ママ界のエンターテイナー バブリーたまみさん。8歳で母が失踪。マタニティブルーズなどの経験を経て「バブたま」が生まれるまで
子育てを頑張るママたちに「笑顔」と「元気」を届けるママ界のエンターテイナーを名のるバブリーたまみさん。「まずはママである自分を大事にしてあげよう」とメッセ―ジを伝えるインスタグラムは約10万人のフォロワーから支持されています。自身も2児の母親で、明るい笑顔を振りまく姿からは想像もできませんが、幼少期に母が失踪、産後2日でマタニティーブルーズを発症するなどの過去もありました。バブリーたまみとして活躍するまでのことを聞きました。インタビュー2回シリーズの1回目です。
結婚式の余興がきっかけで「バブリーたまみ」が誕生
――バブリーたまみさんは、子育て中のママたちに「ママである自分を大事にしてあげよう」「そのままの自分を受け入れよう」と、SNSを中心に発信しています。「バブリーたまみ」はどういった経緯で誕生したのでしょうか?
バブリーたまみさん(以下敬称略 バブたま) 2017年、大親友が結婚することになり、余興を頼まれたのがきっかけです。私が28歳で、長男が1歳のときでした。
学生時代はバンドを組んでいたこともあり、また、もともと私は人を笑わせたり喜ばせたりするのが大好きでした。でも「結婚して子どもができたら、落ち着かないといけない」と思い込んでいて、結婚後は自分を抑えていたんです。
そんな中、大親友の結婚式の日だけは、バブルっぽい衣装を着て、思いっきり歌って踊りました。それが大ウケしたんです。出席した友だちたちから「めちゃくちゃ面白かったよ。すごかったね」などと言ってもらえました。
――それだけ反響があるとうれしいと思います。
バブたま そうなんです。そこで結婚式に出席できなかった友だちにも見てもらおうと、軽い気持ちで余興の動画をYouTubeにアップしました。それがあっという間に100万回再生されました。
その動画を見た、地元に里帰り出産したときにお世話になった子育て広場のスタッフの人から「今度、その格好で遊びにおいでよ」と誘われました。実際に子育て広場に行ったら、みんなが喜んでくれて、私もすごく気持ちがよかったんです。そのパフォーマンスの様子もYouTubeにアップしたところ、驚くほどたくさんの人に見てもらえました。もともと承認欲求は強いタイプだと自覚しているんですが(笑)、とってもうれしかったです。
それからは、頭のなかはバブリーたまみでいっぱいです。家事をしていても、仕事をしていても、何をしていても「バブリーたまみとしてこんなことをしたら楽しいだろうな」といろんなアイデアが浮かび、ワクワクしていました。
とはいえ、そのときは会社員だったし、経済的なこともあったから、バブリーたまみの活動に専念しようとまでは思っていませんでした。
「いちばんやりたいことに取り組むべきだと」と、夫が背中を押してくれた
――最初は活動に専念するつもりはなかったのが、なぜ現在につながったのでしょうか?
バブたま 夫が背中を押してくれました。あるとき夫に「子育て広場にバブリーたまみとして行ったとき、ママたちがすごく喜んでくれて、私もうれしかったんだ。だから、土日やあいている時間に活動させてほしいんだけど、どう思う?」と相談したんです。
すると「収入や子どもがいるという現実を全部抜きにしたら、本当は今、何がいちばんしたいことなの?」と聞かれました。そのときに思いきって「本当はバブリーたまみの活動に専念したい」と答えました。夫は「じゃあ、明日会社に辞表出そう。やりたいんだったら中途半端にしないで集中したほうがいい」と言ってくれたんです。まさか全面的に肯定してくれると思わなくて、ほれ直しました(笑)
――背中を押してくれた夫さんは、すばらしい理解者ですね。
バブたま 本当にありがたいです。夫は客観的な視点で見ていたようです。私がおもしろいことを始めようとしているから、どんな感じか見てみたい、という感じだったらしいです。また、私の凝り性な性格、とことんやりたがりだということもわかってくれていたんだと思います。
――バブリーたまみとして、どんな活動から始めたのでしょうか?
バブたま 最初はイベントを開催してもだれも集まらないから、地道にビラ配りやポスティングなどをしていました。転機になったのが、ある子育てママ向けのイベントです。前座として出演させてもらい、歌って踊りながら「ママだって自分を大事にして、好きなことをしていいんだよ!」とメッセージを伝えました。
それが大盛り上がりで、たくさんのママから「共感しました」と言ってもらえました。それがきっかけで少しずつほかのイベントにも参加させてもらえるようになりました。
――CDデビューもされていますが、どんな経緯だったのでしょうか?
バブたま あるとき、ママ向けのイベント会場にキングレコードのプロデューサーさんが来ていたんです。その方に呼び止められました。パフォーマンスのときは勝手に人の歌を使用していたから「ヤバい、著作権のことで怒られるんだ、私の人生終わった・・・」と思いました。
ところがプロデューサーさんから「ママを応援する気持ちが伝わってくるから、自分で歌詞を作ってみない?」と言われたんです。そこから思いがけず、CDまで出すことになりました。
8歳で母が失踪。自分を見失ったことも
――いつごろから「子育て中のママを応援」しようと思ったのでしょうか?
バブたま 活動を始めた当初からです。というのも私自身、幼少時や出産後、とてもつらい経験をしてきたんです。もっとも心に刻まれているのは、8歳で母が失踪したことです。
私は大阪府のとてもにぎやかな街で産まれました。5歳のとき父の転勤で、のどかな地域に引っ越すことになりました。いま考えれば、専業主婦だった母は、知り合いもいない場所に住むことになったうえに、父は仕事が忙しくてほとんど家にいない状況でした。姉と私2人の娘を育てながら、とても、とても孤独だったんだと思います。もし私が同じ状況でも、追いつめられただろうとは思います。
私が8歳になったとき、母が「おじいちゃんが病気になったから、ちょっと様子を見てくるね、すぐ帰るよ」と言って出かけました。バイバイしたのを覚えています。でも、それっきり帰ってきませんでした。母に置いていかれた経験は本当にショックで、ずっと怒りと悲しみを抱え続けていました。そのとき受けた心の傷は、おそらく一生消えることはないと思います。
実母を反面教師にして「理想の母親」になろうとしたけど、産後2日でマタニティブルーズに
――母親が急にいなくなるとは、本当に衝撃的な出来事だと思います。
バブたま 失踪する直前の母は、家事や育児に目が向いていなかったのでしょう。それはひどい生活でした。ごはんは毎日は食べられないし、家の中はゴキブリだらけで、うんちに虫が出たこともあります。姉と2人でそれが普通だと思っていました。
父方の祖母が同居してくれるようになって、それまでの生活がどれだけ異常だったのか気づきました。
失踪した母は、私にとって反面教師のような存在なんです。結婚し、妊娠しても「私は絶対子どもを捨てたりしない。優しくて子どもを最優先する、完璧なママになろう」と誓いました。妊娠中はヨガに取り組み、栄養管理をしっかりする、身体にいいとされることはすべて取り入れるという感じで「なまけたらダメ、理想のママにならなくては」と必死でした。
出産後、いざ赤ちゃんを目の前にすると、理想と現実のギャップが大きくて、混乱してしまいました。産後2日で吐きけが止まらなくなり、身体が震え、激しい動悸(どうき)がありました。これから子どもを育てていかないといけないプレッシャーに押しつぶされそうになり、怖くなってしまって・・・。赤ちゃんをかわいく思えなくなり、気づいたら、様子を見にきた助産師さんに泣きわめいていました。
マタニティブルーズの症状が出ているということで、医師からは授乳中も服用できる薬を処方されましたが、「理想の母親は薬なんて飲んだらダメだ」と思いこみ、その薬は隠して飲みませんでした。とにかく自分を抑えてガマンして、追いこむ毎日でした。
――聞いているだけで、苦しくなってきます。育児を楽しむどころではなかったのでしょうか。
バブたま 毎日つらい気持ちでいっぱいでした。退院後、夫はとても協力的で家事もほとんどしてくれましたが、八つ当たりばかりしていました。私は自分がイメージする「理想の母親」になるため、すべてにおいてガマンしていたんです。だから、夫が職場の飲み会に行ったり、趣味に取り組んだりしているのも許せませんでした。今思い出すと、その当時夫は本当に大変だったと思うし、申し訳なさでいっぱいです・・・。
――こうした経験から、現在バブリーたまみさんが伝える「ママはまず自分を大切にしないといけない」と考えにいたったということでしょうか。
バブたま そのとおりです。バブリーたまみとして、好きなことに取り組めたことで、本来の自分を取り戻せました。毎日楽しいし、子どもたちもかわいいと思えます。夫にも「協力してくれてありがとう」と感謝できるようになりました。
子育て中のママは毎日とても頑張っていると思います。もちろん子育ては大事ですが、ママはまず、自分を大切にしてほしいです。ママが笑顔でいることが、子どもたちにとってはいちばんうれしいことだと思います。
このことに気づかせてくれたのは、バブリーたまみです。彼女は私自身でもあるのですが、同時に私を開放してくれた救世主でもあるんです。
お話・写真提供/バブリーたまみさん 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部
ただ前向きなだけではなく、子育て中のつらい気持ちも否定せず、受け止めてくれるバブリーたまみさん。多くのママに支持されるのは、自身もさまざまなことを乗り越えているからなのかもしれません。インタビューの2回目は、第3子の妊娠を発表されたバブリーたまにさんに、子育ての悩みとの向き合い方について聞きます。
バブリーたまみさん(ばぶりーたまみ)
PROFILE
福岡県大牟田市出身。熊本県荒尾市育ち。福岡大学卒業。東京在住。ママである自分自身を犠牲にしすぎる育児はやめよう。『ママの笑顔がいちばん』というメッセージを歌やパフォーマンスやSNSを通じて日本中のママ達に伝える活動をしている。ママ界のエンターテイナー兼2児のママ。YouTubeやSNSで独自の世界を配信。ママパパや子ども向けのイベントを全国で開催し多方面で元気を拡散する活動をおこなっている。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
『自分と夫を嫌いにならない思考術 LOVE自分子育て』
育児がしんどいすべての人へ。子育ても夫婦仲も。一番大切なことはまず「自分」を大切にすること。子育て中のお悩みがスッとラクになる!バブリーたまみ著/1650円(自由国民社)