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平均寿命は15~20歳の難病・コケイン症候群の姉妹。娘亡きあと一度は見失った“生きる意味”、今は前を向く

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長女・美彩さん19歳(左)、二女・優華さん17歳(右)。体調が悪い美彩さんに優華さんが寄り添っています。

東京都に住む牧子さんの長女・美彩さんは3歳、二女・優華さんは1歳のころ、2人とも指定難病の「コケイン症候群」と診断されました。通常の4~5倍の速度で老化が進む病気で、平均寿命は15~20歳とされています。自分の時間のほとんどを子育てとケアに費やしてきた牧子さんは、美彩さん19歳、優華さん21歳で別れのときを迎えました。24年間の子育てで「たくさんの愛をもらえた」と話す牧子さん。姉妹の生活やお別れのときのことなどについて牧子さんに聞きました。全2回のインタビューの2回目です。

▼<関連記事>前編を読む

いつも一緒に過ごし、仲よくけんかした姉妹

二女・優華さん、小学校の入学式。

コケイン症候群は極めてまれな早発老化症で、常染色体潜性遺伝の病気です。紫外線に当たることなどで生じる遺伝子の傷を修復する機能に欠陥があり、低身長や知的障害、早くから老化などの症状が現れます。
通常の人の4〜5倍のスピードで老化が進み、年齢とともに言葉を話すことや意志の主張がしだいにできなくなっていきます。口からの食べ物も飲み込めなくなり、15歳前後になると腎臓や肝臓の機能が低下しやすく合併症を起こしやすくなります。そのため平均寿命は15~20歳という病気です。

牧子さんに「2人はどんな姉妹でしたか?」と聞くと、「美彩は人が好きで人を思いやれるやさしい子、優華は明るい癒やし系」との答えが。2人はいつも一緒でとても仲がよく、けんかもたくさんする姉妹だったのだそう。

「私が食事の用意をしていると、見えないところで『キャーキャー』と声がすると思ったらけんかをしていることはよくありました。美彩が優華の靴下をわざと脱がせてそれを持って逃げ、優華が嫌がって騒ぎながら追いかける、みたいなけんかをしていました。

ちょっかいを出すようなことがあっても、美彩は優華のことがかわいくてしょうがなかったみたいです。あるとき、私の友人が遊びに来た日に美彩が学校を休んでいて、みんなで優華の帰宅を待っていました。するとヘルパーさんと一緒に帰宅した優華を見て『美彩ちゃんがすごくうれしそうな顔をしてた。妹が大好きなんだね』と、友人が教えてくれたんです。
でも2人が一緒にいるとけんかする、そんな感じでにぎやかでした」(牧子さん)

美彩さんが10歳になるころ、牧子さんは通っていた療育施設の医師から「日本コケイン症候群ネットワーク」を紹介されました。

「パンフレットを見せてもらい、すぐに当時の会長に電話しました。すると『東京にきょうだいでコケイン症候群の子がいるから会ってみない?』と紹介を受けました。きょうだい2人とも同じ病気を患っている人とは、それまで出会ったことがありませんでした。その人だったら私と同じような経験をしてきたかもしれない、きょうだい2人とも歩けない移動のときの苦労や、生活上での大変さがわかりあえるかもしれないと思い、お会いすることに。

実際にお会いすると、とっても明るい人でした。難病のある子どもとの暮らしをこんなふうに明るくとらえて生きていいんだな、と、そんな気持ちになりました。それで私もネットワークに入会することに。会の集まりに参加してみると、すでにお子さんを亡くされた親たちもみなさん元気でパワフルな人ばかり。コケイン症候群のお子さんたちにも会うことができて、娘たちもあれくらい生きられるんだな、一緒にいられるんだな、と思えました」(牧子さん)

19歳で旅立った長女。成人式の着物を着せてあげたかった

優華さんの入学式に合わせておめかしをしている、長女・美彩さん。

美彩さんと優華さんは体調を見ながら支援学校高等部まで通学しました。牧子さんは娘たちにできるだけいろんな体験をさせたいと、紫外線などに気をつけながら家族でいろんな場所へ遊びに出かけました。ですが、美彩さんは17歳になるころからなかなか食べることができなくなり、約98cmだった身長に対して、体重が12kgほどになってしまいます。

「このままもっと体重が減ってしまったらどうしようと悩んでいたとき、胃ろうにすると少し栄養がとれる、少しふっくらすると聞いて、いい方向に行くと信じて手術をしたんです。けれど術後は、血圧が高くなったり、脈が速くなったりと不安定になってしまいました。

食事は流動食にしてゆっくり注入していました。下痢になって体力を奪われないよう、60mL〜80mLの食材を1日に何回かに分けて、時間をかけて注入していました。体調によって与えられるものが限られてしまっていたのですが、今振り返ると、命に限りがあるのだからもっと食べたいものをおなかいっぱい食べさせてあげたかったな、と思います」(牧子さん)

胃ろう手術をしたあと美彩さんの体力は少しずつ落ち、体調が悪化して入院することもありました。お別れのときを迎えたのは、2017年、美彩さんが19歳のときでした。

「最後のほうは体重が8.5kgしかなかったんです。体調が悪化してとても苦しそうでした。私は娘を抱っこして『神様、助けて!』と祈りました。成人式の着物だって着せてあげたいし、美彩がいなくなってしまう世界なんて考えられません。

だけど、苦しそうにしている娘を見ていると葛藤もありました。生きていてほしいと思うのは、私のエゴなのかな、と。もしかすると本人は『もう大丈夫だよ、安らかになってもいいんだよ』という言葉がほしかったかもしれません。でも、目の前で娘が生きているうちは、そんなふうには思えなくて。どうしても、なんとか、生きていてほしい、という思いでした。
訪問医が到着する40分ほど前、訪問看護師さんが付き添ってくれる中、美彩は私の腕の中で息を引き取りました」(牧子さん)

長女の旅立ちから5年後の9月に、二女を見送った

家族でお出かけした先での二女・優華さん。なにげない日常に幸せがありました。

美彩さんが空へ旅立ったあと、妹の優華さんの様子にも変化がありました。

「優華が笑わなくなってしまったんです。私たちはつらいことを人に話したり泣いたりすると気持ちの整理がつくものですが、優華は話さないので感情をうまく外に出せずに苦しかったのかもしれません。とても仲のいい姉妹だったからつながりが深い分、喪失感が大きかったんだと思います。

できる範囲で楽しい体験をさせてあげたいと優華と一緒に出かけたりもしましたが、優華も体力がなくなってきていたのか、ぐったりしたり、だるそうな様子でした。美彩が亡くなった翌年くらいから、優華もごはんをほとんど食べなくなってしまい、経鼻経管栄養になりました」(牧子さん)

コロナ禍の2022年9月のこと。21歳まで生きた優華さんとの別れのときが訪れました。

「優華の体調が悪化して、前日から脈が速くなり38度くらいの発熱もありました。医師が診察に来てくれているときに、ついに呼吸が止まってしまったんです。心肺蘇生をしてくれましたが、なかなか戻りません。医師から『これ以上心臓マッサージすると肋骨が折れてしまうけどどうする?』と聞かれました。

その翌日は美彩の命日でした。医師に『美彩も迎えに来てると思うから、もうやめていい』と伝えました。美彩のときのことを思い出し、生きてほしいという私の願いが本人の苦しみに寄り添えていないのかも、と思ったからです。それで医師に『もうやめていい』と言ったのかなと思います。1日違いに旅立つなんて、本当に絆の深い姉妹でした」(牧子さん)

子の亡きあと、見失った“生きる意味”

食事量は少しですが、大好きなファミリーレストランへ。二女の優華さん(左)と長女の美彩さん(右)。

24年間、懸命に娘たちと生きてきた牧子さん。優華さんも旅立ってしまったあと「生きている意味が見いだせないと感じた」と言います。

「ずっと娘たちのお世話に一生懸命に生きてきて、それが自分の生きる意味になっていました。急に2人がいなくなって、これからどういうふうに生きていけばいいんだろうって。娘たちの代わりに心の穴を埋めるものなんて何もありません。

私は、自分の生活のほとんどの時間を娘たちのケアにかけてきたし、仕事をしているわけでもなかったから時間ももてあましました。夜中も何回も目が覚めるんです。もう必要ないってわかってるのに、おむつを替える時間や経管チューブから水分を入れる時間などに起きてしまう。体にしみついた習慣はなかなか抜けませんでした」(牧子さん)

夫の宏さんもひどく落ち込んだ様子だったそう。そこで牧子さんは、夫婦で娘たちと一緒に出かけた場所を巡ることにしました。

「その場所に行くと娘たちにまた会えるような気がしたんです。伊香保温泉や熱海などを訪れ、家族旅行のできごとを思い出しながらも、さらに新しい家族の思い出が増えていくような感覚でした。

夫が『あのときはかわいかったなあ』と言うので、私は『ううん、かわいかった、じゃないよ。今も! あの子たちはかわいいよ』と話したりして。そんなふうにあちこちを巡るうちに夫は少しずつ変わっていきました。あるとき『きみがどこかであのとき食べていたおやつ、おいしそうだから今度食べてみようかな』と言いました。娘たちのことばかり話していた夫が前を向くような言葉に、夫が思い出から少しずつ解放されて、今を生きられるようになってきたと感じて安心しました」(牧子さん)

オンライン取材時、自宅で応じてくれた牧子さんの向こう側、部屋の奥には姉妹の仏壇が見えました。白くてかわいらしいデザインです。

「仏壇のわきには娘たちの写真を飾り、その下の収納には娘たちのこれまでの成長の記録や、学校との連絡帳などがしまってあります。2人のお骨も今もそこにあります。お墓が遠いので納骨してしまうと、月命日にもお参りに行くのも難しいからです。私たちは毎日仏壇に向かって『今日はこんなところに行ったよ』と話しかけ、娘たちに愛を送り続けています」(牧子さん)

娘たちがくれた大きな愛に支えられる今

牧子さんは現在、コケイン症候群ネットワークの活動や有償ボランティアなどの活動をして過ごしています。

「娘たちを育てているときは『この子たちがいなくなったあとどうやって生きていけばいいの?』と不安ばかりでしたし、娘たちを亡くして元気に過ごせる自分なんて想像できませんでした。だけど、実際に娘たちを見送ってからは、少し考えが変わりました。私が元気に活動することで、今子育て中のお母さんに希望を与えられるかもしれないと思ったのです。自分の姿がだれかを元気づけられたら、という思いで、今もコケイン症候群ネットワークでの活動を続けています。

コケイン症候群の治療の研究はこれまでなかなか進まなかったのですが、学会で知り合った医師や、長年コケイン症候群の子どもたちとかかわってくださっていた医師たちが、新たな研究をスタートするそうです。今後、研究などが進むように、そしていつか治療法が見つかり、同じ病気の子どもや家族が希望をもって生きられるように、応援する活動を続けていきたいと思っています」(牧子さん)

大きな喪失を携えながらも、自分にできることはなにか、探し続ける牧子さん。そんな牧子さんを支えるのは、娘たちが与えてくれた愛情です。

「私にとって、娘たちと過ごした時間は宝物でした。今は娘たちの体はないけれど、心の中で一緒に生きている感覚があります。娘たちは生前は歩けませんでしたが、今は自由にどこへでも行って好きなことをしているでしょう。娘たちが今いる場所が、やさしい世界であってほしいと願っています。

私自身もかつて、病気のある子どもをどうやって育てようか・・・、と不安でした。普通の子育てにあこがれ、願っても手に入らない世界だと思ったし、いくら望んでも孫には会えないんだな・・・と思ったこともあります。
だけど、難病があった娘たちは私に尊い愛の体験を授けてくれました。娘たちは本当にかわいくてかわいくて、あたたかい気持ち、キュンキュンする気持ち、いとおしい気持ちをたくさんプレゼントしてくれました。だから、子育てしている人は今のお子さんとの時間を大切に過ごしてほしいなぁと思います」(牧子さん)

【久保田雅也先生より】 未解明な部分が多い病気。家族会の果たす役割は大きい

コケイン症候群(CS)では発症のメカニズムや治療法など未解明な部分の多い中で、家族会=ピアサポートの果たす役割は大きいと考えます。家族会のもつ前提抜きの交流(病気の説明は不要、感情の装いも不要、希望も絶望も共有)は医療では決して代替できません。
家族会では子どもの死を通過した人が、なお“ケアする側”に立ちます。喪失が、意味を失わず、次のだれかの時間を支える力に変換されています。このピアサポートは単なる「情緒的支援」ではありません。病気と共に生きる知恵の継承、予後を知った上での覚悟の共有、希望を否定せず、幻想化もしない態度が伝えられます。これらは医療の外にあると考えられがちですが、治療偏重の医療への静かな批評でもあります。

お話・写真提供/牧子さん 医療監修/久保田雅也先生 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

やさしくていねいに生活をともにしてきた娘たちを失う喪失感は想像がつかないほどのことでしょう。取材では、ときおり涙しながらも明るく話してくれた牧子さん。牧子さんの明るさやあたたかさや強さは、2人の娘さんたちがいたからこそだと感じました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

※本記事の人物名はすべて仮名です。

日本コケイン症候群ネットワークのサイト

小児慢性特定疾病情報センター「コケイン症候群」

久保田雅也先生(くぼたまさや)

PROFILE
島田療育センター 院長。九州大学工学部大学院 応用原子核工学専攻修士課程修了、佐賀医科大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院小児科、都立八王子小児病院、国立成育医療研究センター神経内科医長などを経て、2021年より現職。小児神経専門医として広く神経疾患を診ている。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年11月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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