【専門家監修】働く妊婦が快適に仕事を続けるために知っておきたいこと
仕事を持っている女性にとって、妊娠はうれしいことである半面、今の生活を大きく変化させる出来事でもあります。妊娠したら仕事を続けるのか辞めるのか、仕事を続けるとしたら妊娠中の体調管理や復帰後のことなど、不安もいっぱい。そんな働く妊婦さんが快適に仕事に取り組めるためのコツを紹介します。
妊娠したらいつまで働くことができる?
妊娠したらいつまで働くことができるかは、人それぞれです。妊娠を機に産休を取らずに辞める人もいれば、産休・育休を取って職場復帰する人もいるからです。それだけではなく、妊娠中、特別なトラブルがなく産休に入るまで働ける妊婦さんもいれば、切迫流産やつわり、切迫早産などのトラブルで安静を指示されたり、なかには入院をしなければならない妊婦さんもいます。いずれにしても、産後も働く意思のある妊婦さんは早めに伝え、無理なく妊娠生活と仕事を両立できるように努めましょう。
仕事を続けるかどうかも含めて、職場に早めに報告することが大切
妊娠していることを職場に告げる時期は迷うところ。ただ、あまり先延ばしするのは望ましくないでしょう。妊娠初期はつわりで気分がすぐれなかったり、自分の思うように体が動かなかったりすることが多いもの。体調不良で欠勤し、職場に迷惑をかけることもあるかもしれません。さらに、産前・産後の休暇での欠員に対する仕事の割り振り、人員の補充、異動などが必要になるので、直属の上司には早めに報告しましょう。報告の時期に決まりはありませんが、流産の可能性が低くなる妊娠10週前後に報告できるとベターです。
産休・育休を取る場合の注意点
産休・育休の知識は持っていない会社はないはずですが、なかには妊娠を報告すると「いつ辞めるの?」「パートや嘱託になったら?」などと言われるケースもあるようです。もしも仕事を続ける意思があるなら、産休・育休の時期も含めて早めに伝えましょう。辞める場合も、同様に早めに報告したほうがいいでしょう。仕事を続けるにしろ辞めるにしろ、職場の人への感謝の気持ちと謙虚さを忘れずに、好印象を持たれるような伝え方をするように心がけましょう。
「続ける」or「辞める」気持ちの整理ポイントはココ!
□今の仕事は自分にとって、出産後も続けたい仕事なのか
□仕事に対する自分の意欲は、出産後も変わらないか
□退職した場合、減った収入で生活していけるか
□夫は妻の仕事に理解があるか
□職場は産後の女性が働きやすい雰囲気か
□上司は子どもを持ちながら働くことに理解があるか
□自宅付近の保育園事情はどうか
□幼児期は自分が教育したいという気持ちは強いか
□積んだキャリアは一旦ストップしても活かせるか
□雇用状態にこだわりがあるか
仕事を続けるか辞めるかは、どちらが良い悪いと判断できるものではありません。育児に専念すれば子どもとの時間ができ、子育てが落ち着けば自分磨きの時間も作れます。一方で社会との接点が少なくなる、社会復帰がしにくくなる面も。仕事を続ければ経済的なメリットは大きく、ママ以外の役割があることで精神的に安定する一面もあります。その一方で復帰時期までに保育園に入れるかどうか、復帰後の仕事と育児の両立ができるかどうかなどの不安も。目先のことだけでなく、将来を見据えて夫婦でよく話し合い、冷静に判断することが大切です。
勤務中の注意点とトラブル対処法
「妊娠は病気ではない」と言いますが、妊娠前と同じような仕事の仕方では、体に負担がかかってしまいます。妊娠中は無理は禁物。何かトラブルがあってからでは遅いので、体調が悪い場合は早めに上司に事情を説明し、仕事を調整してもらえるようにしましょう。同僚の負担を増やしてしまって申し訳ないと思う人もいるかもしれませんが、今はおなかの赤ちゃんが第一と割り切ることも必要。仕事で関わりの深い同僚などには、あらかじめ起こりうるトラブルや突発的な事態があることを伝えておくといいでしょう。「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と一言添えておくと、その後の関係もスムーズに進むことが多いでしょう。
働く妊婦の最初の試練「つわり」。どう対処する?
働く妊婦にとって、最初にぶつかる試練がつわりかもしれません。空腹になると気分が悪くなることも多いので、バッグにキャンデーやひと口タイプのチョコレートなどを常備しておくと、急場をしのぐことができるでしょう。また、周囲から漂う食品や化粧品、たばこなどのにおいが気になる場合は、マスクを持ち歩いたり、率直に事情を話したりして理解を得ることも必要です。休憩時間には外に出て気分転換したり、ときには体を休めて、無理のないようにしましょう。つわりの時期はとくに、毎朝の通勤がつらい妊婦さんも多いようです。満員電車は妊婦の体に負担をかけるため、ラッシュを避けるなどの工夫をしたいもの。上司に相談し時差通勤にしてもらうのも一つの方法です。
体のトラブルを防ぎ、快適に働くために注意したいこと
①デスクワークの人はときどき体を動かす
同じ姿勢で仕事を続けると、おなかが張る、腰痛の原因になるといったことも。ときどき立ち上がって歩いたり、休憩時間に体を軽く動かしたりしましょう。
②立ち仕事や重労働は避ける
妊娠中の立ち仕事や重労働は、おなかが張りやすくなる原因となります。できれば、負担の少ない仕事へ配置転換してもらうように相談してみましょう。
③仕事中におなかが張ったら休む
おなかが大きくなると、ちょっと疲れただけでおなかが張ってきます。切迫早産を予防するためにも、無理は絶対にしないで。おなかが張ったらなるべく横になって体を休めましょう。
④冷えに要注意
体が冷えると、おなかが張ったり、風邪をひきやすくなったりします。冬はもちろん、夏のエアコンでの冷えにも要注意。職場では、寒暖の調節にカーディガンやひざ掛け、ソックスなどを常備しましょう。
働く妊婦を守る「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用しよう
「母性健康管理指導事項連絡カード」はつわりや妊娠高血圧症候群、切迫流産などで体調が悪いのに休めない場合に利用できる申請書。産院でもらえるほか、厚生労働省の関連サイトからもダウンロードできます。医師が「母体の勤務状況の緩和や休憩に関する措置が必要」と指導し、カードに記入します。それを事業主に提出すると、労働時間の短縮や通院休暇などの取得が可能になります。上司などに、自分の口から体調不良を言い出しにくいとき、このカードを見せることで仕事を軽減してもらいやすくなるというメリットも。詳細は在住地域の自治体に確認しましょう。
上手な引き継ぎと産休・育休の取り方は?
産前・産後の休暇とは、出産予定日前の6週間(双子などの多胎妊娠では14週間)と、産後の8週間は休みを取れる制度です。また、育児休業制度の対象は子どもが出生した日から原則としてお子さんの1才に達する日(誕生日の前日)までになっています。ただし、保育園に入れないなどの事情がある場合は1才6か月に達する日まで(2017年10月からは2才に達する日まで)延長されます。申し出た休暇期間を取得することができますが、勤務先や雇用形態などによって具体的な規定は違ってきます。勤務先の総務課などで調べておきましょう。
また、産休に入る前にやらなければならないのが仕事の引き継ぎ。引き継ぎをいかにうまく行うかで、仕事の能力が高いと評価されることも多いようです。とくに復帰予定の人は、お休みの間に職場の人が困ることのないよう、わかりやすい引き継ぎ資料などを整理しておきましょう。
スムーズな引き継ぎのポイントは?
□引き継いだ人の立場に立ってわかりやすく
□誰が見てもわかるようなファイルや資料を用意
□産休直前ではなく、時間をかけて少しずつ用意
□産休前に、後任の人に一度業務を担当してもらう
□社内、社外を含め、関係各所への挨拶も忘れずに
引き継ぎファイルを作るなどして、自分がいなくてもわかるようにしっかりマニュアル化しておきましょう。引き継ぎがしっかりできる人こそ、仕事ができる人と評価され、スムーズな復帰につながりやすくなります。
妊娠中は、「迷惑をかけたくない」という思いから、つい仕事を頑張ってしまいがち。でも、妊娠期間は長い人生での限られた短い時期。職場の人たちの協力を得ながら、今はおなかの赤ちゃんを優先してあげてほしいものですね。働く妊婦さんを守る制度もあるので、上手に利用して、快適な妊娠生活を送れるようにしましょう。
執筆/たまごクラブ編集部
初回公開日 2017/08/18
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