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最新調査で、帝王切開による出産と育児ストレスの関係が判明。がまんしないでまわりにSOSを【研究発表】

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子育てを心配する母親
●写真はイメージです
yamasan/gettyimages

富山大学学術研究部医学系公衆衛生学講座 松村健太先生らのグループは「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査 ※)」に参加する6万5235人のママを対象に、分娩様式(帝王切開、経腟分娩)と育児ストレスの関係を調べて発表しました。

それによると帝王切開で出産したママのほうが、育児ストレスが高い傾向があることがわかりました。調査の詳細について、松村健太先生に話を聞きました。

WHOは、2030年には29%が帝王切開で出産と予測。現在、日本でも帝王切開が増加傾向に

世界的に帝王切開による出産が増えています。2021年、WHO(世界保健機構)の発表によると、全出産の5人に1人以上(21%)が帝王切開で出産していて、この割合はさらに増加すると予測しています。そして、2030年には全出産の約3分の1(29%)が帝王切開での出産になると見込んでいます。
松村先生は、こうしたなかで近年、帝王切開についてさまざまな研究が進んでいると言います。

――分娩様式(帝王切開、経腟分娩)と育児ストレスの関係を調べた背景について教えてください。

松村先生(以下敬称略) 近年、世界中で帝王切開による出産が増えています。
厚生労働省が、2022年4月に発表した「令和2年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」によると、一般病院と一般診療所の9月の分娩件数は、2008年は9万418件。そのうち帝王切開による出産は、1万6642件(約18.4%)。
2020年の分娩件数は、6万9933件。そのうち帝王切開による出産は1万5088件(約21.6%)と、日本でも増加傾向にあります。帝王切開が増えている要因の一つは、高齢出産の増加です。こうした状況の中で、帝王切開に関するさまざまな研究が進んでいます。私はメンタルヘルスが専門なので、今回は帝王切開と育児ストレスの関係について調べました。

帝王切開で出産したママは、育児ストレスが高いことが判明。原因の一つは傷の痛み

総合で見る、帝王切開と経腟分娩ママの育児ストレスの差。帝王切開で赤ちゃん出産したママのほうが、育児ストレスが有意に高いことがわかった。

松村先生らが行った調査は、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加する6万5235人のママを対象に行っています。そのうち帝王切開は1万2049人、経腟分娩は5万3186人でした。

――調査の方法について教えてください。

松村 参加者には、子どもが1歳6カ月、2歳6カ月、3歳6カ月になった時点でアンケートに回答してもらいました。3回とも同じ質問です。
質問は、日本版「育児ストレスインデックス・ショートフォーム」を用いたほか、妊娠中のママの年齢、妊娠前のBMI、分娩歴、分娩様式、在胎週数、妊娠合併症、喫煙、飲酒量などについても聞いています。
結果は、どちらのママにも育児ストレスはあるのですが、帝王切開で出産したママのほうが有意に高いことがわかりました。しかし2歳半を過ぎて3歳半になると、経腟分娩で出産したママも帝王切開で出産したママも、育児ストレスが大幅に低下し、若干差が縮まることもわかりました。また日本版「育児ストレスインデックス・ショートフォーム」を用いて、ママが感じる育児ストレスを 、以下の3つの要因に分けて調べました。

1/子どもに起因するストレス(子どもが元気すぎて疲れる、よく泣いて手がかかるなど)       
2/ママ自身に起因するストレス(子どもを産んでからやりたいことができない、友だちがいなくて孤独など)
3/パパに起因するストレス(全然手伝ってくれない、子どもがいることによって問題が生じているなど)  
    
結果は、次のとおりです。

ママ自身に起因する育児ストレスには有意差なし

上のグラフは、ママ自身に起因する育児ストレスの比較です。経腟分娩と帝王切開ともに育児ストレスはあるものの有意差はありませんでした。

パパに起因する育児ストレスにも有意差なし

上のグラフは、パパに起因する育児ストレスの比較です。経腟分娩と帝王切開ともにパパに起因した育児ストレスは低く、有意差もありませんでした。

子どもに起因する育児ストレスには明らかな有意差が

しかし子どもに起因する育児ストレスには、3つの時点すべてで有意差があり、帝王切開で出産したママのほうがよりストレスを抱えていることがわかりました。

――帝王切開で出産したママのほうが育児ストレスが高まりやすいのはどうしてでしょうか。

松村 考えられることはいくつかありますが、多くは次の二つではないかと考えています。一つ目は、長期にわたり帝王切開の傷が痛むためです。
二つ目は、帝王切開で出産した赤ちゃんは、ぜん息などの小児疾患がやや多いことも報告されていて、ママが不安を感じたり、手がかかったりすることなどが育児ストレスを高める一因になっていると考えられます。

――帝王切開で出産したママや、これから帝王切開で出産するママは、今回の結果をどのようにとらえるといいでしょうか。

松村 大切なのは、帝王切開による出産をネガティブにとらえないでほしいということです。出産は赤ちゃんの命、そして母親の命が守られることが第一です。それを考えた上で帝王切開という方法が採られたことを後ろ向きに考えないでほしいです。
ただ研究によって、さまざまなことがわかってきているので、産後の生活などに役立ててほしいと思います。
今回の私たちの研究発表に関しては、ママ自身というよりも、パパや両親などの家族、医療関係者や産後ケア、子育て支援にかかわる方に、帝王切開で出産したママの心の状態をまずは知ってほしいと思います。そしてママが疲れていたり、困っているとき気軽にSOSを出せるようにしてあげてください。パパも育休をとるなどして、ママをサポートしてほしいですね。

世界の状況を見ると、たとえばアメリカでは、要支援家庭を対象とするプログラムなどの多様な場で、サポートにつながるように育児ストレスのチェックが行われています。
また、バミューダ諸島では、国家的な健康診査の一環として、ママの育児ストレスが定期的に測定されています。しかし日本では、そうした取り組みがまだ手薄なので、パパや身近な人たちのサポートが必要ではないかと考えています。

お話・監修/松村健太先生 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

松村先生は「今回の調査では、帝王切開で出産したママたちから『産後、長期間にわたり痛みが続いている』という声が多数聞かれました。体調不良や痛みに耐えながら、育児をしているママもいるようです。パパやまわりの人は『退院したから、もう大丈夫』とは安易に思わないでほしい」と言います。

松村健太先生(まつむらけんた)

PROFILE
富山大学 学術研究部医学系 公衆衛生学講座講師。富山大学エコチル調査富山ユニットセンター特命助教などを経て現職。専門は、公衆衛生学、疫学、心理学、応用健康科学。


(※)「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、2010 年度から全国で約 10 万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査です。

●記事の内容は2023年5月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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