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アトピー性皮膚炎の早期治療は、重症化やアレルギーマーチの予防につながる。赤ちゃんに負担が少ない検査への期待【研究発表】

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アトピー性皮膚炎の早期発見と早期の治療が、アレルギーマーチの予防につながると考えられています。アトピー性皮膚炎の早期治療に役立てるため、生後1カ月の赤ちゃんでも赤ちゃんに負担をかけることなくアトピー性皮膚炎の可能性があるかどうかがわかる技術が開発・研究されています。2023年4月、国立成育医療研究センターと花王による共同研究の結果が発表されました。国立成育医療研究センターアレルギーセンター室長・山本貴和子先生の話の内容をリポートします。

現在親になる世代の半数にアレルギー疾患があり、生まれる赤ちゃんにもリスクが

環境省が約10万組の親子に実施している疫学調査『エコチル調査(※1)』によって日本の約半数のママやパパがアレルギー疾患を持っていることがわかっています。そのため多くの赤ちゃんたちもアレルギーのリスクを持って生まれてきます。

「アレルギー疾患は一度にすべて発症するわけではなく、アトピー性皮膚炎に始まり、即時型食物アレルギー、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎など、さまざまなアレルギー疾患を次から次へと発症するといわれていて、これを“アレルギーマーチ”と呼んでいます。

『乳児湿疹だから大丈夫かな』と様子を見て治療が遅れてしまうと、あれた皮膚からアレルゲンが入って体内に侵入し、食物アレルギーを発症する、ということにつながる可能性があるのです。そのため、乳幼児期にアトピー性皮膚炎が現れた段階で早期発見・早期介入をしてしっかりと治療をしてお肌をいい状態でキープできれば、その後のアレルギーマーチを阻止できるのではないかと考えています」(山本先生)

そこで注目したのが花王が開発した「皮脂RNAモニタリング技術」です。この技術は、1枚のあぶらとりフィルムで顔をぬぐうだけで、採取した皮脂のRNA(リボ核酸)情報から皮膚の状態が明らかになります。

花王と国立成育医療研究センターは、この技術を利用してアトピー性皮膚炎の早期発見をするために共同で研究を進めてきました。

90人の赤ちゃんの皮脂状態を検査してわかったこと

国立成育医療研究センターで生まれた赤ちゃんに「皮脂RNAモニタリング技術」での検査を行い、生後1カ月から6カ月までの追跡調査が行われました。

「生後1カ月のときにアトピー性皮膚炎を発症していた赤ちゃんの皮脂RNAは、健康な皮膚の赤ちゃんとは大きく違っていました。免疫応答(炎症)にかかわる分子の発現が高く、皮膚バリアにかかわる分子の発現が低いという、アトピー性皮膚炎の特徴が表れていたのです。

また、生後1カ月のときに皮膚にざ瘡(ニキビ)があってさらに生後2カ月でアトピー性皮膚炎と診断された赤ちゃんの皮脂RNAを調べたところ、同じく生後1カ月でざ瘡があり生後2カ月でアトピー性皮膚炎ではないと診断された赤ちゃんと比べて、生後1カ月の時点ですでに皮膚バリア機能に関連する分子群の発現が低く、アトピー性皮膚炎と似た特徴があったことがわかりました。

これらのことから、生後1カ月の時点で湿疹(ざ瘡)がある赤ちゃんから皮脂 RNAを採取して 情報を調べれば、アトピー性皮膚炎を発症する兆候がわかるという結果が出たのです」(山本先生)

現在に至るまで、乳児期のアトピー性皮膚炎の診断はほかの年齢とくらべて難しいといわれていると山本先生は言います。

「日本でのアトピー性皮膚炎の診断基準は、かゆみがあること、皮膚に特徴的な湿疹があること、乳児では2カ月以上症状が続いていること、などです。
しかし、低月齢の赤ちゃんの場合は、かゆみがあったとしても『かく』行動はわかりにくい場合があります。抱っこしたときに顔をこすりつけたりする動作はあるかもしれませんが、かゆいのかどうかはママやパパ、医者が診ても判断が難しい点です。

アトピー性皮膚炎の診断の際には、血圧や心拍数などのように客観的な数値で状態を評価できる指標がありません。アレルギーの炎症を見るためには、採血をしたり、皮膚の一部をとって検査するものがありますが、体に負担をかける検査は赤ちゃんにとっては難しいことも問題でした。そのため、『皮脂RNAモニタリング技術』のような『非侵襲(ひしんしゅう)』つまり、体を傷つけないで検査できる技術が求められていました」(山本先生)

いずれ1カ月健診や予防接種のときの診断に役立てたい

見た目でわかりにくいアトピー性皮膚炎も、「皮脂RNAモニタリング技術」なら肌を傷つけることなく、生後1カ月という早い段階で検査ができ、皮脂RNA情報からアトピー性皮膚炎の可能性がわかるということ。

「いずれは1カ月健診や予防接種などのときに診断を補助できるようにしたいと考えています。日本のアトピー性皮膚炎の診断基準に『2カ月以上症状が続く』と書いてあるために、多くの医師たちは生後1カ月ではアトピー性皮膚炎かどうか診断できないというのが現状だと思います。
しかし、今回の研究から、海外でよく使われているアトピー性皮膚炎の診断基準と分子の発現レベルを調べてみてみると、実際には生後1カ月の赤ちゃんでもアトピー性皮膚炎に特徴的な分子変化が既に起こっていることがわかりました。

また私たちの追跡調査では、生後1〜2カ月で湿疹が現れていた子どもが、最も食物アレルギーの発症リスクが高いことがわかっています。さらに、湿疹の治療開始が遅れると、食物アレルギーの発症リスクも高まることがわかっています。別の臨床試験(※2)で、湿疹へ早期介入をしっかりすることで約25%鶏卵アレルギーの発症を抑制できることを最近報告しました。

以上のことから、生後1〜2カ月ごろに湿疹が現れたら、早期にステロイド外用薬などでの治療を開始して、しっかり直してあげることが大切だと考えています。

いずれは1カ月健診や予防接種のときなどに臨床検査として診断補助ができるように、花王と共同でAMED(日本医療研究開発機構)のサポート下で開発を進めています。早期にアレルギーマーチを阻止して、アトピー性皮膚炎の重症化を予防したいと考えています」(山本先生)

お話・監修/山本貴和子先生

取材協力/花王株式会社・国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

医療現場で使える、皮脂RNAモニタリング技術による臨床検査はまだ国で承認されていませんが、「生後1カ月でもアトピー性皮膚炎を発症することがあることを広く知ってほしい」と山本先生は言います。もし現在赤ちゃんの肌トラブルが気になったら、食物アレルギーも対応してくれるアトピー性皮膚炎の治療が得意な地域の先生を受診してみるのがおすすめだそうです。

アレルギー科在籍医師がいる医療機関一覧

(※1)環境省 エコチル調査

(※2)二重抗原曝露仮説を実証する世界で初めての研究成果

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