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深刻な医薬品不足、どう乗り越える? 自分と家族を守るための対処方法を医師が解説

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今年の夏は小児の夏風邪の大流行(※1)により、小児の医薬品不足がクローズアップされました。
「医薬品不足」という言葉へ漠然とした不安を抱えてはいませんか?
この記事では、医薬品不足の現状から国や薬局の対策、そして個人でできる対処法を医師が詳しく解説します。

医薬品不足の現状

医療の現場における医薬品不足は、小児薬に限ったことではありません。

日本製薬団体連合会 安定確保委員会の資料によると、出荷・供給を調整している医薬品は全体の22.9%(ジェネリック医薬品は全体の32.3%)を占めており、依然として多くの医薬品に供給不安が生じています(2023年8月の調査結果)(※2)

こうした医薬品不足の背景には、医薬品の品質不正問題が関係しています。
2020年12月にジェネリック医薬品の製造において不正が発覚し、それ以降メーカーへの行政処分が相次ぎ、幅広い種類の医薬品の出荷に影響が出ました。その結果、必要な医薬品が不足する事態となったのです。

それに加え、新型コロナウイルスの感染拡大で、解熱鎮痛薬やせき止めなどの需要が急増したり、インフルエンザなど季節的な病気の流行で特定の医薬品の需要が高まったりしたことが医薬品不足の一因にもなっています。

国や薬局が行っている医薬品不足への対策

国や薬局は、医薬品不足の解消に向けてさまざまな対策を講じています。具体的な取り組みを見てみましょう。

国が行っていること

国が行っている医薬品不足の対策を以下に挙げました。

・相談窓口の設置
厚生労働省は、医療機関や薬局向けの相談窓口を設置しています。医療機関や薬局は在庫不足に直面した場合、この窓口を通じて相談が可能です。

・増産の要請
厚生労働省は製薬会社に対し、とくに需要の高い医薬品について増産を要請し、需要に対応できるようにしています。

・優先供給による出荷調整
卸売業者に対して、発注の履歴がある薬局に優先して出荷するよう依頼しています。
これにより、以前から服用している医薬品の服用を患者が中断せざるを得ない状況にならないように調整しています。

・販売個数制限の要請
買占めや過剰な薬の購入を防ぐために、ドラッグストアや薬局に対して1人が購入できる個数を制限するように求めています。


国はこのように、必要な医薬品が患者に届くような対策を実践しています。

薬局が行っていること

国だけではなく、薬局も医薬品不足に対処すべく、さまざまな取り組みを行っています。

・別メーカーでの提供
医薬品が不足している場合、供給が安定している別メーカーの医薬品を代わりに提供するなどの対策をしています。
医薬品には、有効成分や効果効能が同じで添加物や剤形だけが異なるものがあります。
特定のメーカーにこだわらず、供給が安定しているメーカーのものを提供することで今までと同じ効果効能の医薬品を患者に届けることができるのです。

・薬局間の在庫連携
チェーン展開している薬局では、在庫が豊富な店舗から不足している店舗へ医薬品をやり取りすることで対処する場合もあります。
こうした連携により、必要な医薬品を入手できる可能性が高まるのです。

また、チェーンや姉妹店舗などに限らず、周辺の薬局同士で在庫状況を共有し合い、患者が必要としている医薬品の在庫がある薬局を紹介するなどの対策をしている薬局もあります(店舗による)。
また、ほかの薬局から医薬品をやり取りすることも可能です。

・適切な処方の検討
どうしても必要な医薬品が在庫切れの場合、薬局は医師に相談し、代替品や別の成分の医薬品で同様の効果を得られるかどうかを再検討します。


このように、薬局も、医薬品不足に対して対応策を講じ、患者の健康を最優先に考え、適切な治療を提供するための努力が行われているのです。

個人ができる医薬品不足への対処法

医薬品が必要な状況にならないよう予防に努めることも、医薬品不足に対処する方法のひとつです。個人でできる具体的な方法をご紹介します。

健康的な生活習慣、食生活を意識する

まずは、生活習慣や食生活を意識して、自身の健康を守ることが大切です。
食材には、健康維持に効果的な成分を含むものもあるため、積極的に摂り入れてみましょう。


・風邪の予防と症状の緩和:スルフォラファンを含む食材

ブロッコリーやカリフラワー、ケール、芽キャベツなどのアブラナ科の野菜に豊富に含まれる「スルフォラファン」には、免疫機能を強化する効果があるとされています。風邪の予防や早期回復に摂り入れてみましょう。


・アレルギー症状を緩和:アントシアニンを含む食材

赤ワインやブルーベリー、赤いベリー類(イチゴやラズベリー)に多く含まれる「アントシアニン」には、抗炎症作用があり、アレルギー症状を緩和する可能性があります。鼻水、鼻づまり、皮膚のかゆみや赤みが気になりやすい人は摂り入れてみてください。


・痛みを緩和する:エイコサペンタエン酸(EPA)やトリプトファンを含む食材

サバやサンマ、マグロ、ブリ、カツオなどの青魚の油に豊富に含まれる「EPA」には、炎症を抑制する効果が期待できます。関節炎や慢性疼痛(まんせいとうつう)など、痛みが気になる人は青魚類を積極的に摂り入れましょう。

また、鶏肉、ナッツ類、バナナなどに含まれる「トリプトファン」には、リラックス効果をもたらすセロトニンというホルモンの生成に必要です。からだをリラックスさせ、痛みを緩和する効果が期待できます。


ただし、疾患や症状に対して、食事は医薬品の代替となるわけではありません。
これらの食材を、バランスの取れた食事に組み込むことで、風邪やアレルギー、痛みなどに対する予防の補完として活用できます。

感染症を防ぐ努力をする

医薬品不足に影響を受けないためには、感染症を予防することも大切です。
ここでは、主な感染症の感染経路と予防方法についてご紹介します。

・インフルエンザ(※3)
飛沫感染や接触感染によって引き起こされます。
くしゃみや咳の飛沫は、2メートル程度飛ぶ場合も。流行している時期は人ごみを避け、必要に応じてマスクを着用しましょう。
また、感染者の手についたウイルスがドアノブやつり革などを介して感染する場合があるため、こまめな手洗いと、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどでの消毒を行い、鼻や口など顔(粘膜)を触らないように心がけましょう。
インフルエンザのワクチン接種も感染や重症化の予防に効果的です。

・ノロウイルス(※4)
主に経口感染によって引き起こされます。
感染者の飲食物や便・嘔吐物に汚染された物品、汚染されたカキなどの二枚貝の生食が原因に挙げられます。
家庭内で感染者が出た場合は、使用後のトイレやドアノブなどをこまめに次亜塩素酸ナトリウムで消毒するか、衣類や食器類は別で洗い85℃以上で1分以上加熱することをおすすめします。

・RSウイルス(※5)
飛沫感染や接触感染によって引き起こされます。
乳幼児に多く見られ、とくに、6か月未満の乳児は重症化しやすい傾向があります。兄弟に咳などの症状が見られる場合は、なるべく別室で寝るなど、接触させないように気をつけるなどの対策をしましょう。

手すりやおもちゃ、家具など、子どもがよく触るものはこまめにアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒するのも有効です。なお、子どもが口に入れやすいおもちゃなどを消毒した後は、水でよく洗い流しておくとよいでしょう。


・溶連菌咽頭炎(※6)
飛沫感染や接触感染によって引き起こされます。マスクやこまめな手洗いをして予防しましょう。
子ども(幼児〜小学生)に多く見られるため、子どもがよく触るおもちゃや家具は、こまめにアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒をしましょう。

・マイコプラズマ肺炎(※7)
飛沫感染や接触感染によって引き起こされます。
ただし、感染には濃厚接触が必要とされており、感染速度はそこまで速くありません。
家庭内で感染者が出た場合は、換気をこまめに行い、寝る部屋を別にするなどして接触時間を減らしましょう。
また、トイレやドアノブなどをアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒するのも有効です。

これらの感染症に対する予防策は、手洗い、咳エチケットの実施、感染者との接触を避けることなどが共通して重要です。
また、子どもが感染しやすい感染症(RSウイルスや溶連菌)であっても、親など大人に感染する場合があるため、家庭内感染を防ぐためにも、家族全体で注意を払うことが必要です。

季節ごとに流行する感染症に気をつけ、感染拡大地域に遊びに行くのは控えるなど状況に応じて対処しましょう。

家族の健康を守って医薬品いらずに!

医薬品不足の問題については、国や医療関係者がさまざまな方法で解消しようと尽力しています。
しかし、一人ひとりが健康的な生活習慣や食生活を意識し、感染症の予防に努め、医薬品に頼り過ぎないよう気をつけることも大切です。
個人でできる予防策を実践し、医薬品いらずな生活を送ることができるように努力していきましょう。

<参考文献>

※1 NIID 国立感染症研究所「IDWR 2023年第28号<注目すべき感染症> ヘルパンギーナ・RSウイルス感染症」
※2 日本製薬団体連合会 安定確保委員会「医薬品供給状況にかかる調査(2023年8月)」
※3 厚生労働省「新型インフルエンザ入門」
※4 NIID 国立感染症研究所「ノロウイルス感染症とは」
※5 厚生労働省「RSウイルス感染症Q&A」
※6 健栄製薬「A群溶血性 レンサ球菌咽頭炎」
※7 NIID 国立感染症研究所「マイコプラズマ肺炎とは」

PROFILE

医師 木村 眞樹子(きむらまきこ)

都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科に在勤。総合内科専門医・循環器内科専門医・日本睡眠学会専門医。産業医として企業の健康経営にも携わる。自身の妊娠・出産、産業医の経験を経て、予防医学・未病の重要さと東洋医学に着目し、臨床の場でも西洋薬のメリットを生かしながら漢方の処方を行う。
症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でもサポートを行う。●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=211332f2tmhy00010044

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