三つ子を育てつつ、美容鍼灸サロンを運営するママ。小児訪問看護を頼りながら、ワンオペで切り抜けた赤ちゃん育児!【多胎インタビュー・後編】
仙台で女性向けの美容鍼灸サロンのセラピストとして働きながら、三つ子を育てているrisaさん。前編では、自然妊娠による一卵性三つ子の判明から、過酷な管理入院を経て30週で出産するまでのお話をお届けしました。
今回の後編では、NICU(新生児集中治療室)から退院したあとの「リアルな三つ子育児」について。パパの育休なしの状況で、risaさんがどのように3人を育ててきたのか、詳しくお話を聞きました。
最初に待っていたのは「終わりなき授乳ループ」
―― ママの退院後、赤ちゃんたちはいつごろお家に帰って来られたのでしょう?
risaさん(以下敬称略) 二男と三男は生後3カ月ごろに退院、子宮のいちばん下に入っていて妊娠中もいろいろと心配されていた長男は肺の機能が弱く、酸素モニターをつけた状態で、生後4カ月ごろに退院しました。
退院前には病院で「母子同室合宿」をしたのですが、これがもう大変で…。もともとNICUでも有名なほどよく泣く3人。大合唱が始まると手がたりません。それでも病院だと誰かが手助けをしてくれますが、退院後は当たり前に頼れる人はおらず…。夫は育休が取れなかったので、基本的には私1人でみる生活が始まりました。
―― ワンオペで三つ子育児! 想像を絶しますが、授乳や寝かしつけはどうしていたのですか?
risaさん 入院中は母乳をしぼって持って通っていましたが、事前の母子同室を経験したときに「これは無理」とあきらめて、退院後は「完全ミルク」に切り替えました。 最初は「1人が泣いたらあげる」スタイルだったのですが、1人に飲ませて寝かしつけると、次の子が泣き出し、また次が…と続き、気づけば最初の1人がまた泣き出す。これでは私が一睡もできないと悟り、わりと早めにやり方を変えました。
――具体的にはどんな方法を?
risaさん 授乳も寝かしつけも時間を合わせて一斉に行うようにしました。ミルクは「1人が泣いたら、寝ているほかの2人も起こして一斉にあげる!」 という感じです。
1人で飲める専用のクッションを用意して、3人同時にミルクをあげました。ただ、それでもうちの子たちは小さく生まれて、哺乳機能も未熟だったので、飲むのに30分くらいかかるんです。全員が飲み終わってオムツを変えるまでを考えたら、1時間はかかっていましたね。
寝かしつけに関しては、1人は比較的スムーズに寝てくれる子だったので、 残り2人を「ダブル抱っこ」しながら寝かすことが多かったです。
――ダブル抱っこ!力が尽きそうです!
risaさん もうすぐ3歳の今もダブル抱っこはしていますし、座りながらだと、3人一斉に抱っこするときもあります(笑)。
「訪問看護」がなければ詰んでいた。プロの手を借りる決断
―― 退院後は本当に睡眠不足だったかなと思うのですが、サポート体制はどうされていたのでしょうか?
risa 夫は仕事が忙しく、ワンオペ育児でした。もともと私は人に頼ることが苦手で、誰かに育児を手伝ってもらって気を使うよりも、1人でやっちゃったほうが楽だな、と感じてしまうところがあり…。
お仕事として誰かに入ってもらえるなら、気を使わずに安心して任せられていいのかなと考えていたんです。
そんなふうに多胎児のサポートを探していたときに知ったのが訪問看護でした。
多胎児であれば、訪問看護を利用できる…という情報をネットで知ったのですが、仙台でやっているところはなかなかなく、前例もほとんどなく、医師の許可も必要だったために半ばあきらめていました。
途方に暮れていたとき、偶然憧れていた同業のセラピストさんがいた会社が小児訪問看護事業を立ち上げたことを知ったんです。「ここしかない!」と思ってすぐに連絡し、子どもたちの入院中に主治医に指示書を書いてもらって利用できることになりました。
そのサービス自体が自分の出産直前に立ち上がったばかりの事業で、自治体初の小児訪問看護事業だったので、本当にタイミングがよかったと思います。
―― 訪問看護では具体的にどんなことをしてもらえるのですか?
risa 平日の午前と午後の1日2回、看護師さんが自宅に来てくれて。赤ちゃんの沐浴、ミルク、酸素モニターをつけていた長男のケアなどをプロにお任せできるんです。 子どもたちは看護師さんのことが大好きで、来ている1〜2時間の間は、私は別の部屋で泥のように眠ることができました(笑)。
この小児訪問看護のサービスは、1歳ごろまで平日は毎日利用させていただき、そのあとも回数は減りましたが、月に数回お世話になっていました。
3人同時入園をめざすものの、保活は難航…
―― 2024年から仕事復帰されたそうですが、保活のエピソードを教えてください!
risa 実は自治体の役所に相談に行ったら「0歳児クラスで3人同じ園に入るのは無理です」とあっさり言われてしまい、いったん心が折れました……。
早々に認可園は諦め、認可外保育園で条件の合うところに片っ端から電話。5〜6件見学に行き、ようやく3人一緒に受け入れてくれる小規模園を見つけることができました。
――保育園を見つけるのも大変でしたね。復帰後はどんなことに苦労されましたか?
risa やはり病気です。だれか1人が熱を出せば、数日後に2人目、3人目とリレー形式で感染するので、最初の数カ月はまともに働けませんでしたね。1年たって、最近ようやく呼び出しが減ってきたところです。
「3コ1」の子どもたち。すでに社会ができている
―― もうすぐ3歳になる三つ子ちゃんたち。現在はどんな様子ですか?
risa 一卵性で顔はそっくりですが、性格は全然違います。長男は好奇心旺盛なタイプ、二男は1人でも遊べるしっかり者、三男は甘えん坊で要領がいいタイプ(笑)です。
毎日ケンカもしますが、3人で遊ぶことも多く、すでに「社会」ができあがっているのを感じます。
全員に共通しているのは、負けず嫌いなこと。寝返りも1人が始めたらこうやるんだ!ってお手本を常に見られるから、2人、3人と練習を始めていましたし、つかまり立ちするときもほかの子ができると自分もやりたくなってまねしようと頑張っていました。今も1人がごはんを食べていると「僕も!」とまねして食べてくれます。
子どもたちを見ていると、保育園のような集団社会の場所に行かなくとも、三つ子同士かかわり合いながら生きている。そういう存在がいることがすごいなと思いますし、「2コ1(ニコイチ)」ならぬ「3コ1(サンコイチ)」の絆があることにうらやましくなることもあります。
―― 最後に、大変な出産・育児を経験したことで、risaさんご自身にどんな変化がありましたか?
risa 仕事への向き合い方は大きく変わりました。妊娠中のつわりが大変だったときや、産後の睡眠不足で心身ともに限界だったときに、サロンを一緒に運営しているパートナーのセラピストに施術してもらい、そのたびに救われるような思いをしたんです。
その経験があって、「マタニティケアや産後ケアをもっと広めたい」という気持ちが強く芽生えました。実際にサロンでもママ向けのメニューを充実させ、お子さま連れで来てくださる方も増えています。
これからも、産後のママがちゃんと休める場所であり続けたい。一人ひとりの状態に寄り添いながら、心と体を支えるケアを提供できればと思っています。
お話・写真提供/risaさん 取材・文/江原めぐみ、たまひよONLINE編集部
大変な三つ子妊娠、育児の経験を糧に「大変なママたちに寄り添いたい」と仕事にもまい進するrisaさん。そんな彼女の小さな体からあふれる大きなパワーは、きっとこれからも多くのママたちの心と体を癒やしてくれるはずです。母としてもセラピストとしても今後がますます楽しみですね!
risaさん(りさ)
PROFILE
仙台在住の30歳ママ。専門学校時代の友人とともに美容鍼灸サロン「harimoon」をオープン。セラピストとして働く。2023年1月に一卵性の三つ子(男の子)を出産。身長145cmという小柄な体で三つ子を妊娠生活を乗り越えた。現在は仕事に復帰し、自身の経験を生かしてマタニティケアや産後ケアに力を入れている。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●掲載している情報は2025年12月現在のものです。


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