はりきって買ったけど、使わなかったもの【御手洗直子のコマダム日記】
今回は直子のお買い物のお話。大センセーションを巻き起こした「婚活コミック」著者、御手洗直子さんが結婚して2児の姉妹の母に。あいかわらずのつっこみどころ満載の日々、渾身のひとコママンガ&エッセイでお送りします。「つっこみが止まらないコマダム日記」#73
ベビーベッドに見る夢とまぼろし
購入してから9年近く経ったがベビーベッドを処分することになった。9年間お世話になったベビーベッドを…と書きたいところだが、ほぼお世話になっていない。なぜならむすめが一切ベビーベッドで寝なかったからである。
むすめはベビーベッドで寝なかった。それどころかおそらく3歳ごろまでベッドに直接横になって寝たことはなかった。抱っこで延々揺らし続けながらの寝かしつけを経て1歳半からは室内で寝られず近所の河原を一時間おんぶして歩かないと寝なかった。我々は河原を徘徊していたため物理的にベビーベッドでは寝られなかったのだ。そして部屋に戻ってからはゆっっっっくりとむすめを丸めて、だっこしながら私とセットでなければむすめはベッドで寝なかった。ゆえにベビーベッドでは一瞬たりとも寝ることはなかったのである。
ベビーベッドがベビーベッド以外での用途として活用される機会はあった。車を車庫に入れるまでの間、トイレに行っている間など短時間の安全確保のための檻である。
檻でしか…檻という用途でしか君を活用できなかったことを誠に遺憾に思う…君のアイデンティティを尊重することなく、その後絵本と毛布置き場にしてしまったことを、申し訳なく思うのだ。だって次女も結局ベビーベッドで寝なかったんだもの。
かわいいベビー布団も、かわいい敷布も、柵にぶつかっても痛くないように柵につけるクッションも全部揃えたが使うことはなかった。9!年!間!ほぼ新品でそこに在り続けたベビーベッドおよびそれに関連する用品一連の物を先日全て解体した。新品のままほこりを被っているベビーベッドをドライバーで解体し、経年劣化した小さなシーツを切り、マットを切り、縛り、普通ゴミに転生したグッズになんとも言えない感慨が湧くのであった。ベビーがいるのにベビーベッド一回も使わないとか思わないじゃん…?
なのでプレママさんたちに魔女からのお告げを与えるのだ。お前の子は、ベビーベッドで寝ないかもしれないよ。おそろしい。
おそらくは容易に拡張可能な布団床敷きが正解なのであった。しかしベビーベッドには買いたくなる夢があるのだ。(おわり)
御手洗直子
Profile pixivで大人気。累計閲覧数1100万を誇る爆笑コミックエッセイスト。なんでそんなにネタ満載人生を・・・という謎の人。既刊に「31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる」「31歳ゲームプログラマーが婚活するとこうなる」(共に新書館)、「腐女子になると、人生こうなる!~底~」(一迅社)、「つっこみが止まらない育児日記」「さらにつっこみが止まらない育児日記」(ベネッセコーポレーション)など。たまひよのサイトで、数話限定公開中。
御手洗直子twitter:@mitarainaoko