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「疲れきってベッドに突っ伏すお母さんを見て…」小児がん拠点病院の医師や看護師らが病気と闘う子どもと家族の“応援団”を立ち上げ

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特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも子育てしやすい社会になるようなヒントを探したいと考えています。

今回は、全国に15カ所しかない小児がん拠点病院の一つ、「神奈川県立こども医療センター」で働く医師や看護師が立ち上げた、小児がんの子どもと家族を地域で応援するボランティア団体「Cheer Families On!(略して“ちあふぁみ!”)」の活動を取り上げます。

小児がんは15歳以下の子どもが患うがん(悪性腫瘍)です。大人のがんに比べると患者数は少ないものの、全国で年間2500人の子どもが新たにがんを発症し、1万6000人近くの子どもとご家族が小児がんと闘っているといわれています。

小児がんの子どもと家族をとりまく状況を知りたいと、「ちあふぁみ!」立ち上げメンバーである、同センターの血液・腫瘍科医師の柳町昌克さん、横須賀とも子さん、看護師の岡部卓也さんに話を聞きました。

小児がん拠点病院の医師や看護師らが、ボランティア団体を発足

左から神奈川県立こども医療センター看護師の岡部卓也さん、医師の横須賀とも子さん、柳町昌克さん

――2020年8月に本格稼働した、小児がんの子どもと家族を地域で応援するボランティア団体「ちあふぁみ!」。まずは、立ち上げのきっかけを教えてください。

岡部卓也看護師(以下、敬称略):柳町先生が当院に異動されたことが一つのきっかけになりました。立ち話的に、小児がんの子どもやご家族をとりまく状況について話しているときに、「こんなことができたらいいよね」という話になって。柳町医師も横須賀医師も私も、ずっと同じような思いを胸に秘めていたことが分かって、「じゃあ、やってみようか」と走りだしたんです。

横須賀とも子医師(以下、敬称略):私たち医療スタッフの本分は、病気の治療です。私も、長らく小児腫瘍の世界で治療に力を尽くしてきました。ただ、忙しく過ぎていく日々の中で、ずっと心に引っ掛かっていることがあったんです。

たとえば子どものベッドに突っ伏して眠っている親御さんの姿を見たとき。預かり先や学童施設でがんばって待ってくれている、ごきょうだいのお話を耳にしたとき。治療以外にも心配なこと、大事なことが、たくさんある。ご家族やごきょうだいの負担や苦しみ、寂しさに気づいていても、日々の診療で忙しく、何もできていませんでした。でも、その気がかりを口に出してみたら、実は、同じような思いを抱えている人たちが院内にたくさんいたんですよね。

岡部:「ちあふぁみ!」を立ち上げたのは私たち3人ですが、一人またひとりと仲間が増え、現在は20名を超える職員が参加しています。職業も、医師や看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、保育士、事務スタッフなどさまざまです。闘病中のお子さんの療育環境の改善を目指しながら、精神的にも肉体的にも、そして経済的にも、想像を超える負担と闘っているご家族を応援する取り組みを行っていきたいと考えています。

病気の子と同じように我慢や寂しい思いをしている“きょうだい”たち

ちあふぁみ!HPで紹介されている「小児がんの子どもと家族が置かれている状況」

――「ちあふぁみ!」の活動内容について教えてください。

岡部:活動に賛同する企業や個人の方に「ちあふぁみ!応援団」になっていただき、「かながわ県立病院小児医療基金」を通して寄付金を募っています。この寄付金をもとに「療育環境の改善」や「きょうだい支援」「ご家族への経済的な支援」「自費検査のサポート」などの実施を目指しています。

現在取り組んでいる内容としては、こども医療センターから徒歩5分の場所にある、患児の家族が滞在する宿泊施設「リラのいえ」と連携した支援です。ご家族の宿泊費の一部を援助したり、私たち「ちあふぁみ!」メンバーが交代で、受付や戸締りなど「リラのいえ」運営の一部をお手伝いしたりしています。

そのほかコロナ禍で必要となったオンライン面会用のiPhoneを当院に寄贈したり、「献血バス」の広報活動を行ったり。今はまだ着手できていませんが、ゆくゆくはご家族のメンタルサポートや、医療を受ける子どもたちの心理的ケアを行う「こども療育支援士」との連携なども視野に入れています。

柳町昌克医師(以下、敬称略):昨年から行っている活動の一つに、ごきょうだいへの絵本プレゼントがあります。

小児がんの治療をはじめると、お子さんは数カ月以上、自宅に帰れないことがほとんどです。お母さんやお父さんは、付き添いのために毎日病院に通うわけですが、そのあいだ、ごきょうだいは、「リラのいえ」や預かり施設で時間を過ごしたり、親戚の家で待っていてくれたりするわけです。

病気の子と同じように、きょうだいもまた、寂しい思いや我慢をしています。加えて、どうしても、きょうだいへの負担にはスポットライトが当たりにくいのです。ごきょうだいがなにか問題を抱えていても、後手になってしまうことが多いんです。「ちあふぁみ!」としても「きょうだいを見守っているよ」「あなたのことも応援しているよ」と伝えたくて、この絵本プレゼントをはじめました。

「ちあふぁみ!」のロゴには絵本作家ヨシタケシンスケさんのイラストが

ちあふぁみ!のロゴは、絵本作家ヨシタケシンスケさんと、クリエイティブディレクターの長浜孝広さんからの応援をいただいています。

柳町:応援してくださる皆さまからお預かりしている寄付金を使わせていただいて、小児がんのごきょうだいにお贈りしているのは、作家ヨシタケシンスケさんの絵本。実は、私たち「ちあふぁみ!」のロゴにもヨシタケシンスケさんのイラストを使わせていただいています。ヨシタケさんの絵本を読んで楽しい気持ちになったり、絵本をきっかけに親子の時間が生まれたりしたら、うれしいなと思っています。

絵本をプレゼントした、ごきょうだいから「ありがとう」とお手紙をいただくこともあります。とくに今はコロナ禍で、なかなかごきょうだいと会える機会がありませんから。こんなふうに“つながり”が生まれることは、とてもうれしいですよね。お手紙をいただいた僕たちが、反対に元気をもらっているくらいです。

――活動に賛同する「ちあふぁみ!応援団」も着実に増えているようですね。

岡部:はい。少しずつではありますが、現在までに50ほどの企業や団体、個人の方にご支援いただいています。

もともと“地元の応援団を増やしていこう”という思いが我々にはありました。この“地元”には、神奈川県立こども医療センターの周辺地域(六ッ川・弘明寺・東戸塚・上大岡)はもちろん、遠方から当院に通われている“患者さんの地元”も含まれます。

グーグルマップで「ちあふぁみ!応援団」がいる地域に旗を立てて、HPで紹介しているのですが、もしも自分の地元に応援の旗が立っているのを見たら、子どもたちやご家族が勇気づけられるのではないかと。治療を終えて自宅に戻るときに、「地元にも応援してくれる人たちがいる」と思ってもらいたい。現在は、当院の周辺地域からのご支援が多いのですが、全国、いろいろな場所に旗を立てられたら、と願っています。

これまでの“あたりまえの日常”が一変し、 悲しみや疲れ、経済的な不安の中で過ごす親たち

ちあふぁみ!HPで紹介されている「子どもたちに聞いた、“あったらいいな”こんなサポート」

――病気の子どもを育てるご家族の“治療以外の悩みや困りごと”には、どのようなことがあると思われますか。

横須賀:私がまず気になるのは、蓄積されていく“親御さんの疲れ”です。

当院の面会時間は10時~22時(コロナ禍の現在は12時~22時)。いつ来て、いつ帰ってもいいですし、何度来院してもいいのですが、遠方の方は気軽に来られませんから滞在時間が長くなります。「どこにいても結局、気になるから」と、お子さんのそばで1日を過ごされる親御さんも多いんです。

疲れきってベッドに突っ伏していらっしゃるお母さんの姿を見ると、胸が痛みます。ソファベッドや横になれる個室の休憩室、マッサージチェアなどがあれば、看病の疲れも少しは取れるのかな……と思うこともあります。通院で生活が不規則になったり、食事の栄養が偏ったり、十分に睡眠がとれなかったりする大変さや問題は、実は深刻です。

柳町:自分の子どもが小児がんだと告知されれば、親御さんの生活のすべてが一変してしまいます。子どもが風邪ひいたとか、怪我をしたのとは違って、命にかかわる病気だと言われるわけですから。これまでの当たり前がぜんぶひっくりかえって、「非日常」の中で365日を過ごすことになります。その精神的な負担は、計り知れないものです。

僕たちにできることは微々たることですが、それでも、患児自身やごきょうだい、親御さんの気持ちが少しでも軽くなるように、負担を減らせるように、僕らなりのサポートができたらと思っています。

――肉体的な疲労や精神的な負担に加えて、「経済的な不安」を抱えるご家族が多いとも、うかがいました。

柳町:そうですね。当院は全国に15カ所しかない小児がん拠点病院の一つ。遠方にお住まいの患者さんも多くいらっしゃいます。

以前、付き添いのご家族が毎月いくらの交通費を使っているのか、調査したことがありました。交通費に月5万円以上かかっているケースも多くありました。その出費が半年から1年以上続くわけです。交通費だけでも大きな金額ですよね。もちろん宿泊費が必要となるご家族もいます。

また、子どもが小児がんを患ったときに、「共働き」を続けられるご家族って、とても少ないんです。両親のどちらかが仕事をセーブしたり、辞めざるをえなかったりします。そうするとますます、経済的な負担が大きくなります。

とくに小さな子を持つ親御さんは20代・30代のお若い方も多いですから、経済的に困窮し、追いつめられてしまう現実がある。ただでさえ病気のわが子を心配してストレスが溜まっているところに、金銭的な心配もしなければならないんです。もっともっと社会的な支援が必要だと感じています。

病気の子どもたちや家族が 地域にあたたかく迎えられ、支えあえる社会に

ちあふぁみ!HPで紹介されている「ご家族に聞いた、“あったらいいな”こんなサポート」

――最後にたまひよの読者、妊娠中のプレママ・プレパパや乳幼児を育てている親御さんへのメッセージをお願いします。

岡部:お子さんを連れて来院されるお母さん、お父さんがよくおっしゃる言葉に「どうしてもっと早く、この子の病気に気づいてあげられなかったんだろう」というものがあります。

看護師として日々、ご家族に接していると、病気の子の親御さんの中には、「あのとき、こうしておけば」などと自責の念で苦しんでいらっしゃる方が多いと感じるんです。

ただ、小児がんの世界では、早期発見が予後に与える影響は少ないといわれています。「私が気づいてあげられなかったから」と後悔する必要はまったくないんです。そのことをぜひ、親御さんには、心のどこかに留めておいていただきたいです。

横須賀:小児がんは希少疾患ですから、どのような病気なのか、どんな治療をするのか、あまり知られていません。たとえば抗がん剤治療で髪の毛が抜けてしまった子が、保育園や幼稚園、小学校に戻ったときに、お友だちに「どうして髪の毛がないの?」と言われてしまうこともあるそうです。欧米では、病気で足を切断した子がテレビに出演していたり、小児がんを克服した子がケーキのろうそくを吹き消してお祝いするシーンなどがよく取り上げられたりしています。日本よりもっと周知されているんです。日本はまだそこまでオープンではありませんよね。病気の子どもたちについて、もっと知ってほしい。そのきっかけづくりができたら、と考えています。

柳町:実は気づかれていないだけで、みなさんが住んでいらっしゃる地域にも、病気と闘っている子どもたちやご家族がいます。そんなお子さんやご家族が半年から1年、2年と、たいへんな治療を頑張って、地元に戻って再スタートを切るときに、あたたかく迎えてもらえるような社会になればと願っています。

地元に戻ったあとに、「前にいた学校に馴染めない」「地域に溶けこめない」という話も、実はよく聞きます。「ちあふぁみ!」の活動が、病気の子どもたちや家族について知っていただく一助になれば、と思っています。

小児がんの子どもと家族を地域で応援するボランティア団体「ちあふぁみ!」の活動について、3回にわたって紹介する本連載。次回は、急性リンパ性白血病のお子さんを育てているお母さんへのインタビューをお届けします。


取材・文/猪俣奈央子

【小児がんの子どもと家族を地域で応援するCheer Families On!(ちあふぁみ!)】
このプロジェクトは、神奈川県立こども医療センターで小児がん診療に携わる医療スタッフが中心となって行っているボランティア活動です。神奈川県立こども医療センターの組織活動ではありませんが、神奈川県立こども医療センターや、同センターに入院する患者と家族のための宿泊施設「リラのいえ」とも連携しながら活動を展開しています。
https://cheerfami.jp/

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