妊娠初期こそ家族で知っておいて!流産と切迫流産について【産科医】
妊娠初期の心配事といえば、やっぱり、流産。流産や切迫流産(せっぱくりゅうざん)に関するさまざまな気がかりを、東京大学大学院の藤井知行先生にうかがいました。
Q1 胎児心拍が確認されたあとで流産してしまうこともある?
A ほんのわずかな確率ですが、流産することもあります
流産の9割以上は妊娠12週未満の早期流産です。その期間内でも、妊娠週数が進むにつれて流産になる確率は低くなっていきます。流産になる場合、胎児心拍の動きが確認できる妊娠6~7週ごろまでに流産する人が大半を占めています。ただし、確率は低いとはいえ、胎児心拍が確認されたあとでも流産してしまうケースはあります。
Q2 流産になりやすい体質や条件はある?
A 年齢や病気なども影響しますが、ほとんどは胎児側の問題です
流産の9割近くは、受精卵の染色体異常など、胎児側に問題があって起こるものです。こうした流産は偶発的なもので、だれにでも起こり得ます。
母体側の原因で起こる流産は少数ですが、高年妊娠の人、子宮頸管が短い人(子宮円錐切除術を受けたなど)、子宮に病気がある人や子宮内腔が変形するような子宮筋腫がある人、過去の流産経験がかなり多い人などは流産しやすい傾向にあります。
Q3 流産経験後の妊娠。また流産しないか心配です
A 1回だけの流産経験であれば、気にしなくても大丈夫
流産は一定の確率で起こるものです。1回だけの流産経験でしたら、気にする必要はありません。
ただ、2回続けて流産した場合は、習慣流産(3回以上続けて流産すること)に至る可能性があるので、専門の医師※を受診しましょう。
また、1回の流産でも、それが後期流産だった場合は、相談してみるといいでしょう。習慣流産などの不育症の場合、ストレスを取り除くことで改善する例もあると考えられています。
※不育症、習慣流産の専門医はFuiku-Laboで検索できます。http://fuiku.jp/
Q4 つわりの症状が急になくなりました。流産のサイン?
A つわりの有無と流産は関係ありません
つわりは、胎盤の絨毛細胞から生産される物質の影響などで起こると考えられています。赤ちゃんの状態とはまったく関係ありません。つわりの症状と流産を結びつけず、「つわりが治まって楽になれたのは、よかった」と受け止めましょう。
Q5 切迫流産になった人は切迫早産になりやすい?
A 早期切迫流産であれば、切迫早産とは関係ありません
妊娠12週未満の早期切迫流産の場合は、原因が特定できず、症状は一時的なものであることがほとんど。切迫流産になったからといって、切迫早産になりやすいということはありません。
一方、妊娠12週~21週6日の後期切迫流産の場合は、母体側に原因があることも多いので、症状が治まらないまま妊娠22週以降に入ると、切迫早産と診断されることも。その場合は、医師の指示に従って治療することが大切です。
監修/藤井知行先生 文/栗本和佳子
流産は一定の確率でだれにでも起こり得るものです。また、切迫流産が流産につながるケースはほんのわずかです。むやみに怖がらず、おなかの赤ちゃんのためにも、ゆったりとした気持ちで過ごすように心がけましょう。
参考/「初めてのたまごクラブ」2020年秋号「正しく知っておこう 流産と切迫流産」
藤井知行先生
Profile
東京大学大学院医学系研究科 産婦人科学 教授