性を隠さないのは父譲り｡息子の友だちを集めて､性教育をしたことも【ジブリの鈴木Pの娘で小６男子の母・鈴木麻実子】

ジブリ映画の「耳をすませば」の主題歌「カントリー・ロード」の日本語詞を手がけた鈴木麻実子（まみこ）さん。麻実子さんの父は、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーです。麻実子さんは、小学６年生の男の子のママでもあります。麻実子さんに出産や子育てのこと、ママ友作りのことなどを聞きました。全２回の２回目です。

予定していた無痛分娩で産めず、緊急帝王切開に。36時間かかり長男が誕生

写真は、鈴木敏夫さんが麻実子さんが生まれたときから作り続けているアルバム。「長男を出産してから、改めてこのアルバムを見ると感慨深い」と麻実子さん。

麻実子さんが長男を産んだのは36歳のときでした。

――出産のときのことについて教えてください。

麻実子さん（以下敬称略）　妊娠中は、ずっとつわりが続いていました。
出産は、無痛分娩の予定でしたが、予定日が近くなったら破水したので、すぐに入院することに。無痛分娩のため麻酔薬を注入したら、麻酔が合わず吐き続けてしまって、結局、無痛分娩をあきらめることになりました。破水しているので陣痛促進剤を使ったのですが、なかなか陣痛が進まなくて。
医師から「おなかの赤ちゃんの酸素が低下しているから」と言われて、緊急帝王切開で産むことになりました。入院から出産まで36時間もかかり、私はフラフラで赤ちゃんが生まれたことすらわからないような状態でした。
息子は生まれてすぐ呼吸が安定していないため、NICU（新生児集中治療室）がある大きな病院に搬送されました。
しばらくして息子は退院して、私が入院している病院に戻ってきました。息子をゆっくり抱っこできたのは、生後７日目ぐらいでした。かわいかったけれど、私が本当に産んだのかな？という不思議な気持ちでした。

性を隠さないのは父譲り。息子の友だちを集めて、性教育をしたことも

鈴木敏夫さんと家の近所を散歩する麻実子さん。地元の恵比寿（東京都）には思い出がいっぱい。

麻実子さんの長男は、鈴木敏夫プロデューサーにとっては初孫です。

――鈴木敏夫プロデューサーと、長男との関係について教えてください。

麻実子　幼いとき息子は、ぱっつんとした前髪でかっぱみたいな髪型をしていたのですが、息子に会うたび父は「今日もへんな髪型だね～」ってからかっていました。
お互いに憎まれ口をききながらも仲がいいです。息子も父のことが大好きです。

――鈴木敏夫プロデューサーの子育てと、麻実子さんの子育てで似ているところはありますか？

麻実子　昔から父は、よく家で映画を見ていました。家族で旅行に行くときには旅館・ホテルにビデオデッキを持参して、映画ざんまいでした。TV番組をほとんど見ず、映画ばかり見ていました。
大人向けの映画を普通に見るので、ちょっと過激な性的なシーンがあったりするのですが、父は映像を止めたりもせず、私に別の部屋に行くように言うでもなかったので、父のそばで私もそうしたシーンをよく見ていました。映画を通して、自然と性教育をされた感じです。

私も父に似ていて、家で映画をよく見ますが、幼いときの私と同じように息子も性的なシーンを自然と見ています。
息子が小学５年生のとき、ママ友と「性教育って、みんなどうしている？」「どうやって教えたらいいの？」という話になって、ママ友たちから「麻実子が性教育してよ」と言われました。
小学５年生の男の子が７人集まり、私が性教育の絵本を読んで、子どもたちからの質問に答えたりしたのですが、みんなちゃかしたり、恥ずかしがったりすることなく、真剣に「精子って、どうやって卵子にたどり着くの？」「精子ってどうやって泳ぐの？」とか聞いてくるんです。
自分を守るためにも、相手を守るためにも性教育は、子どものうちから必要です。
私のこういうオープンな性格や、子どもを子ども扱いしないところは父譲りです。

ママ友作りに悩んだけれど、勇気をもって「遊びに来ない？」と誘ってから友だちの輪が広がった

麻実子さんの著書『鈴木家の箱』を読むと、友だちが多いことがわかります。しかしママ友作りには、苦労したそうです。

――性教育のことをママ友と相談できるってすごいですね。麻実子さんはどのようにしてママ友を作りましたか？　人見知りはないタイプですか？

麻実子　私は意外と人見知りです。ママ友という言葉には、えたいのしれないこわさもありました。
息子が小学生になったときは「初対面のママにタメ口で話してもいいのかな？」など、悩んでばかりいました。
同じ保育園のママ友グループがすでにできていて、保育園が違った私はどこにも入れない状態が続きました。

そこで私が考えたのは、相手のママにとって害がなく、得になる存在でいようと思ったことです。私の実家は、父が仕事仲間をよく家に呼んだりして、人が集まるのが当たり前の家でした。そうした環境で育っていたので、私も人を家に招くのが大好きです。
ちょっと勇気をもって「今度の土曜日、よかったら家に遊びに来ない？」と息子の友だちを誘ううちに、「親子で行っていい？」と聞かれたり、あまり話したことがないママから「うちも行っていい？」と聞かれたりして、友だちの輪が広がっていきました。
今では、毎週土曜日は暇な人はわが家に集まり、私の中学、高校時代の友だちも加わって、中高時代の友だちと小学校のママ友が意気投合して仲よくなったりしています。気がつけば私の実家にそっくりです。

――「ママ友ができない」と悩んでいるママたちにアドバイスはありますか。

麻実子　悩んでいるのはあなた１人ではありません！　「あのグループには入れない」と思っていても、グループの中で疎外感を味わったりして悩んでいるママもきっといるはずです。

私も「このママに嫌われているのかな？」と思ったことがあったのですが、仲よくなって話してみたら、私の勘違いだったことがわかりました。こうしたこともよくあると思います。

過剰な心配をやめたら、私らしく子育てができるように

麻実子さんは、子育ては学ぶことが多いと言います。

――乳幼児期は、どんなふうに子育てをしていましたか。

麻実子　息子は熱性けいれんを何回か起こしたことがあって、風邪をひかせることがとてもこわかったんです。「熱が出たら、またけいれんを起こすかも」と子育てに対してかなり神経質でした。でも「どんなに注意しても風邪はひいてしまう」と思ってから、過剰に心配するのはやめました。
私らしく子育てができるようになったのは、それからです。親がストレスをためないことの大切さを、このとき実感しました。

――小学生になってからは、どのようなことを大切にしながら子育てをしていましたか。

麻実子　息子のことは、私のものさしで見ないようにしています。以前、友だち関係のことでショックだろうなと思う出来事があって「大丈夫？」と声をかけたら「何とも思っていないよ」と明るく言うんです。
「無理しているのかな？」と心配したのですが、よく考えると「私のものさしで見て、息子の気持ちを勝手に決めつけていた」ということに気づいたんです。
それ以来、心配なことがあると「あなたのため」ではなく「ママが気になって不安だから教えて！」と言うようにしています。
またこうした親子の会話をするときは、必ず息子の顔を見て、抱きしめたり、手を握ったりできる距離で話し合うようにしています。
これは私の母のまねです。母も私をしかったりしたあとは必ず抱きしめてくれました。抱きしめてくれることで、母は味方なんだと思ったし、その瞬間が私は大好きでした。だから息子にも、同じようにしています。

お話・写真提供／鈴木麻実子さん　取材・文／麻生珠恵　たまひよONLINE編集部

麻実子さんは、幼いころ多忙な父・鈴木敏夫プロデュ―サーとは家で顔を合わせることがほとんどなかったそうです。しかし父との思い出はしっかり刻まれていて、麻実子さんも両親のいいところをまねて子育てをしているのが印象的でした。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年11月の情報で、現在と異なる場合があります。