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原因不明の病気「川崎病」患者が急増。症状や治療法、増加の原因は?

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iStock.com/Tomwang112

川崎病(かわさきびょう)は、1960年代に小児科医の川崎富作先生が世界で初めて発表した病気です。主に4歳以下の乳幼児がかかると言われますが、原因はいまだ不明。その川崎病が近年急増しています。

2015年は患者数が過去最高に

川崎病の患者数の推移を見ると、近年患者数がぐんぐん増えているのがわかります。患者数急増の理由として、どのようなことが考えられるのでしょうか。国立成育医療研究センター・高度先進医療研究室の阿部 淳先生に聞きました。

過去の流行年を超えて患者数が増え続けています

特定非営利活動法人日本川崎病研究センターが2017年9月に発表した「第24回川崎病全国調査成績」によると、川崎病は過去に3回全国規模の流行があり、1979年は0~4歳人口10万人に対し88.1人が発症、82年は同215.8人、86年は同194.7人でした。
しかしその後、95年ごろから患者数がどんどん増え始め、2010年には86年に匹敵する患者数に。さらに、2012年には79年の約2倍となり、2013年には82年の患者数を超えました。そして、2015年には過去最高(0~4歳人口10万人に対し371.2人)となりました。

「川崎病 年次別、性別罹患率推移」(「第24回川崎病全国調査成績」特定非営利活動法人日本川崎病研究センター 川崎病全国調査担当グループ調べ)

地域的な差が少なく、全国的に患者が増えているのが近年の特徴

「川崎病は発症のメカニズムが解明されていないため、急増の原因も特定されていません。しかし、生活様式の変化(衛生環境の徹底、食の西洋化など)や、抗菌薬の過剰使用などが仮説として考えられています。
また、過去3回の流行年には地域的な流行の伝播がみられましたが、近年の患者数増加では、全国的にまんべんなく患者が出ているのも特徴です。
2015年に患者数が最高に達したあと、2016年にはやや減少したのですが、このまま減っていくのか、再び増えるのか、それは今後の動向を見ないと何とも言えないのが現状です」

そもそも川崎病ってどんな病気?どんな症状が出るの?

合併症を起こしたり、後遺症を残さないために、川崎病は早期発見・早期治療が重要。特有の症状があるので、疑わしいときはすぐに小児科を受診しましょう。

全身の血管に炎症が起こり、特徴的な症状が現れる

「川崎病は、全身の血管に炎症が起きる病気。4歳以下の子どもがなりやすく、急な発熱のあと、数日の間に主要な症状が次々と現れます。
主な症状は以下の6つ。特有の症状のうち、5つに該当すると川崎病と診断されますが、4つ以下でも症状を総合的に見て診断することもあります。

1.38度以上の発熱が5日以上続く
2.赤い発疹が全身に出る
3.唇が赤くなり、舌がいちご状にブツブツになる
4.白目が充血する
5.手足が腫れたり、手のひら・足の裏が赤くなる。解熱後、指先の皮がむける
6.首のリンパ節が腫れる


突然の発熱があり、高熱とともに、目やにが出ていないのに目が真っ赤になったら川崎病を疑いましょう。また、いつもとは違う不機嫌さが見られることも多いです」

川崎病は免疫反応の異常に感染症が引き金となって発症?

「川崎病は、感染症が引き金となって、免疫反応の異常な亢進(状態が高ぶること)が起きて発症するという説が有力です。また、発症しやすい体質があるのではないかと考えられています。
実際、新しく川崎病を発症した子の中で、ママやパパが川崎病になったことのある子は1%、きょうだいがなったことのある子は2%います。一般的な罹患率は最大でも0.3%(0~4才人口10万人に対し330.2人:2016年罹患者数)ですから、家族歴がある子どもの発症率は高いといえます。なお、どのウイルスや細菌が引き金になりやすいのかは、今のところわかっていません。また、人から人にうつる病気ではありません」

退院後1カ月で異常が見つかる確率は2.6%程度

「川崎病は、急性期に冠動脈(かんどうみゃく・心臓の筋肉に酸素や栄養を送るための動脈)に瘤(こぶ)ができ、その後血栓ができて詰まったり、血管壁が厚くなるなどして冠動脈障害(かんどうみゃくしょうがい)を起こすことがあります。
急性期には約8.5%の患者の冠動脈に異常が見られますが、1カ月たった時点で異常が残っている患者は2.6%に減少し、その後もだんだん正常化していきます。
心筋梗塞(しんきんこうそうく・冠動脈が詰まるなどして血流が滞り、心臓の筋肉が壊死する状態)を起こすなどの重大な合併症を起こす確率は0.2%程度と、多くはありません。いずれにしろ、医師の指示に従って経過観察を行うことが大切です」

治療法は?再発の可能性は?

川崎病が怖いのは、合併症で冠動脈瘤ができたり、後遺症として心筋梗塞(しんきんこうそく)になる危険性があることとおわかりいただけたと思います。治療では、血管の炎症を取り除き、合併症を起こさないための処置を行うそうです。

治療の第一選択肢は免疫グロブリン療法

「川崎病と診断されたら、強い炎症反応をできる限り早く収めて、合併症である冠動脈瘤の発症頻度を最小限にすることを目的に、入院治療を行います。
入院期間は軽症で1週間~10日程度。症状によっては2~3週間入院し、冠動脈瘤ができないか観察することもあります。また、退院後は経過観察が必要で、定期的に冠動脈の状態を超音波で調べます」

<おもな治療法>

●免疫グロブリン療法
血管の炎症を抑えて冠動脈瘤の発症を予防するために、現時点では最も効果的な治療法。川崎病患者の90%が受ける治療です。一度の投与で炎症が抑制できない場合は、再度投与することがあります。

●アスピリン療法
最も歴史のある治療法。血液を固まりにくくして血栓ができるのを予防するとともに、血管の炎症を抑えます。現在は、免疫グロブリン療法と同時に行うことが多いです。

●ステロイド剤
免疫グロブリン療法の効果が現れない場合や効きにくいと予想される場合には、ステロイド剤を投与することもあります。

●血漿交換(けっしょうこうかん)
ステロイド剤の投与でも効かない場合は、血中の特定の成分を取り除く血漿交換を行います。

再発率は高くないけれど注意は必要

「第24回川崎病全国調査成績」によると、川崎病が再発した例は、男子4.4%、女子4.0%。男子は5歳まで、女子は7歳までに再発することが多いようです。
4%と聞くと割合は高くなさそうに思えますが、川崎病の一般的な罹患率は0.3%ですから、一度も発症したことがない子どもより、リスクは高くなります。高熱を出したときは、川崎病特有の症状が出ていないか、しっかり観察し、早めにかかりつけの小児科を受診することが大切です」 

近年では、0~4歳の子が1000人いれば3人がかかる割合になっていることもあり、川崎病は、決してまれな病気とはいえなくなってきました。早く見つけて早く治療を受けるためにも、症状について、しっかり知っておくことが大切ですね。(取材・文/東 裕美、ひよこクラブ編集部)

監修/阿部 淳先生

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