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2023年度から母子健康手帳の内容が変更に。11年ぶりに改正した理由は?【厚生労働省担当者に聞く】

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スマートフォンを使って妊娠中の女性
●写真はイメージです
west/gettyimages

母子健康手帳の内容が11年ぶりに改正され、 2023年度から母子健康手帳が新様式に。これまでも母子健康手帳は時代に合わせて変わってきましたが、今回は世の中のどのような動きを反映して改正されたのでしょうか。母子健康手帳の様式変更を担当した、厚生労働省子ども家庭局母子保健課の吉川裕貴さんに聞きました。

「母子」のための手帳ができてから、およそ80年

母子健康手帳の元になったのは、1942年に誕生した「妊産婦手帳」です。

「『妊産婦手帳』も、生まれたばかりの赤ちゃんの健康状態が記載できるようになっていましたが、妊産婦さんの健康状態の管理を主な目的として作られていました。その後、乳幼児期の成長発達も継続して見ていく必要があると考えられるようになり、妊娠・出産・育児期の健康管理をするための手帳として、1948年に『母子手帳』が誕生しました。その後、1966年に現在の『母子健康手帳』という名称となりました。
母子のための手帳ができて、およそ80年になりますが、母子健康手帳の基本的な考え方や役割は変わっていません」(吉川さん)

母子健康手帳はこれまで、およそ10年ごとに改正されてきました。

「10年程度で変更するというルールがあるわけではなく、社会情勢の変化や、育児に関する知見の変化などに合わせて、内容の見直しが行われてきました。その結果、だいたい10年おきに改正されてきたということです」(吉川さん)

デジタル化が進む世の中に対応できる母子健康手帳に

デジタル化が進む世の中に対応するということも、今回の母子健康手帳の改正の理由の一つと聞いています。デジタル化することのメリットとデメリットを教えてください。

「デジタル化を進めることで情報の更新がしやすくなり、出産・育児に関する最新の情報をつねに提供できます。情報の共有もしやすいですから、ほかの自治体に引っ越したときなどにも、関係者の間で情報の共有ができ、支援やサポートを継続しやすいのもメリットです。
今のママ・パパは、基本的には常にスマホを持ち歩いていると思います。自治体によっては、”母子手帳アプリ”が導入されているところもありますので、いつでもどこでもスマホさえ持っていれば、母子健康手帳の情報を確認できるようになっていくと考えています。

さらに、マイナンバーカードを活用した母子健康手帳のデジタル化も進めていく方針ですし、社会のデジタル化のスピードを考えると、次の改定はこれまでより短いスパンで実施されるかもしれません。

一方で、紙の手帳だからこそ共有しやすいこともあります。健診で小児科を受診したときなどは、紙の母子健康手帳なら受付に手帳を渡せば済みますが、デジタル化した場合、かかりつけの小児科医とどのように情報を共有するか、という課題があります。
また、将来、母子健康手帳を子ども時代の健康の記録としてお子さんが活用する際も、紙の手帳なら手渡せば完了します。一方、デジタルの場合はアプリの情報の譲渡をどのように行うか、といった問題があります。
こうした課題を検討し、デジタル化に向けた環境を整備していく必要があります」(吉川さん)

「母子」という名称は継続しつつ「親」ではなく「保護者」として多様性に対応

「母子健康手帳」の名称の「母」の部分については、父親の育児参加が重視されている今、「変更したほうがいいのではないか」という意見もあったそうです。しかし、引き続き「母子健康手帳」の名称を使うことになったのはどうしてでしょうか。

「実は、10年ほど前に行われた『母子健康手帳に関する検討会』でも、名称について議論が行われました。しかし、妊娠、出産、産後という、女性のライフステージの中で健康管理をしっかり行わなければいけない時期をサポートすることは、この手帳の大きな目的です。妊婦さんや出産後のママに対して保健指導や情報提供を行うことが重要であるのは、『妊産婦手帳』であったころから変わりません。あわせて、乳幼児期も、ライフステージの中で健康管理が重要なタイミングであり、子どもたちの健やかな成長を支えていくことは重要です。

このように考えた場合、父親の育児参加を視野に入れつつも、手帳に『母子』という名称を残すことには合理性があると考えられ、前回の改正に続き、今回も名称の変更は行われませんでした」(吉川さん)

「母子健康手帳」という名称は継続されましたが、中を開くと、「父親」「母親」ではなく「保護者」という表現が使われています。

「現代は家族の形が多様化しています。子どもを育てる人が必ずしも夫婦ではないこともあるし、親でない場合もあるかもしれません。広い概念で子どもを守り、育てる人ということで、使い方が不自然にならない範囲で『保護者』」という表現にしました」(吉川さん)

多言語版の母子健康手帳や低出生体重児向けの成長曲線などの充実を図ったのも、多様性に配慮してのことだとか。

「日本語を母語としない人が、日本で妊娠・出産・育児を行う場合、不安なことが多いと思います。また、低出生体重児を出産した場合は、母子健康手帳に記載されている情報は当てはまらないことが多く、そうしたお子さんに沿った情報が求められている、という意見も多くありました。このような人々は、こまやかなサポートが必要だと考えますので、より的確な情報を提供ができるように今後充実を図っていきます」(吉川さん)

2023年4月以降、新しい様式に

新様式の母子健康手帳は2023年度から配布とのことですが、全国一斉に新しいいものに切り替わるのでしょうか。

「年度が替わる2023年4月以降、新しい母子健康手帳の配布が始まります。切り替えのタイミングは自治体の状況によって多少の差が出てくる可能性がありますが、これまでの様式の母子健康手帳を受け取った場合でも、引き続き使用できますので、安心してください」(吉川さん)

4月以降にこれまでの様式の母子健康手帳を配布された場合、どのようなところが変わったのか知ることはできるのでしょうか。

「母子健康手帳で提供される出産・育児の情報は、2023年からはホームページで見られるようになっています。
母子健康手帳情報支援サイト(https://mchbook.cfa.go.jp/)をご覧いただければ、新しい情報を確認してもらうことができます。」(吉川さん)

現在子育て中のママ・パパは、4月以降に下の子を授かった場合、上の子の母子健康手帳は今までと同じもの、下の子は新しいものということになります。何か気をつけなければいけないことはありますか。

「とくにありません。それぞれの母子健康手帳に沿って妊娠中や子どもの健康の記録をつけていただければ大丈夫です。実は私も2歳の子どもがいますので、今後もこれまでの様式の母子健康手帳を使って子どもの健康管理をしていきます」(吉川さん)

お話・監修/吉川裕貴さん 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

デジタル化の推進や多様化する家族に対応できるように、バージョンアップした母子健康手帳。「上の子がいて、4月以降に下の子を授かって新しい母子健康手帳をもらった人は、2つの母子健康手帳を比べてみると、こんなところが変わったんだなと、感じていただけるのではないかと思います」と吉川さん。すでに母子健康手帳を持っている人も、これから母子健康手帳を手にする人も、「母親と子どもの健康を守る」ために、母子健康手帳を積極的に活用していきましょう。

●記事の内容は2023年3月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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