スキンシップの質をワンランク上げる!「タッチケア」で深まる親子の愛着
スキンシップは親子の絆を深めるのに有効な手段です。でも、仕事や家事に忙しく、赤ちゃんとゆっくりスキンシップをする時間がとれない人も少なくないのでは?
そんなときは「タッチケア」を取り入れてスキンシップの質を高めてみるのはいかがでしょうか。今回は、タッチケアのメリットや実践方法をご紹介します。
タッチケアとは?
タッチケアとは、赤ちゃんの肌に触れることで、親子のきずなを深める手技です。
具体的には、赤ちゃんと目を合わせたり話しかけたりしながら、触れる、なでる、少し圧をかけながらマッサージする、手足を曲げ伸ばしするなどの手技を行います。
日本タッチケア協会では「赤ちゃんと親の心とからだが触れ合うことにより、親子のきずなを深めることの大切さを唱えるコンセプト」とし、抱っこやおんぶ、添い寝などのスキンシップもタッチケアに含まれます。(※1)
タッチケアがイイ理由
タッチケアは、主に早産児へどのような効果があるのか世界中でさまざまな研究が行われてきました。その研究結果として、体重の増加、睡眠覚醒リズムの安定、ストレス反応の減少が報告されています。(※2)
秋田県母性衛生学会雑誌25「タッチケア/ベビーマッサージの児への臨床的効果とその生理的メカニズムに関する文献検討」によると、体重の増加に関する研究では、70名の早産児を無作為に選び、タッチケアを施したグループと施さなかったグループに分けて体重の増加率を調査したところ、カロリー消費は両グループで同じだったにも関わらず、タッチケアを施したグループは施さなかったグループよりも30%の体重増加がみられことが紹介されています。
また、低出生体重児50名に対して行われた睡眠覚醒リズムの調査結果として、睡眠中にいびきをかくことが少なくなり、夜間に哺乳をする必要がなくなったことや、在胎週数27~30週の早産児に対して行われたストレス反応調査では、在胎週数に関わらずストレス反応の減少がみられたと紹介されています。
いずれも、早産児や低出生体重児に対する研究結果であり、成熟児に対しての検証はまだ不十分です。
しかし、日本東洋医学系物理療法学会誌「皮膚感覚と脳」では、「快適な触覚刺激が脳に伝わると、視床下部ではオキシトシンという神経伝達物質が分泌される。」としています。(※3)
オキシトシンは、別名「愛情ホルモン」とも呼ばれ、幸せを感じたり、気持ちいいと脳が感じると分泌されるホルモンで、親子の愛着形成や赤ちゃんの情緒の安定を促す効果が期待できます。
また、看護理工学会誌「タッチケア施術者のリラクセーション効果の生理学的・生化学的・心理的検証」では、「施術者自身の副交感神経活動が優位になり,交感神経活動は低下したことが示された」と紹介されています。(※4)
からだのさまざまな器官をコントロールしている自律神経には、交感神経と副交感神経があり、交感神経は活動を、副交感神経は鎮静を司ります。タッチケアをすることで、施術者であるママ・パパの副交感神経が活性化され、リラックス効果を高めることが期待できます。
このようなことから、タッチケアを施すことは、親子双方にとって、愛着を深めるうえでとても有効といえるでしょう。
効果を高める実践方法とは?
以下に具体的なタッチケアのやり方や注意点を解説します。
タッチケアの事前準備
タッチケアの前には、時計や指輪、ブレスレットなどのアクセサリーを外し、手を洗いましょう。
赤ちゃんが寒くないように、室温が低い場合は暖めます。手も少し温めておくと、赤ちゃんがリラックスしやすくなります。
タッチケアを行うときは、オイルやローションを使うと滑りがよくなりマッサージがしやすくなります。ただし、市販のオイルやクリームなどを使用する際は、デリケートな赤ちゃんの肌に合うものを選びましょう。
タッチケアを行う場所は、マットや毛布、バスタオルの上、ママやパパのひざの上など、お互いがリラックスでき、落下などの危険がない場所で行ってください。
タッチケアのタイミング
タッチケアは、赤ちゃんと施術者であるママ・パパがゆったりとリラックスできる環境があれば、時間帯に関係なく行えます。ただし、空腹時や授乳直後、よく眠っているときには避けたほうがいいでしょう。
お風呂前後の赤ちゃんが裸になるタイミングで全身をマッサージしたり、オムツを替えるときに脚やお尻などをさすったりするのでもOKです。
仕事が忙しく時間がとれない場合は、寝かしつけのタイミングで「保育園がんばったね」など声かけをしながら行うのもいいですね。
タッチケアのやり方
タッチケアは「これからマッサージをするよ」「大好きだよ」など、優しい気持ちで赤ちゃんに話しかけながら、顔やおなか、背中、うでや脚など、赤ちゃんが気持ちよさそうにしている部位をマッサージします。
肌の表面を軽くなでるのではなく、皮膚の色が少し白く変わるくらいの圧をかけたほうがいいとされています。しかし、赤ちゃんが心地いいと感じる圧には個人差があるので、様子を見ながら調節しましょう。
愛情ホルモンである「オキシトシン」を分泌しやすくするには、1回5分以上行うのが効果的です。また、1秒間に5cm進む程度の速さでなでるようにマッサージすると、リラックス効果が高いといわれています。
最後に、タッチケアで1番大切なのは、毎日続けることです。ただし、毎日必ず全身やる必要はないので、ママ・パパに余裕があって赤ちゃんの機嫌がいいときに、できる範囲で行うといいでしょう。
タッチケアの注意点
日本タッチケア協会ではタッチケアを始める時期の目安を、赤ちゃんの首がすわりマッサージしやすい「生後3か月頃から」としています。
新生児期から首すわり前に行う場合、小児科医や助産師さん、専門家によるタッチケア教室で、手技の指導を受けてください。
おやすみ前のおともに
赤ちゃんをリラックスさせる方法は、タッチケアだけではありません。
おやすみ前はリラックス効果のあるアロマを用いたり、寝かしつけ用の絵本を読み聞かせたりするのもおすすめです。
おすすめのアロマ
リラックス効果のあるアロマを、3つご紹介します。
・ラベンダー:リラックスできるアロマの代表です。緊張やストレスを和らげる効果が期待できます。
・ベルガモット:柑橘系のフルーティーな香りが特徴です。リラックスやリフレッシュ効果があるといわれています。
・サンダルウッド:お線香にも使われており、日本人には馴染みのある香りです。不安を和らげ、心を落ち着けるのに役立ちます。
アロマスプレーや熱くならない超音波式のディフューザーなら、赤ちゃんのいる部屋でも使いやすいでしょう。また、ママやパパのリラックスにも◎です。
おすすめの絵本
赤ちゃんに寄り添いながら絵本の読み聞かせをすることも、スキンシップのひとつです。
寝かしつけ前に読むなら、月や星がモチーフのものや、眠りをイメージしやすいものがいいでしょう。たとえば、「おつきさまこんばんは(福音館書店 林明子作)」や「ねむねむごろん(角川書店 たなかしん作)」のような絵本がおすすめです。
タッチケアで親子まるごとリラックス
タッチケアは、親子のスキンシップを深めるのに効果的です。赤ちゃんだけでなく、ママ・パパのリラックス効果も期待できるため、ぜひ試してみてくださいね。
また、リラックスにはアロマや絵本を取り入れるのもおすすめです。
タッチケアや寝る前のリラックスタイムで、親子のスキンシップをもっと深めていきましょう!
おすすめの動画
※1 日本タッチケア協会「タッチケアとは」
※2 秋田県母性衛生学会雑誌25「タッチケア/ベビーマッサージの児への臨床的効果とその生理的メカニズムに関する文献検討」
※3 日本東洋医学系物理療法学会誌 第 42 巻 2 号「皮膚感覚と脳」
※4 看護理工学会誌「タッチケア施術者のリラクセーション効果の 生理学的・生化学的・心理的検証」
PROFILE
あんしん漢方薬剤師
中田 早苗(なかだ さなえ)
デイリータッチケアセラピスト。デトックス体質改善・腸活・膣ケアサポート薬剤師・認定運動支援薬剤師。病院薬剤師を経て漢方薬局にて従事。症状を根本改善するための漢方の啓発やアドバイスを行う。健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-youtubeチャンネルでは、お薬最適化薬剤師として「無駄な服薬はお財布と体の敵!」をモットーに薬の最適な選び方を解説する動画を公開中。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=211332f2tmhy00010030
●Medical Health CH:https://www.youtube.com/channel/UC7XLi90xVGs_NnKhowC0G2w