「生後半年は病気にならない」という思い込みは危険!赤ちゃんと病気の免疫、小児科医が解説
新型コロナウイルス感染症の流行もあり、「感染症」「ウイルス」「免疫」「抗体」という言葉をよく耳にするようになりました。育児中のママ・パパは、赤ちゃんの病気についても気になるところでしょう。「生後半年は病気にならないって本当?」「母乳を飲んでいると風邪をひかないって聞いたけれど…」というママ・パパの疑問や不安について、小児科医の黒澤照喜先生に聞きました。
赤ちゃんが病気にかかるのは成長のステップでもあります
赤ちゃんがかかる病気の多くは、ウイルスなどの病原体による感染症です。
病原体に対抗して、体を守る働きをするのが「免疫」。免疫は、体に侵入した病原体を追い出す働きをしますし、その病原体をより効率よくやっつける「抗体」をつくります。風邪や胃腸炎などは、原因となるウイルスに数多くの種類や型があるため、何度も感染することがあります。
赤ちゃんはワクチン接種をしたり、病気にかかったりするたびに抗体を獲得していきます。そのため、病気にかかるのは成長のステップといわれることも。成長とともに少しずつ病気にかからなくなります。
「生後6カ月までは病気にかからない」って聞いたけれど、本当?
【黒澤先生より】
赤ちゃんは、ママのおなかの中でもらった抗体と母乳に含まれる免疫物質によって、生後6カ月ごろまでは感染症からある程度は守られています。
ただし、「生後6カ月まで病気にかからない」というのは誤りです。6カ月未満でも抗体がない感染症や、親などの周囲の人がかかっている風邪、感染症以外の病気にはかかる可能性があります。
では、生後6カ月以降は病気にかかりやすくなるの?
【黒澤先生より】
赤ちゃんが生まれ持った免疫は、成長とともに少しずつ減っていき、4~5カ月ごろに少なくなるといわれています。
生後6カ月ごろからは赤ちゃん自身で抗体を作り出すようになるのですが、まだ十分ではありません。
そして、このころから行動範囲が広がり、細菌・ウイルスを外でもらいやすくなることから、「生後6カ月以降は病気にかかりやすくなる」といわれることがあります。
また、1才ごろから、保育園に通うなどの集団生活が始まると、病原体に接する機会が増えるため、感染症を繰り返すこともあります。
赤ちゃんの体は病気になりながら抗体を作り、成長とともに少しずつ病気にかかりにくくなります。
「母乳を飲んでいると風邪をひかない」って本当?
【黒澤先生より】
母乳には特有の免疫物質が含まれているのは事実です。とくに産後数日の間に出る“初乳”には多く含まれています。
ただし、これは特定の病原体に作用するというよりは、腸管内の病原体からの防御や、腸内細菌(いわゆる善玉菌)の維持などに役立つもの。
「母乳を飲んでいると風邪をひかない」ということはありません。母乳で育てていても、ミルクで育てていても成長に大きな差が出たり、感染症のかかりやすさが変わったりするなどの影響はないといわれています。
感染症が怖い。外出時は赤ちゃんにもマスク着用させたほうがいい?
【黒澤先生より】
赤ちゃんには、正しくマスクを着用させるのが難しく感染予防効果があまり期待できません。
一方、息苦しいときでも自分でマスクを外せない、親が赤ちゃんの顔色の変化に気づきにくくなるなど、着用による危険性もあります。
そのため、基本的に2才未満の赤ちゃんにマスクは不要です。代わりにママ・パパがマスクをする、3密(密集、密接、密閉)を避けるなど、別の方法で感染症対策をしましょう。
感染症が怖くて、赤ちゃんと家にこもりがち…
【黒澤先生より】
新型コロナウイルス感染症が流行しているため、心配になるママ・パパもいることでしょう。
① 3密を避ける
② 大人はマスク着用する
③ こまめなアルコール消毒や手洗いをできる限り行う
などの方法で、リスクを下げるといいでしょう。
1カ月健診で問題がなければ、徐々に外気浴を始め、3カ月ごろからはお散歩を習慣にするのが理想です。家にこもりすぎず、ある程度外気に触れ刺激を受けたほうが親子ともに気晴らしになります。
監修/黒澤照喜先生 写真/なべ 取材・文/ひよこクラブ編集部
赤ちゃんの体調が悪くなると親はあわててしまいがちですが、落ち着いてケアをしてあげましょう。病気にできるだけかからせないために、また重症化を防ぐためには、家族で手洗いを徹底する・感染症の流行状況をチェックする・予防接種を積極的に受けることも大切です。
参考/『ひよこクラブ』2021年12月号 「症状からわかる親がすべきことBOOK~一家に一冊赤ちゃんの病気対応マニュアル~」
※掲載している情報は2021年11月現在のものです。