で1度目、妊娠4ヶ月(14週)で2度目の流産を経験しました。
どちらの時にも大きな自覚症状は無く、妊婦健診で発覚し、母体側のせいではないと医師から告げられたものの、どうしても赤ちゃんや夫に対して、申し訳ない気持ちが溢れました。
日本では妊娠12週以降は死産した胎児を火葬、または埋葬する必要があるため、2度目の流産の際には産声の無いお産をし、火葬を行い、死亡届の提出をしました。
これまで仕事一筋をモットーに野心的に活動してきた自分が、人生で初めて無気力に襲われる日々でした。
日本産婦人科学会によると、妊娠した女性の約40%が流産を経験しているという報告(※1)があるそうですが、こんなにも激しい精神的・身体的ダメージを比較的、高確率で受ける可能性があるのだということを当事者となって初めて知り、大きな衝撃を受けました。
1度目の流産から、1年と待たず再妊娠できたのはありがたかったものの、2度目の流産後は特に深い喪失感が拭いきれず、撮影などのスケジュールにも調整を要したことから「もう表舞台には戻れないかもしれない」と心の底から疲弊しました。
そんななか、2回、あるいは3回以上の流産は「不育症」の可能性があるという情報を知り、夫婦で話し合い不育症の専門医を訪ねて検査をすることになりました。
その結果、私の場合は自覚症状がなくても妊娠中に血が固まりやすい性質があると指摘され、それが胎児に悪影響を及ぼし、不育症ぎみの体質に繋がっている可能性があると診断されたんです。
そのため、3回目の妊娠では専門医の指導と服薬をしながらの妊婦生活となりました。
三度目の妊娠では約10ヶ月間、祈るような日々でした。
妊娠中は2度の前例があることから、安定期を過ぎてもギリギリまで周囲へ告知できないのがもどかしかったです。太ったのも、体調が優れないのも妊婦だからなんだけどな、と心の中で何度つぶやいたことでしょうか。
周囲のちょっとした一言にも敏感になってしまい、後で泣いたり怒ったり。妊娠後期にかけてはTVの収録が続き、「ありがたいけど、こんなに忙しくしていて赤ちゃんは大丈夫かな・・」と仕事への“不安”と“やりがい”がバランスを保てずに衝突を起こしていました。
このままでは心が壊れる。妊娠6ヶ月のとき、そう実感したため、思いきってクチコミを読み漁り、気に入ったメンタルクリニックを定期的に受診することにしました。抵抗感を持つ方もいるかもしれませんが、心の専門家から得られる知見やアドバイス、話を聞いてもらえることの安心感は、私の場合は良く作用しました。
心身ともに優れない日には韓国ドラマ鑑賞や散歩など趣味で徹底的にリフレッシュ。
妊娠出産、もうこれは人生において非常事態なわけだから、自分を甘やかすことも赤ちゃんのためであり、義務なのだと後半は割り切るようにしました。
自分を甘やかすことも赤ちゃんのため
「エンジェルサウンズ」という赤ちゃんの心音が聴ける“胎児超音波心音計”の存在も大きく、毎晩、それをお腹にあてて夫婦で心音を確認していました。
一度でも流産を経験すると、妊娠期間中はどうしてもよりナーバスにならざるを得ません。
それでも、趣味などに没頭し、医師やパートナーなど、他者へ辛さを共有するだけでストレスの溜め込み過ぎを防げると私は思います。
そしてもちろん、大変なことだけでなく、子どもの名前を考えたり、ベビー用品を集めるなど、妊婦だからこそ味わえる幸せなことも沢山ありました。ですから、現在妊娠中の方はどうか必要以上の恐れをいだきませんように。
こうして、医師や家族、友人やマネージャー陣など、多くの人に支えられて出産まで辿り着くことができたのは本当に幸いなことでした。今日に至るまで、感謝の気持ちを忘れたことはありません。
ただ前述してきたように、妊娠・出産は何が起こるのか全く分からず、同じような治療をした場合でも効果には個人差があり、治療方針や考え方は千差万別です。
不育症の定義も医師によって異なる上に、全てのケースで原因と対策が特定できるわけではありません。先が見えずに苦しんでいる方も多いと思いますし、私自身、次に妊娠した際には、どうなるのかは不明なのです。
だから今、この記事を読んでくださっている同じような境遇の方に対しては「私も大丈夫だったから、大丈夫」などという安易なメッセージを発信するつもりはありません。
ただ、私自身を含め、2回以上の流産や死産を経験しても約75%の妊婦さんが出産まで至るという調査結果(※2)があるということは、ここで共有させていただきたいと思います。
また、共に闇を経験した者として、相性の合う治療法や対策が見つかり、少しでもご自身の納得のいく道のりと出会うことができるように、この文章に願いを込めて心から祈りたいです。
後編では、緊急帝王切開による出産のエピソードをお届けします。
※1
公益社団法人 日本産科婦人科学会.「流産・切迫流産」.2018-6-16
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=4
※2
富山大学長 斉藤滋.「医学的検知からみた不育症治療の現状や問題点について」.厚生労働省.2020-11-19
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000697873.pdf
奈津子(なつこ)
Profile
ドラマ「野ブタをプロデュース」で女優デビュー。以降様々な作品に出演。二十歳の頃にはSDN48のメンバーとなり、アイドル業も経験。その際、劇場近くの電気街を通じて家電の魅力に目覚める。卒業後は「家電アドバイザーGOLD等級」を取得し、現在は家電女優として多くのメディアへ出演。私生活では150台以上の家電に囲まれながら、2021年5月に生まれた息子とエンジニアの夫と三人暮らし。東京FM「スカイロケットカンパニー」にレギュラー出演中。