“気になる研究結果” 妊娠前からの「朝食抜き」習慣が、妊娠糖尿病につながるかも !?【エコチル調査より】<PR>

「ゆっくり寝ていたいから朝は食べない」「体形に影響しそうだから朝食は抜いている」…妊娠前、そんな食習慣だった人はいませんか? 妊娠前から、継続的に朝食を抜いている妊婦さんは、 妊娠糖尿病の発症リスクが高いという気になる研究結果が。環境省が取り組む「エコチル調査」の結果について、詳しく解説します。
★ラストにアンケートご協力のお願いがあります。ぜひ最後までお読みください。
朝食をほとんど食べないことと妊娠糖尿病に、どんな関係があるの?




<エコチル調査でわかったこと>
朝食をほとんど食べない妊婦さんは、妊娠糖尿病の発症リスクが高まる
●「エコチル調査」とは2011年に、環境省によって取り組みが始まった全国調査のこと。約10万人の女性が妊娠中から参加し、環境中の化学物質や食事、生活習慣などと、生まれた子どもの成長・発達とのさまざまな関連を調べています。
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、20 代女性の朝食欠食率※1は 18.1%、30 代では 22.4% で、4~5 人に 1人が朝食を抜いているとされています。また、朝食欠食は「糖尿病」に関係する可能性があることを報告している研究もあります。
ですが朝食欠食と、妊娠を機に糖代謝異常となる「妊娠糖尿病」との関連については、よくわかっていませんでした。
そこでエコチル調査では、妊婦さんが妊娠前からどのくらいの頻度で朝食を食べていたのかを調査。大阪ユニットセンターの研究チームが「朝食を抜くこと」と、妊娠糖尿病の発症に関連がないか、調べてみることにしました。
【調査対象】
全国約8万4669人
エコチル調査に参加している女性(妊娠初期の食事調査に回答。妊娠糖尿病などの既往があった人は除く)
【調査したこと】
妊娠初期から、過去12カ月間の朝食摂取頻度をアンケートで調査
①毎日食べた
②1週間に5~6回
③1週間に3~4回
④1週間に0~2回
妊婦さんをこの4つにグループ分けし、①を基準として②~④のグループの妊娠糖尿病発症リスクを調べました。その結果を示したものが次のグラフです。

グラフ参考/エコチル調査10周年成果集 エコチル調査でわかってきたこと(2021 エコチル調査 千葉ユニットセンター)より
※グラフの元になった研究結果は大阪ユニットセンターによるもの。
妊娠前・妊娠初期に毎日、朝食を食べていた人は全体の 69.4%、週5~6 回は 10.5%、週3~4 回は 8.7%、週0~2 回は 11.4%でした(図示なし)。妊娠糖尿病は全体の2.3%(1935 人)で発症が確認されています。
グラフを見ると、「朝食は週に0~2回」というグループは、「毎日食べた」グループに比べ、妊娠糖尿病のオッズ比は約1.2と、妊娠糖尿病が多く見られたことがわかります。この分析結果から、妊娠前から朝食をほとんど食べない食習慣だった人は、妊娠糖尿病の発症リスクが高まることが考えられます 。
●用語説明 オッズ比、95%信頼区間とは?
「オッズ比」とは、ある現象の起こりやすさを比べた値です。基準となるグループの起こりやすさを「1」とします。
グラフ内のI型のバーは「95%信頼区間」といって、同じ調査を100回繰り返したとき、95回程度は、その範囲に結果がおさまることを意味しています。このI型のバーが「1」を超えると‟起こりやすい”、「1」をまたいでいる場合は‟基準グループと差がない”という見方をします。
【注】母親の年齢、調査地域、喫煙、飲酒、婚姻状況、学歴、職業、世帯収入、うつの既往歴、巨大児の出産歴、多嚢胞性卵巣症候群の既往歴、出産経験、身体活動量、総エネルギー摂取量、欧米型食事パターンスコア、妊娠前の体格指数(BMI)を調整済みのデータです。
【注】この研究では、夕食を食べた時間や睡眠時間など血糖値に影響する条件は検討されていません。また、朝食の内容を把握できていないため、朝食の質と妊娠糖尿病発症との関連は分析されていません。
参考・引用論文/妊娠前・妊娠初期における朝食欠食と妊娠糖尿病の発症との関連について【著:董加毅ら】「The American Journal of Clinical Nutrition 2020;111:829-834」
エコチル調査大阪ユニットセンター
そもそも、妊娠糖尿病ってどんな病気?
妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて出現する糖代謝異常のこと。通常、私たちが食事からとった糖質(炭水化物)は体内でブドウ糖に分解され、インスリンというホルモンによって、エネルギー源として取り込まれます。糖尿病は、この糖質がエネルギーとして使われる糖代謝に異常があり、慢性的に血糖値が高くなってしまう状態。ママが妊娠糖尿病になると、妊娠高血圧症候群の合併率、分娩時の帝王切開率、巨大児分娩率が高くなることが知られています。
それらを早期発見・管理するため、妊娠初期、中期に血糖値を調べる検査が妊婦健診で行われています 。
参考:一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会(糖尿病と妊娠に関するQ&Aより)、
公益社団法人 日本産科婦人科学会(産科・婦人科の病気より)
●用語説明 「血糖値」とは?
「血糖値」とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のこと。食事からとった炭水化物などが消化吸収されブドウ糖となり血液に入ります。健康な人でも食前と食後で血糖値は変化します。低すぎると低血糖、高すぎると高血糖となり、どちらの状態も健康への影響が心配されます。
参考:e-ヘルスネット(厚生労働省)

〈この研究結果から、どんなことが考えられる?〉食生活を見直すきっかけに
まず重要な点は、妊婦健診では妊娠初期だけでなく、中期にも妊娠糖尿病の検査を行うことが推奨されており、兆候がないか確認をし、妊娠糖尿病と診断された場合は、適切な指導・治療がされるということです。
たとえば、妊娠初期につわりや体調の変化で思うように食事がとれない人もいるでしょう。この記事を読んで「朝食をほとんど食べていないと妊娠糖尿病になってしまうの?」と不安になる人もいるかもしれません。
妊娠糖尿病にかかわる要因は、さまざま報告されていて一概には言えません。ただ、今回の「朝食を毎日食べたグループに比べ、ほとんど食べなかったグループは妊娠糖尿病になった人が多い」という研究結果を見ると、日々の忙しさなどから、なにげなく朝食を食べない習慣になっている場合、注意を払う必要があるかもしれません。
妊娠は、自分自身とおなかの赤ちゃんの健康を考えるいい機会。食事の内容や生活習慣を見直して、よりよくするために工夫できるといいですね。
【注】つわり時期の食事のとり方に不安がある際は、主治医や助産師さんに相談しましょう。
【エコチル調査って何?】

「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は、2011年1月に環境省によって取り組みが始まった調査です。環境中の化学物質や生活習慣などと、子どもの成長・発達との関連を調べています。
参加者は約10万組の親子。妊娠中から開始し、出産後も追跡調査が行われ、現在は最年長の子どもが12才。そして13才以降も調査を継続することが決定しています。ママや子どもたちが協力してくれた調査データは研究・分析が進められ、多くの論文が発表されています。
●今回は、エコチル調査で導き出された多くの研究成果の一部を紹介しました。エコチル調査は世界各国からも注目されており、これらの研究成果は子どもたちの未来にも役立てられていく予定です。
提供/環境省
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