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「遠い世界に来てしまった」長男が生後8カ月で脳性まひと診断され…。子育ての中で感じた障害児と社会との隔たりとは?【体験談】

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安全性・機能・デザインとともに「利用する人の気持ち」に寄り添って開発されたポータブルチェア。

7歳の長男、夫と3人家族の松本友理さん(39歳)。長男は、生後8カ月のころに脳性まひによる運動機能障害と診断を受けました。長男のケアとリハビリに専念する中で、障害児とその家族を取り巻く環境に課題を感じた松本さんは、障害のある子もない子も使えるプロダクトを作りたいという思いから起業を決意。折りたたみ式の子ども用チェア「IKOUポータブルチェア」を開発した松本さんに、長男の子育てのこと、その中で見えた課題について話を聞きました。

「遠い世界に来てしまった」と感じた

――息子さんの出産や子育てを通して、自身の考え方などで変化したと感じたことはありますか?

松本さん(以下敬称略) 2016年4月に長男を出産しましたが、出産してすぐから通常の赤ちゃんの発達とは違う部分が見られたため、通院をしていました。
生後8カ月のときに、医師から脳性まひによる運動機能障害と診断されました。出産する前は子どもに障害があるとは考えてもいませんでしたし、障害がある子どもとの生活も想像できませんでした。当時は私自身「脳性まひ」の知識はほとんどなく、診断を受けたときには「これまでと違う遠い世界に来てしまった」という感覚を強く持ちました。

けれど、障害のある息子を育てている今は、不便なことはいろいろあるにしても工夫すればなんとかなることや、そこに障害があるというだけで普通の家族と変わらない、とわかったことが、息子の出産や子育てで大きく価値観が変わった部分だと思います。

――脳性まひと診断されて、不安な気持ちはありましたか?

松本 私はそれまで新卒から10年間、トヨタ自動車に勤めカローラ等のグローバル戦略車の商品企画などを担当していました。「ものづくりで世の中をよくしたい」という思いで商品企画の仕事に取り組む日々はとても充実していたので、1年間の育休を取ったらなるべく早く職場復帰して、子育てと仕事を両立したいと考えていました。

息子に障害があるとわかって、これから先の自分の人生は今まで思い描いていたものと大きく変わってしまうのかな、と不安に思いました。「自分は仕事復帰できないのだろうか」という葛藤もありました。でも、そのときに自分が取り組むべきこと・自分にしかできないことは息子の育児やリハビリであると考え、休職して3年間は育児とリハビリに専念することにしたんです。

障害のある子が環境的に隔てられてしまう大きな理由の一つは、「外出の難しさ」

家庭で使用する、特注の福祉機器の椅子。食事、遊び、作業など、日常生活に欠かせないプロダクトです。

――育児とリハビリに専念した3年間はどのような毎日を送っていましたか?

松本 乳幼児のお世話の忙しさは健常児の子育てと大きく変わらないと思いますが、息子の場合はリハビリを受ける必要がありました。息子に合ったリハビリはどんなものだろう、と調べることから始め、理学療法のリハビリに通い、子ども中心の毎日を送っていました。

息子と一緒に病院やリハビリ施設に通う中でとても驚いたのが、世の中にはこんなにたくさんの障害児と家族がいるんだ、ということです。
私がこれまで生きてきた中で、そういう人たちとかかわる機会も、目にする機会もほぼなかった、ということに改めて気がつきました。自分自身が障害のある人とかかわることがない、隔てられた環境で生きてきたから、遠い存在に感じていたんだな、と。息子との生活でいちばん感じたのは、障害のある子どもたちと、健常児の家族との隔たりでした。

――障害のある子と健常児の家族との隔たりとは、どのようなことでしょうか?

松本 ショッピングモールのフードコートに行くと、たくさんの子連れファミリーがいますが、その中で障害のある子を目にする機会は非常に少ないのではないでしょうか。世の中の環境が、障害のある子やその家族が物理的にお出かけしにくい状況にあると思います。

乳幼児期の子育てでベビーカーを利用している時期って、お買い物や食事に出かけるときに、ベビーカーが入れるかどうか、キッズチェアがあるかどうか事前に調べたりしますよね。障害児の場合はそれが長い期間続くイメージです。
障害があって歩けない子は、外出するときにベビーカーや障害児用の福祉バギーや車いすを使用するので、お店に入れるかどうかを事前に調べる必要があったり、行ける場所が限られたりもします。福祉バギーは大きくて重いので、ベビーカーのように簡単にたたんだりすることもできません。

また、障害があって姿勢保持が難しい、つまり座った状態で自分1人で体を支えられない子の場合は、飲食店に用意されている一般の補助椅子では座ることができないんです。

――姿勢保持が難しいと座れないことの不便さについては、なかなか考えが及ばないかもしれません。

松本 健常児の赤ちゃんもキッズチェアがない飲食店では、子どもを抱っこしてごはんを食べさせなきゃいけなくてすごく大変ですよね。姿勢保持が難しい障害児の場合、福祉バギーが入れない、さらにキッズチェアに座れない状況ではやっぱり子どもを抱えるしか方法がありません。そういう経験が重なると、障害のある子のいる家族にとって、外出のハードルが上がってしまいます。

障害のある子がいる家族のお出かけのしにくさが、外出先で障害のある子どもやその家族を目にする機会が少ないことにもつながると思います。逆に、障害児の家族がもっとお出かけしやすくなることで、障害のある子もない子も同じ空間で過ごせる機会が増えれば、心理的にも身近に感じることにつながっていったらいいなという思いを持っています。

保育園のお友だちは、息子を自然とサポートしてくれた

――松本さんはそんな障害のある子と家族の課題解決の一歩として、ポータブルチェアを開発するため起業します。そのころ3歳の息子さんは保育園に通っていたそうですが、当時の状況を教えてください。

松本 自分自身が働くためという理由ももちろんありましたが、それ以上に、障害児だけの世界でなく、いろんなお友だちとかかわりながら育ってほしいという思いがあって、息子は一般の地域の保育園に入園しました。

障害のある子が保育園に入る場合には、保育園の受け入れ環境が整っている必要があります。私たちはいくつかの保育園を見学して息子の状態を伝え、息子が生活できる環境かどうかをすり合わせをした上で、受け入れ可能と言ってくれた園に入園することができました。

――園では息子さんはどんな様子でしたか?

松本 息子が1人でおすわりできるようになったのが3歳半のころです。自力で歩くことはできなかったので、屋外での移動はベビーカーや福祉バギーで、屋内での移動は先生の抱っこや、支えてもらって歩く介助歩行で過ごしていました。
「大好きなお友だちと同じことがしたい!」という気持ちが原動力になり、苦手だったお絵描きが好きになったり、お散歩ではバギーから降りて先生に支えてもらいながらたくさん歩いたりと、障害児だけではない環境でたくさんのお友だちと一緒に過ごせたからこそ、気持ちも運動面も大きく成長したと思います。

お友だちは、先生が息子を支えて歩く様子をよく観察していて、代わりに支えて歩かせようとしてくれたりしました。息子は口の筋肉も弱いんです。だから言葉を理解していても話すことが難しいのですが、お友だちは絵カードを使って息子がやりたいことを聞いてくれたりもしました。
大人が教えたり指示したわけではないのに、いつも自然と息子をサポートしてくれていたんです。子どもたちがそんなふうにかかわりあう様子を目にして、小さいころからいろいろなニーズを持つ子どもたちが一緒に過ごすことで、自然に多様性を理解して受け入れてくれるということを実感しました。

――息子さんが保育園に通っている時間は、松本さんは仕事に集中できましたか?

松本 ちょうどそのころ起業して右も左もわからない中で必死だったので、安心して保育園に預けられたのは何よりありがたかったです。それに、お迎えに行くと先生が「今日は保育園でこんなことができたよ」とすごくうれしそうに話してくれたんです。自分たちの家族以外にも、息子の成長を一緒に見守って喜んでくれる先生たちがいてくれることが、本当にうれしく、ありがたかったです。

お話/松本友理さん 写真提供/株式会社Halu 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

松本さんは障害のある子は発達がゆっくりだからこそ、子育ての中で日々使うスプーンや椅子といったプロダクトをより使いやすい・便利なものを探す目が養われたのだそうです。「障害のある子の子育てで得た知識は、障害がない子にとっても役立つことがある。今後はそんな思いを形にしていきたい」と松本さんは話してくれました。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年8月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

松本友理さん(まつもとゆり)

PROFILE
株式会社Halu代表。2007年に大学卒業後、株式会社トヨタ自動車に入社。本社にて10年間、プロダクトマネージャーとして、カローラなどのグローバル戦略車の商品企画などを担当。2016年、長男を出産。脳性まひのある長男の育児をきっかけに起業し、「IKOUポータブルチェア」を開発。スタイやキッズウエアも販売する。

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