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岸谷蘭丸、「病気とともに生きる子どもたちのことを知ってほしい」。病室で、読書や絵を描くことが救いだった自身の幼少期を経て…

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長期にわたり入院や治療をする子どもたちが病室や自宅で制作したアート作品を通して、社会とつながる体験を届けるプロジェクト『WonderMeta(ワンダーメタ)』。実業家・インフルエンサーの岸谷蘭丸さんが、その公式アンバサダーに就任しました。小児リウマチを患った自身の経験から、病気の子どもについて社会に知ってほしいこと、2025年9月に香川県で開催したリアル展示イベントの様子などを聞きました。全2回のインタビューの後編です。

▼<関連記事>前編を読む

病気の子どもたちのロールモデルのような存在に

香川県で行われたイベントの様子。

――ワンダーメタの公式アンバサダーに就任した経緯を教えてください。

蘭丸さん(以下敬称略) 2025年夏ごろに小児科医の川口幸穂さんから長文のメールをいただいたのがきっかけです。僕の闘病経験についての発信を見てくれたようでした。僕は以前からこうした社会貢献活動に関心があって、小児リウマチの子どもたち向けに話をしたりしたこともあったので、「ぜひ協力したい」とお返事しました。

――2025年9月にはメタバース(仮想空間)を活用した『WonderMeta美術館』でのオンライン美術展示のほか、香川県ではリアル展示会も開催されました。イベントに参加して反響はどうでしたか?

蘭丸 9月1日~20日にはオンライン美術展で応募作品が展示されて、僕もバーチャル鑑賞イベントに参加しました。香川県高松市で行われたリアル展示会では僕の講演もあったのですが、1000人くらいの方が来場してくださったようで、予想以上に多くてびっくりしました。「僕、香川でも意外と有名なんだな」って(笑)

実は、僕がメディアに出たり活動したりすることで子どもたちのロールモデルのような存在になれたらいいな、という気持ちはずっとあるんです。子どものころ病気だった僕の今の姿を見て「芸能人と一緒に仕事してていいな」とか、「会社でお金を稼ぐと好きなことができるんだな」なんて感じて、自分もあんな仕事をしたいと思ってもらえたら、と。

さらには、病気の子どもをもつ親御さんにも希望をもってほしいんです。子どもの闘病中って、親は何を希望に頑張ったらいいかわからなくなることもあると思います。でも僕が元気に活動しているのを見て「こんなふうに育つ可能性もある」と感じてもらえたら、エンパワーメントにつながるのかなと思います。

応援したい気持ちで選んだ「らんまる賞」

らんまる賞を受賞した作品「Aurelia(アウレリア)」。

――『WonderMeta美術館』の展示会では優勝、準優勝以外に「らんまる賞」もありました。蘭丸さんが、金色の竜を描いた作品「Aurelia」を選んだ理由を教えてください。

蘭丸 作品数が多くてかなり迷ったんですが、作品のクオリティだけでなく、自分が共感できて応援したいと感じた作品を選びました。「Aurelia(アウレリア)」の作者は15歳で、成長ホルモンの分泌異常で身長が伸びにくい病気の高校生です。僕もステロイドの副作用で身長が伸びなかったので、「僕も小さいけど頑張ってるよ」と応援したいと思いました。

身長が伸びないって命にかかわることではないけれど、既製服が体に合わないとか、コンプレックスをもってしまうとか、不自由さが地味なんです。そんな地味に見える不自由さにもスポットを当てたい、という思いでした。男性にとって身長が小さいことは意外としんどいことが多いんですよ。

――本人とは話しましたか?

蘭丸 何度か話す機会がありました。病気を受け入れて、あまり悲観的なことは言わずに頑張っている強さが印象的な人でした。病気のことをまわりにあまり公表していないようなのですが、それは「気づかわれたくないから」だそうです。その気持ちはとてもよくわかります。

顔が丸くなり、眉毛やすね毛が濃くなった

――蘭丸さん自身の治療の副作用についても教えてください。

蘭丸 僕の場合は小児リウマチ(若年性特発性関節炎)の治療のために、かなり大量のステロイドを飲んでなんとか生活を維持していました。その副作用には顔が丸くなる、体毛が濃くなる、身長が伸びないなどがありました。命にかかわるようなことではないかもしれないけれど、子どもにとっては友だちやきょうだいがどんどん身長が伸びる中で自分だけ背が伸びないことはなかなかショックな出来事でした。

――蘭丸さん自身の身長が伸びなかった時期があるということでしょうか?

蘭丸 小学校低学年のころ3年くらい身長が全然伸びなかったことがありました。2歳年下の妹に身長を抜かれて、子ども心になかなかプライドが傷ついたというか・・・ショックでしたね。でもだれかに言ってもしょうがないからあまり表には出さず、心の中で「なんでかな」と思っていた気がします。

ほかに、ステロイドの副作用で顔がパンパンに丸くなる“ムーンフェイス”といわれる症状や、体毛がすごく濃くなる症状がありました。眉毛がつながるほどに濃くなるんです。まわりの友だちと違って自分だけ急に眉毛がつながってしまうことはかなりのストレスでした。小学3年で、すね毛もかなり濃かったから、プールの授業が嫌で「具合が悪い」と言ってサボっていました。

――学校の友だちから指摘されたことはありますか?

蘭丸 もちろんあります。子どもは指摘しないなんて無理ですよね。でも彼らに悪気があったと思わないし、指摘した子が間違ってるとも思わないです。僕も友だちに体形のことを指摘した経験はありますから。子どもは素直だから、みんなそうなんじゃないかな。だけどやっぱり言われると傷つきました。

入院や治療をする子どもたちに成功体験を

WonderMetaサーバーで開催された、岸谷蘭丸さん参加のイベントの様子。

――かつての当事者として病気の子どもを取り巻く課題について発信している蘭丸さん。今後、子どもたちのためにワンダーメタの活動を通じて取り組みたいことを教えてください。

蘭丸 ワンダーメタの活動は、病気で入院や治療をしている子どもたちが社会とつながって、自己実現をすることが目的の1つです。僕も狭くて何もない病室で、読書や絵を描くことが救いになっていました。メタバース美術館で自分の描いた絵を見てもらえることは、病院の外の人たちとつながる機会になります。さらにだれかが絵をほめてくれたら、それは子どもにとっての成功体験にもなるはず。 

そんな機会を作るために『WonderMeta美術館』プロジェクトには、病気の治療ができる人、医療知識がある人、メタバースを作る人たちが集まっています。そこで僕にできるのは、彼ら専門家の力をブーストする役割として、協力者を集め、活動を広めること。
これから病気の子どもや親に直接届く機会を増やし、オンラインイベントなども取り組みたいです。

――最後に、たまひよの読者にメッセージをお願いします。

蘭丸 僕は「病気の人には社会が優しくすべき」と声高に言うつもりはありません。見えない苦労や悩みはだれにでもあります。僕はありがたいことに金銭的に困ったことがないのでその苦労はわかりませんし、逆に僕の苦労もほかの人にはわからないかもしれません。

ただ「意外と多くの病気の子どもがいる」という情報が広がることには意味があると思っています。もし目の前に困っている子どもがいたら、気をつかいいすぎず普通に接して、必要なときだけ少し手を差し伸べる・・・そんな少しの思いやりの気持ちが広がればうれしいです。

お話・写真提供/岸谷蘭丸さん 取材協力・写真提供/チームWonderMeta 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

第2回メタバース美術館の実現に向けてクラウドファンディングで支援を募ったところ、目標金額を上回り達成。蘭丸さんは「今後は東京を始め、ほかの地域にも広めたい」と意欲を示します。

岸谷蘭丸さん(きしたにらんまる)

2001年生まれ。幼少期に小児リウマチを発症、10歳で寛解。高校でのアメリカ留学を経て、イタリア・ボッコーニ大学在学。現在はインフルエンサー・実業家として幅広く活躍。海外トップ大学受験・英語資格試験対策の専門「MMBH留学」代表。

WonderMeta(ワンダーメタ)

WonderMetaは、小児科医、教育学研究者、長期入院児を支援するNPO法人代表などが連携して立ち上げたチーム。小児がんをはじめとする小児慢性特定疾病と向き合う子どもたちが、病室や自宅で制作したアート作品を、インターネット上の仮想空間「メタバース」で展示するほか、地域イベントなどと連動して実際の会場でも展示。子どもたちの創造力と社会とのつながりを育む活動を続けている。

WonderMeta美術館

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年12月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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