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子どもの事故の瞬間を目撃したママ・パパは51%。見守っていても、事故は起きてしまう!どうしたら?【救急専門医による子どもの事故防止への提言】

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ロックを解除しようとしている少年
●写真はイメージです
yamasan/gettyimages

乳幼児期は、窒息や溺水、高いところからの墜落など事故が多いです。ときには命にかかわる大きな事故につながることも。国立成育医療研究センターでは、現在およそ月に1回、子どもを取り巻く健康・社会的課題について理解を深めることを目的として「成育こどもシンクタンクセミナー」を開催しています。第8回は「こどもの死亡・外傷を防ぐための取り組み」をテーマに、2023年10月25日に開催されました。
講師は、名古屋大学医学部附属病院 救急・内科系集中治療部部長 沼口敦先生、国立成育医療研究センター副院長・救急診療科 統括部長 植松悟子先生です。セミナーの一部をリポートします。

亡くなってしまった子どもの事例を検証し、予防策を導き出すCDRとは?

図版/沼口敦先生 上の表は、2017~2020年の人口動態統計(n=15179)をもとに、沼口先生が独自に解析した「年齢による死因」。

沼口敦先生は「こどもの死亡の予防とCDR(チャイルド・デス・レビュー)」をテーマに講演しました。
CDRとは、Child Death Reviewの略で、予防のための子どもの死亡検証のことです。CDRは2020年度より、複数の自治体がモデル事業として取り組んでいます。沼口先生は、日本におけるCDR研究の第一人者です。

「CDRとは『未来の子どもを救う方法を、今日亡くなった子どもに聞くこと』と表現した先生がいます。
上の表を見ていただくとわかるように、年齢別にみると、不慮の事故で亡くなるのは0歳代が多いです。そして次は1~4歳です。日本は医療の進歩に伴い、乳幼児の死亡率は下がっていますが、事故に関しては同じような事故が繰り返し起こり、亡くなってしまう子が後を絶ちません。
そこで2020年度より、医療機関や行政をはじめとする複数の機関、専門家が連携して、亡くなってしまった子どもの事例を検証して、そこから予防策を導き出す、CDRという取り組みが始まっています。
CDRは有効な予防策を提言することで、同じような事故が起きないようにすることを目的としています。

日本は、子どもの死に対して触れることを控えるような風潮があります。しかし、子どもの死から私たちは学び、成長し、次の事故を防ぐ必要があると考えています」(沼口先生)

事故が起きた状況だけを見ていては、子どもの事故死は防げない

図版/沼口敦先生   CDRでは、上の図のように①情報収集、②検証、③提言の3つのプロセスから構成し、多機関の情報をもとに検証を行います。

CDRは3つのプロセスから構成し、まずは情報収集から行います。

「第1段階としては、事故で亡くなってしまった子どものかかりつけ医や、救急搬送時に対応した医師、監察医、保健センターの担当者、その子が通っていた保育園・幼稚園の保育者、現場検証を行った警察、救急搬送を行った救急隊など多機関からの情報収集を行います。
かかりつけの医師からは、亡くなってしまった子の基礎疾患や成長発達についての情報が提供されますし、保育者からは家庭の状況やその子の性格、特性なども聞けるでしょう。
子どもの事故には、原因となる背景があります。事故が起きた状況だけを見て判断していては、子どもの事故は防げません」(沼口先生)

効果的な予防策を提言して、同じような事故を繰り返さないように

CDRは、効果的な予防策を提言して、同じような事故で亡くなる子を減らすことが目的です。

「たとえば架空の事例ですが、集合住宅の5階の窓から転落して亡くなってしまった6歳の子がいたとします。
引っ越し準備のために、子ども部屋には窓枠の下10cmのところまで段ボールが積まれていました。子どもは1人で自分の部屋で遊んでいたところ、窓から転落。窓は全開で網戸がはずれていました。
この子は、幼児期から頭部打撲などのけがや異物誤飲などが多く、席に座り続けることが難しい面もあったとします。

こうした事故が起きると『子どもを1人にして、目を離したからいけない』などと言われることが多いのですが、それだけが原因ではありません。
たとえば幼児期にけがや異物誤飲が多かったり、席についていることが難しいという情報があれば、ADHD(注意欠如・多動症)など、発達の特性を疑います。もしそうならば適切な支援はできていたか? ママ・パパに安全に関する知識を十分に伝えられていたか? などの検証も必要となります。
また事故が起こった建物は、窓から転落しないように安全な構造だったかも検証する必要があります。
こうした検証を行うことで
●発達特性を見落とさないために、3歳児健診以降の保健行政(5歳児健診など)を推進する
●教育現場では、事故を起こさないための取り組みや情報発信をする
●調査機関は窓の安全性を精査し、建築基準の妥当性を再確認する
などの予防策が提言できます。

CDRを本格的に展開し、いたましい事故で亡くなる子どもを減らすことが急務だと考えています」(沼口先生)

事故に至るまでは0.5秒。ママ・パパがそばで見守っていても事故は起きる

植松悟子先生は「こどもの死亡・外傷を防ぐための取り組み 外傷予防編」をテーマに講演しました。

「0~17歳の事故には、外傷のピラミッドといわれる構図があります。
外傷で亡くなる子を1とすると、生涯後遺症が残るのは4、入院するのは37、事故によるけがなどで園や学校を休むのは690です。大きな事故が発生する裏には、同じような事故にあいけがをしている子が多くいるのです。

また子どもの死亡原因は年齢によって異なりますが、2022年の人口動態統計によると不慮の事故は0歳では3位(57人)、1~4歳では2位(58人)、5~9歳では3位(28人)と上位です。
外傷による死亡原因で多いのは、0歳は窒息が大半。1歳以降は、窒息、交通事故、溺水、高いところからの墜落です。

小児外傷の発生

図版/植松悟子先生 植松先生の研究グループが報告した、小児外傷の発生場所。家庭内がダントツに多いことがわかります。

私たちの研究グループが2023年度に報告した『子どもの傷害情報の解析に基づいた外傷と傷害予防のための研究』によると、子どもの事故は家庭内で最も多く発生していて、事故の瞬間を見ていたママ・パパは51%(n=8977)にのぼります。しかしあっと思った瞬間に事故は起きます。その時間はわずか0.5秒とも言われていて、ママ・パパがあっ!と気づくまでに0.2秒かかり、残りの0.3秒で事故を防ぐのは難しいです。そばで子どもを見守っていても事故は起きてしまうのです」(植松先生)

子どもの事故は、特性や育児の協力体制など変えられないものが背景にあることも

子どもの事故を防ぐ原則は3つのE「Environment(環境)」「Enforcement(法制化)」「Education(教育)」です。

「幼児のやけどは、たとえば炊飯器から出る蒸気に手を伸ばしやけどをする子もいます。しかし蒸気が出ない炊飯器が発売されていて、その商品はキッズデザイン賞を受賞しています。また転倒しても熱湯がこぼれないケトルも発売されていて、こちらの商品もキッズデザイン賞を受賞しています。
危険なこと・危険なものを保護者自身がまずは学び(Education)、子どもの事故を防ぐには、こうした安全な商品を選び、環境を変えていく(Environment)ことが重要です」(植松先生)

しかし、子どもの事故を防ごうとしても変えるのが困難なものもあります。たとえば子どもの特性や育児の協力体制、保護者の養育のしかた・時間、家族構成などは変えるのが難しいです。

「以前、重度のやけどで救急搬送されてきた子は、パパが1人で2人の子どもを育てていて、上の子が食事作りをいつも手伝っていました。上の子がパスタをゆでていて、なべをひっくり返してしまい、重度のやけどを負ってしまったのです。
パパに事情を聞くと、仕事で忙しくて、すぐに環境を変えるのは難しいと判断しました。そこで提案したのが養育支援でヘルパーさんを派遣してもらい、家事をしてもらうことでした。
子どもの事故を防ぐには、3Eだけでなく『変えられないもの』にどのような対策をとるかも必要です。

また事故が起きるとママ・パパは自分を責めますが、子どもの事故は環境や製品の安全性などが原因で起こることもあります。保護者からも危険と考えられる製品については、消費者庁やメーカーに報告をしてもらうことが大切です」(植松先生)

お話・監修・図版提供/沼口敦先生、植松悟子先生 協力/国立成育医療研究センター 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

「第8回 成育こどもシンクタンクセミナー こどもの死亡・外傷を防ぐための取り組み」は、医療、福祉、保育などの関係者約100人が聴講。子どもの事故を防ぐために必要なことを学びました。
次のセミナーは「5歳児健診再考」がテーマで、2023年12月15日開催だそうです。

●記事の内容は2023年10月の情報であり、現在と異なる場合があります。

第9回 成育こどもシンクタンクセミナーのお知らせ |

沼口敦先生(ぬまぐちあつし)

PROFILE
名古屋大学医学部附属病院 救急・内科系集中治療部部長。専門は、小児科、小児集中治療学。日本小児科学会 予防のための子どもの死亡検証委員会委員長を務める。

植松悟子先生(うえまつさとこ)

PROFILE
国立成育医療研究センター副院長。救急診療部統括部長。専門は小児救急医療、搬送医療。日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本救急医学会救急科専門医。

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