セーラームーン役、声優・三石琴乃さん「産後は天地がひっくり返るほどの変化」。30周年を迎えた「美少女戦士セーラームーン」のこと、自身の育児のこと
子どもの頃、多くの人がワクワクドキドキしながら見ていた「美少女戦士セーラームーン」が作品誕生から30年を迎えました。今年、30周年を迎える「たまひよ」と同世代だってご存知でしたか?
そして30周年プロジェクトの一環として、シリーズ最終章となる劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」の前編が2023年6月9日(金)、後編が6月30日(金)から公開されます。そこでエターナルセーラームーン/月野うさぎ役の声優・三石琴乃さんにインタビュー。「美少女戦士セーラームーン」への思いから、ご自身の育児についてまでうかがいました!
セーラー戦士がプリンセスのお世話をする、なんて羨ましい世界!
――劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」で、物語は最終章を迎えます。これまでを振り返って今のお気持ちをお聞かせください。
三石さん(以下敬称略) 90年代のテレビ放送が終わって、15年以上の長いブランクがあってからの「美少女戦士セーラームーンCrystal」で作品が再び動き始めました。2021年の劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」、そして今回の劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」と、自分の中で一度完結したうさぎちゃんやセーラームーンを再び演じることができて、本当に感謝しながらアフレコをしました。今回が最後なので、作品の中でキャラたちに会えなくなること、共演者のみなさんと会えなくなること、どちらも寂しいですね。
完成した劇場版は前後編通して、大人や初めての方にも楽しんでもらえる内容なので、ぜひ劇場の大画面でご覧ください。
――小さな子どもがいる、セーラームーンが大好きな編集スタッフが「ちびちびちゃんの喋り方が娘とすごく似てる!」って喜んでいました。
三石 本当ですか!? ちびちびちゃんは、小さいわりによく喋りますよね(笑)。でも私のアプローチが間違ってなかったようで安心しました。
――「セーラームーン」には、うさぎと衛の未来の娘・ちびうさも登場しますよね。三石さんから見て、2人はどういうママとパパだと思いますか?
三石 ネオ・クイーン・セレニティ※1とキング・エンディミオン※2は非の打ち所のない夫婦ですよね。作品では2人の日常は描かれていませんが、クイーンが国の統治をして、キングは補佐する立場かな?家族団らんのシーンも見たかったなと思いつつ、ネオ・クイーン・セレニティは国にエネルギーを注がないといけないから、ちびうさちゃんはパパっ子かもって想像したり。
羨ましいのは、月の王国ではプリンセスのお世話をしているのがセーラー戦士たちだということ。信頼できる人たちが育児に協力してくれるって、なんて恵まれるんだって(笑)。
そういうコミュニティがあれば、育児の仕方も変わってくるだろうし、育児中の不安や焦りといった気持ちも少し楽になるのかなと思います。でも、ちびうさはママに甘えることが出来なくて寂しそうかなとも思っていたんですよね。だから!現代に来て、うさぎに言いたい放題ワガママ言って、寂しさや孤独感を少しずつ癒して満たされていったのかもしれないですね。
※1 ネオ・クイーン・セレニティ
うさぎの未来の姿で、30世紀にあるクリスタル・トーキョーを統治する女王。ちびうさの母親。
※2 キング・エンディミオン
地場衛の未来の姿で、ネオ・クイーン・セレニティの夫であり、ちびうさの父親。
産後1ヶ月で仕事復帰! だけど体と気持ちは追いつかず…
――三石さんご自身は仕事と育児の両立で大変だったこと、がんばったことはありますか?
三石 妊娠中は産んだらすぐに体調も戻って、そんなに休まずに復帰してバリバリ仕事ができると思っていたんです。甘かったですね…。
まず臨月になると、胃や肺が圧迫されて横隔膜も押し上げられて呼吸が浅くなるじゃないですか。空気が吸えないから、それまで3行くらいの台詞なら息継ぎなしでも大丈夫だったのに、息継ぎをしないと喋れなくなりました。
産後は、もう天地がひっくり返るほど価値観が変わりましたね。産後1ヶ月でナレーションや単発の比較的負担の少ない仕事から復帰したんですが、体も本調子じゃなかったですし、新生児をすぎたばかりの乳飲み子を家に置いて仕事に出る苦しみなんて想像もしてなかったので、もう辛くて。
仕事帰りに「今から帰るよ」って子どもを見てくれている夫に電話すると、奥から子どもの泣き声が聞こえて。焦りますよね。できるだけ早く帰りたいので、電車内で改札に近い車両に向かって移動したり(笑)。電車移動中、乗客の赤ちゃんの泣き声が聞こえて、おっぱいが張ってきたり…。長時間の仕事の時は、休憩時間にスタジオの化粧室にこもり搾乳したこともありました。
うちは私と夫、私の母、ベビーシッターさんで育児をしていましたが、その日働いたギャランティがそのままベビーシッター代として、私の前を通り過ぎて行くんですよ。仕事を受けたのは私の責任ですし、私の子どものお世話をしてくださったのでお支払いは当然でしたが、なんだかモヤっとする部分はありましたね。
――給与や報酬の多くがベビーシッターをはじめとする、赤ちゃんのお世話代に消えていくのは、働くお母さんにはかなり共感できるお話です。
三石 やっとパパも育休が取れる制度などを整えるよう政府も動き始めましたけど、個人的には遅いっちゅーねんって感じです(笑)。
産後は生物としての体の変化に気持ちが追い付かず、仕事をするのもままならない期間を経て、子どもが5歳ぐらいになって、ようやく仕事と育児の両方に落ち着いて取り組めるようになったのかな。それでもお化粧やファッションには手が回らずバタバタしていましたけれど。
子どもに注いでいる愛情に間違いはない。迷いがあればSOSを出して
――「セーラームーン」を見ていた子どもたちが、今、ママ・パパ世代になって、かつての三石さんのように日々、育児に奮闘しています。そんなママとパパを勇気づけるメッセージをお願いします。
三石 子どもは一週間で顔つきが変わるくらい変化が目まぐるしいですが、それを見られる喜びは今だけの特別なもの。そう思う一方で、成長に従って都度抱える課題が変わってきますよね。やっとできるようになったと思ったら、次はこれかーっていう…。
こんなに人間力を鍛えられるものはないです。でも今まで両親も祖父母も、さらにその上の世代のみんなもしてきたと思うと、何とかなるはずなんです。自分だけ免除されるわけにもいかないですから。
自分のみっともないところ、できないところを他人に吐露したり、さらけ出したりをしにくい社会になっているかもしれないですが、困ったことや辛いことがあったら月野うさぎのように「びえ〜ん!もうダメ〜(涙)!」と、周りの人にSOSを出してほしいです。セーラー戦士のような友人が思いつかないなら、自治体のサービスなどを利用して1人で抱え込まないことが大事だと思います。我が子の健康のためにもママが元気じゃないと。
育児が本当に大変なことには、とても共感します。それに、今のママ・パパがしている育児もお子さんに注いでいる愛情にも間違いはありません。子どもが成長した喜びは計り知れないものがあります。
今がんばった分は、お子さんが大きくなった時にご褒美として返ってきますから。
撮影/奥本昭久 ヘアメイク/RIE(TOKYO LOGIC) スタイリスト/ナミキアキ 衣装/ワンピース \8,980 (Wild Lily 03-3461-4887) 取材・文/津島千佳
三石琴乃さん
PROFILE
「美少女戦士セーラームーン」シリーズでのセーラームーン/月野うさぎ役をはじめ、「新世紀エヴァンゲリオン」の葛城ミサト、ドラえもんののび太のママなど、数多くの人気キャラクターを演じる。ナレーションや外画の吹き替えなどのほか、近年は俳優としても活躍。2024年の大河ドラマ「光る君へ」の出演も決定している。3月には声優としての矜持を綴った著書「ことのは」が上梓された。
劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」
すべてを破壊しこの宇宙をも支配しようと目論むシャドウ・ギャラクティカに次々とセーラー戦士たちが狙われる。再び戦いに身を投じるセーラームーンを通じ、愛する人を守ること、戦いの先にあるものを描く。セーラームーンが最後に選ぶ答えとは―?
2023年6月9日(金)《前編》、6月30日(金)《後編》ロードショー。
※記事の内容は2023年4月の情報で、現在と異なる場合があります。
たまひよ創刊30周年特別企画が続々!
「たまごクラブ」「ひよこクラブ」は、2023年10月に創刊30周年を迎えます。感謝の気持ちを込めて、豪華賞品が当たるプレゼント企画や、オリジナルキャラクターが作れる「たまひよのMYキャラメーカー」など楽しい企画が目白押しです!たまひよ30周年特設サイトをぜひチェックしてみてください。