SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 妊娠・出産
  3. 赤ちゃんの病気・トラブル
  4. 2023年4月時点でのNIPTの認証医療機関は414施設。「みんなで話そう!出生前検査のこと」【シンポジウムリポート】

2023年4月時点でのNIPTの認証医療機関は414施設。「みんなで話そう!出生前検査のこと」【シンポジウムリポート】

更新

トークセッションの様子。会場には100人の参加者が集まり、700人がWEBで視聴しました。

厚生労働省は、妊婦などに対して、出生前検査に関する正しい情報を提供するとともに、障害のある子どもの暮らしぶりや成長過程、家族とのかかわりの様子、受けられる医療・福祉などのさまざまな支援に関する情報の提供を行っています。2023年3月25日に開催された「みんなで話そう!出生前検査のこと」もその一環で、東京・大手町の会場には100人が参加し、700人がWEBで視聴しました。シンポジウムの内容をリポートします。

私たち家族にとって、出生前検査は必要な検査でした(須貝さん)

トークセッション1「出生前検査を受検された方の声」で、2人の息子の妊娠・出産時のことなどを語る、元アルペンスキー日本代表の須貝未里さん。

シンポジウムは、講演とトークセッションの2部構成で行われました。
講演は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科産科婦人科学分野の三浦清徳先生の「出生前検査と認証施設について」と、北九州市子ども家庭局の堀優子さんの「包括的な妊婦支援について」の二つ。出生前検査の現状に関する解説と、妊婦さんへのサポート体制についての説明がありました。

続くトークセッション1は「出生前検査を受検された方の声」をテーマに、元アルペンスキー日本代表の須貝未里さん、兵庫医科大学病院遺伝子診療部/産科婦人科の澤井英明先生、「親子の未来を支える会」の水戸川真由美さんが、出生前検査について話しました。

須貝さんには2人の息子がいて、3歳1カ月の長男がダウン症で、1歳3カ月の二男には先天性の心疾患があります。

「上の子を妊娠したときも出生前検査があることは知っていましたが、自分が受けることはまったく考えませんでした。普通に生まれてくること以外は想像もしていなかったからです。妊娠したら普通に赤ちゃんが生まれてくると思っていました。
なので、出産後に長男がダウン症だとわかったときは絶望し、『このまま出産をなかったことにして、病院に置いて帰りたい』というのが正直な気持ちでした。長男のダウン症と向き合うまでには 時間がかかりました。でも、長男が笑ってくれたり、首がすわったりと、ゆっくりとでも確実に成長する姿を見ているうちに、少しずつ前向きに向き合えるようになりました」(須貝さん)

須貝さんは2人目を妊娠したら出生前検査を受けようと、妊娠前から決めていたそうです。

「出生前検査で染色体の異常や先天性の病気が見つかったら、あきらめようと考えていたからです。私自身の生活の中で障害のある子を2人育てるのは無理だと思っていました。
妊娠が判明し、考えていたとおり『母体血清マーカー検査(※1)』を受けました。すると、ボーダーラインぎりぎりの陰性という結果でした。『第1子に染色体異常があったということで確率は高く出やすい』ということは事前に聞いていましたが、羊水検査も行いたいと伝えました。そして羊水(ようすい)検査のリスクなども考慮し、本当に検査が必要かを判断するために、遺伝カウンセリングを受けたのち、時間をかけて胎児の内臓、骨、血管などをしっかり検査する『胎児超音波検査(※2)』を受けました。その結果、染色体の異常はないことがわかりましたが、心臓に異常があることが判明。医師からは、生まれてこられるかどうかもわからない状態だと告げられました。

先天性の疾患があったら中絶することを前提にして検査を受けましたが、産むか産まないかをあと数日で決めなければいけないというところで、『この子に会いたい』『産みたい』という思いがわき上がってきました。夫にその気持ちを伝えたところ、『僕も産んでほしい』という返事。検査とカウンセリングの結果を夫婦で共有していたので、お互いが自然と未来を想定した上で心の準備ができ、それによって決断できたという感じでした」(須貝さん)

出生前検査について、「私たち家族には必要な検査だった」と須貝さんは振り返ります。

「心疾患があるとわかっていたので、出産前に産婦人科、小児科の先生とたくさん話し、出産後にどのような事態になる可能性があるか、どのような手術が必要かなどを、どんどん教えてもらうことができました。心の準備をしてから二男を迎えることができたのは、出生前検査で病気のことがわかっていたからだと思います。
二男は生まれたあと何度も手術を受け、つらい思いもたくさんさせてしまいました。でも、今、きょうだいで楽しく過ごしている姿を見るたび、『産んでよかった』と感じています」(須貝さん)

須貝さんの話を受けて澤井先生は、次のように発言しました。

「出生前検査を受ける・受けないを決めるのも、検査結果が陽性だった場合にどうするかを決めるのも、妊婦とそのパートナーです。だからこそ、正しい情報提供と適切な遺伝カウンセリングが必要です」(澤井先生)

多くの妊婦さんとそのパートナーのサポートを行ってきた水戸川さんからは、「上の子に遺伝性の疾患がある場合、下の子の出生前検査を行うことを迷う人が多い」という話がありました。

「出生前検査を受けることが上の子を否定することになるのでは、と考えてしまう人が多いように感じています。その一方、下の子にも障害があった場合、2人を育てていけるのかという不安も大きく、多くの人が非常に悩んでいます。医療機関、自治体、専門家、ピアサポートがそうした気持ちに寄り添い、支援することが重要です」(水戸川さん)

※1 母体血清マーカー検査:妊娠15~20週の妊婦から血液を採取し、ダウン症 (21トリソミー)、18トリソミー、開放性神経管奇形について、病気がある可能性の高さを調べる

※2 胎児超音波検査:妊婦健診で妊婦全員が受ける普通の超音波検査とは違い、この検査の訓練を受けた医師や検査技師が実施。心臓や脳の病気、口唇口蓋裂、横隔膜ヘルニア、消化管の閉鎖、腎臓や膀胱の病気、手足の形や指の本数などを見る

子どものいいところを伸ばすのが親の役目。障害の有無は関係ない(奥山さん)

トークセッション2「障がいのある方の暮らしや育児について」で、息子との生活について語る、俳優・タレントの奥山佳恵さん。

トークセッション2は「障がいのある方の暮らしや育児について」をテーマに、俳優・タレントの奥山佳恵さん、NHK報道番組センターの植村優香さん、大阪公立大学医学部附属病院ゲノム診療科/小児科・新生児科の瀬戸俊之先生、「麦の子会」の北川聡子さんが登壇しました。

奥山さんは20歳と11歳の男の子のママで、二男がダウン症であることを公表しています。ダウン症だとわかったのは出産後のことで、判明したばかりのころは「不安しかなかった」そうです。

「ダウン症について何の知識もなかったので、『私たち家族はこれからどうなってしまうんだろう』という怖さにつぶされそうでした。でも、いざダウン症の二男の育児を始めたら、長男より二男のほうが育てやすかったんです。子育ての悩みや心配は障害の有無とは関係なく一人一人違う。子どものいいところを伸ばしていくという親の役目は、健常児もダウン症児も同じということを学びました」(奥山さん)

奥山さんは二男が1歳5カ月のとき、二男のダウン症をブログで公表します。そのきっかけとなったのは長男のひと言でした。

「長男が小学校4年生のとき、NIPTを特集したテレビ番組を一緒に見ていました。何の検査なのかと聞かれたので、おなかの赤ちゃんがダウン症などの病気かどうかを調べる検査だと説明したんです。すると、『うちの美良生(みらい)はこんなにかわいいんだから、ダウン症の子どもはかわいいんだって言ったほうがいいよ!』って。

その前から、二男を育てる毎日の中で、ダウン症のことを公表しないのは、二男を否定することになるのではないかと感じていました。そんな私の背中を押してくれたのが、長男のこの言葉でした。それからは、包み隠さず二男の様子を公表しています。二男の成長や暮らしを見てダウン症のことを理解してくれる人が増えたら、二男の生きやすさにもつながっていくはず、と考えたんです」(奥山さん)

植村さんの19歳の妹はダウン症です。ダウン症の妹をずっと見守ってきた植村さんは、NHKに入局後、出生前検査の番組の制作を担当しました。

「取材してわかったのは、陽性の診断を受けて初めて、おなかの赤ちゃんが持っている病気がどのようなものなのかを知る人が、とても多いということでした。陽性の診断を受けてからあわてて調べ出すような感じです。多くの人は、障害を持つ人と接する機会が少ないので、わが子が障害を持って生まれてくるとわかると、大きなショックを受けます。障害のある人の暮らしについて、もっと広く発信していく必要があると感じました」(植村さん)

障害のある人やその家族を支援する「麦の子会」の北川さんは、「子どもに障害があるとわかったときのショックを、抑え込まなくていい」と言います。

「重要なのは、否定したい気持ちや悲しみ、苦しみなどを受け止め、『ママは悪くない』と肯定する人がそばにいること。障害がある人とその家族を応援する団体は各地にあります。そのことをもっと伝える必要があります」(北川さん)

障害をもつ子どもたちと接することが多い瀬戸先生からは、「障害があっても、子どもたちは明るくキラキラしている」という話がありました。

「障害がある子が大人になったあと、普通に過ごせる世の中にすることが大切です。そのことを多くの人が理解し、実現できるようにしなければいけません」(瀬戸先生)

監修・画像提供/令和4年度出生前検査認証制度等広報啓発事業運営事務局 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

シンポジウムでは、ダウン症をもつ各年代の人たちの暮らしを紹介する動画も流されました。さまざまな立場から出生前検査と、障害のある人の暮らしについて語る場となった今回のシンポジウムは、出生前検査についての理解を深める貴重な機会になったのではないでしょうか。

ドキュメンタリー 障害のある方の暮らし 

●記事の内容は2023年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。

妊娠・出産の人気記事ランキング
関連記事
妊娠・出産の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。