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目をパチパチする「チック症」の症状が増えた小学4年生の男の子。何が原因?どう対応する?【小児神経科医が伝える〜見守るゆくり〜】

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●写真はイメージです 写真提供/ピクスタ

小児神経科医の湯浅正太先生の診察室には、困りごとを相談しにたくさんの親子が訪れます。医師として子どもや家族にかかわっている湯浅先生は、子どもの心の成長や親子の幸せにはさまざまな「つながり」が不可欠だという考え方に基づいた「ゆくり学」を提唱しています。今回は先生が診察で出会った「目をパチパチする行動が増えた子」のケースをもとに、子どもの気になる行動とその対応についてのゆくり学の視点からの解説です。

目をパチパチする行動が増えた男の子

「ゆくり」とは「縁」「つながり」を意味する古語のこと。
湯浅先生は、親子、両親間、そして親と社会との「ゆくり」が子どもの心を健全に育てる要と考え、その基本方針として「ゆくり学」を提唱しています。

――湯浅先生のクリニックで、目をパチパチする行動が増えた子どもについて実際に相談があったケースを教えてください。

湯浅先生(以下敬称略) 小学4年生のゆうま(仮名)くんは、小学校入学当時から少しずつまばたきが増えました。小学3年生の夏休みごろにはまばたきの回数がさらに増え、悪化したそうです。しょっちゅう目をパチパチするので、気になった母親は「目、パチパチしてるわよ」「目、パチパチ、やめなさいよ」などと注意をしました。

母親はゆうまくんが目をパチパチする行動について心配し、またどうやって止めたらいいのかがわからずに受診しました。しかし、ゆうまくん自身はまばたきのことをあまり気にしていない様子でした。

母親がもう1つ気にしていたことは、学校の面談で先生から「ゆうまくんは少し空気を読めないところがある」と言われたこと。ゆうまくんはクラスのお友だちとワイワイ楽しみながら遊ぶことがあきらかに苦手だったそうです。昼休みは校庭でお友だちと遊ばずに教室にいることが多いようでした。

――ゆうまくんは「空気が読めない」というストレスからまばたきが増えたのでしょうか。

湯浅 ゆうまくんのように「空気の読みにくさ」がある子どもは、まわりが感じている以上に生きづらさを抱えることもあるものです。自分の何気ないひと言で相手を傷つけてしまい、その結果、自分が怒られるようなことも経験していたのかもしれません。
ゆうまくんのような子の場合、学校のように、集団で同じように行動することを求められる空間では、気を張り過ぎて疲れてしまうのです。

ゆうまくんは診察室で私と1対1で話をしたときには、大好きな電車や車のことを次々に話してくれました。本当は学校でもいっぱいしゃべりたいことがあるのに我慢していたのだろうな、とせつなくなりました。

――先生はゆうまくんの母親にどのようなアドバイスをしましたか?

湯浅 まずは、ゆうまくんのまばたきを注意することをやめてもらうようにお願いしました。まばたきやせきばらいといった「チック症」は、病気というよりも、子どもの心を反映する一種のくせととらえて、どうやってそのくせとつき合っていくかを一緒に考えましょう、と提案しました。

また、外来での様子を見ているとお母さんからゆうまくんに「早くしなさい」「〜はやったの?」などと、口うるさく指摘をする様子が見られました。そういった親から子どもへの過干渉がある場合、子どもは心のゆとりを保つことが難しくなってしまうものです。

そこでゆうまくんの母親には、子どもに指摘しようとする気持ちがわいてきたら、指摘する前にゆうまくんと優しくつながる行動を試してもらうことをお願いしました。たとえば「あなたらしいわね」という言葉でつながってみたり、ゆうまくんの目を見ながら、そっとゆうまくんの腕に母親の手を添えたりしてつながるということです。

母親は「変えてみようかな」とすぐに言ってくれました。そのとき母親は涙ぐんでいました。それほど、本当にゆうまくんのことを心配し、つらかったんだろうと思います。

――その後、ゆうまくんの様子にどんな変化がありましたか?

湯浅 3カ月、6カ月、と経過を追う中で、気づくとまばたきはまったく気にならないほどに改善しました。しかも、学校での先生やお友だちとの会話が増えたそうです。

子どもは精神的な負担を抱えると、何らかの困った行動をすることが日常茶飯事です。そんな行動の裏には何か原因があります。ゆうまくんの場合、まばたきの裏には「空気が読めない」ことによる生きづらさがありました。

そして、それ以外にも、何かにつけ子どもの行動を注意してしまう、親の過干渉がありました。
親の行動を変えることで、子どもの生きづらさがやわらぐ。そういったことがあるものです。積極的にかかわる「ゆくり」もあれば、見守る「ゆくり」もある。そういうものです。1年経過したころに、母親は「実は私自身も、親からこまかく指摘を受けて育ちました。親の行動がこんなに子どもに影響していたんだって、この1年でよくわかりました」と教えてくれました。

湯浅先生が解説!「見守るゆくり」Q&A

●写真はイメージです 写真提供/ピクスタ

ゆうまくんのケースを参考に、「見守るゆくり」をはぐくむにはどんなことが大切か、湯浅先生にポイントを聞きました。

Q 目をパチパチする症状について教えてください。

【湯浅先生より】
目をパチパチする、せきばらいをするといった思わず起こってしまうすばやい体の動きなどを「チック症」と言います。チック症は遺伝的要素や脳内伝達物質により、体の動きを調節する脳内の回路がスムーズに機能しないことにより引き起こされると考えられています。とくに「不必要な動きを抑制する」機能がうまくはたらかない状態にあると推測されています。

チック症は本人の意志で改善できるものではなく、本人をしかることは症状を悪化させることにつながります。チック症をやめさせようとしてもやむことはなく、逆に指摘され続けることで、本人が症状を意識して症状が悪化する、という例が多いです。

Q 子どもにチック症状などがあらわれたときにはどんな「ゆくり」が必要でしょうか。

【湯浅先生より】
それは、子どもの視点に立った「ゆくり」です。大人の都合でつながるのではなく、子どもの都合に合わせてつながる必要があるからです。

大人主体に子どもの様子をとらえるのではなく、子ども主体に行動を観察する。そのくせがついてくると、子どもの行動がどんな心理的変化と結びついているのかが見えてきます。その心理的な変化をかぎ分けながら、子どもにアプローチをしてみましょう。

子ども主体に行動を観察するくせをつけるにはポイントが2つあります。1つは、親自身の心理状態を俯瞰的に確認するくせをつけること。
たとえば子どもの前で怒ってしまった場合や、夫婦の会話で感情的な口論になった場合などに、その行動がどんな心理状態にひもづいているかをたどって考えてみてください。怒りの背景には、心配や落胆、不安や悲しみといった感情が隠れているかもしれません。そうやって、親自身が自分の心を客観的に捉えられるようになると、落ち着いて子どもの心に向き合えるようになるものです。

その上で2つめは、子どもの心理状態を探るくせをつけることです。
たとえば子どもが気になる行動をしたら、幼稚園や学校で何があったかを確認して情報を集め、家庭での行動と照らし合わせてみます。子どもの状況を理解しながら、子どもがどんなことに困っているかを考えます。

この2つのくせをつけると、たとえばゆうまくんのような症状があらわれたとき、大人主体に「やめさせなければ」と考えるのではなく、子どもがどんなことに困っているのか、どうしてその行動をするのかを考察できるようになるでしょう。

Q 親自身が心に余裕をもって子育てするためにも「ゆくり」は大切なのでしょうか。

【湯浅先生より】
とくに初めての子育ての場合、どうしたらいいかわからない、周囲の目が気になる、といったこともあるかもしれません。親自身の精神的安定のためにも、子どもの発達や症状の見通しを教えてくれたり、悩みを聞いてもらえる人とつながることはとても重要です。

そのために、専門家を受診してもいいし、病院でなくても親自身の心を理解してくれる人とつながることが大切です。パートナーや友人に「こんなこと言われて傷ついた」と世間話程度で相談することも、大切な「ゆくり」です。

お話・監修/湯浅正太先生 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

子どもにチック症などの気になる行動があると、親もどうしたらいいかわからず不安になることもあるでしょう。そんなときはまず子どもの様子を観察し、情報を探ることがとても大切だと覚えておきたいものです。

※この記事で取り上げた例は特定の個人のケースではなく、診察室でのよくある相談から一例として作成したものです。

湯浅正太先生(ゆあさしょうた)

PROFILE
2007年3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。著書に『小児神経科医が伝える!「ゆくり学」のススメ』(ミネルヴァ書房)、『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)などがある。

一般社団法人 Yukuri-te(ゆくりて)のサイト

小児神経科医が伝える! 「ゆくり学」のススメ

「縁」「つながり」を意味する古語「ゆくり」を軸に、親子・夫婦・親と社会のゆくりを見つめ直す。子育てに悩む親へのヒントになる一冊。湯浅正太著/2200円(ミネルヴァ書房)

●記事の内容は2026年1月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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