生後6ヶ月 前後の赤ちゃんのインフルエンザ。その治療法や予防法とは?
毎年冬になるころ、はやり始めるインフルエンザ。保育園や学校、職場で大流行してしまうことも。かかったことのある人なら、「赤ちゃんにはつらい経験をさせたくない」とより一層思うかもしれません。インフルエンザの症状や治療法について解説します。
インフルエンザにかかると、どんな症状が起こる?
インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染が原因で起こる病気。インフルエンザといえば、体のふしぶしが痛くなり、高熱が続くイメージがあるかもしれません。しかし、インフルエンザウイルスにはいくつか種類があるため、ウイルスによっても症状は異なります。インフルエンザの症状を紹介します。
風邪の症状に似ている
インフルエンザウイルスは大まかにわけても数種類あるため、流行する型が毎年同じとは限りません。ウイルスによって特徴的な症状は違いますが、多くは寒けを伴う高熱が見られます。代表的な症状をあげてみましょう。
・高熱からくる寒け
・1週間近く続く高熱
・せき
・鼻水
・のどの痛み
39~40度の高熱が数日から1週間近く続き、せき、鼻水、のどの痛みなどの呼吸器系症状や頭痛のほか、吐きけ、下痢、腹痛などの消化器系の症状を起こします。赤ちゃんの場合は、典型的な症状が出る前に、母乳やミルクの飲みが悪くなることもあります。
インフルエンザの合併症
大人でもつらいインフルエンザ。体力もなく、抵抗力の弱い赤ちゃんがかかると、合併症を引き起こすことがあります。低月齢の赤ちゃんは急性細気管支炎を起こすことがあるので注意! また、乳幼児の場合は症状が長引くと急性気管支炎(きゅうせいきかんしえん)や肺炎(はいえん)、中耳炎(ちゅうじえん)などの合併症が起こることもあります。けいれんや意識障害があるときは、インフルエンザ脳症(のうしょう)の心配もあります。 赤ちゃんに起こりやすい合併症には以下のものがあります。
●インフルエンザ脳症(のうしょう)
インフルエンザウイルスに感染後、けいれんや意識障害などの神経症状が急速に見られ、生命の危険や後遺症が出る可能性も。重篤化しやすい急性脳症です。1~5才の子どもに多く見られます。
●急性細気管支炎(きゅうせいさいきかんしえん)
気管支と肺胞をつなぐ細気管支が、インフルエンザウイルスに感染して急速に炎症を起こす病気。6カ月以下だと呼吸困難のために入院治療になるケースもあります。
●急性気管支炎(きゅうせいきかんしえん)
感染が広がり、気管支に炎症を起こした状態。風邪が悪化したときにもなりやすい病気です。しつこいせきが出ます。
●肺炎(はいえん)
微生物が肺まで侵入し、炎症を広げた状態が肺炎。せきが長期間続いたり、症状が重い場合は入院が必要になったりすることもあります。
●中耳炎(ちゅうじえん)
鼻やのどの細菌が耳管(耳とのどをつなぐ管)を通じて中耳に感染し、中耳に炎症を起こした状態。風邪やインフルエンザの合併症として起きやすい、乳幼児にはとても多い病気です。
インフルエンザにかかる原因と感染経路
インフルエンザに感染した人のくしゃみやせきで飛び散ったウイルスが、鼻やのど、気管支などに入り込んで炎症を起こします。感染するスピードが速いのが特徴です。また、感染力が強く、生後6カ月ごろからかかりやすくなります。
インフルエンザの潜伏期間
インフルエンザの潜伏期間は感染してから1~3日間くらいと言われています。その後、発熱、頭痛、全身の倦怠感、関節痛などが現れます。続いてせきや鼻水が出るようになり、1週間程度で症状が軽くなるのが一般的です。風邪と比べて全身の症状が強く出るのが特徴です。
新生児もインフルエンザにかかるの?
なりやすいのは生後6カ月ごろ以降ですが、新生児~5カ月までの赤ちゃんでもかかる可能性はあります。わかりやすい症状として、38度以上の急な発熱とともに、せき、くしゃみなどが出ます。低月齢の赤ちゃんの場合は、
・おっぱいやミルクの飲みが悪くなる
・嘔吐や下痢などの胃腸症状
などが見られることもあります。
0~3カ月の赤ちゃんは、熱が出る前に具合が悪くなることもあるので、気になる症状があれば、早めに受診しましょう。
インフルエンザの治療法と対処法
インフルエンザが流行している時期に鼻水、せき、発熱などの症状が見られると、インフルエンザが疑われます。機嫌がよく、食欲があれば翌日の受診で大丈夫ですが、けいれん(ひきつけ)や意識障害が見られるときは至急の受診が必要です。インフルエンザの感染は、鼻水を綿棒でぬぐって検査する方法などで診断されます。解熱鎮痛剤やせきをやわらげる去痰薬(きょたんやく)などの対症療法を行うほか、抗ウイルス薬が処方されることもあります。
インフルエンザの薬は赤ちゃんが飲んでも平気?
1才未満でも、タミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬は医師の判断で処方されることがあります。そのほか、解熱剤で発熱のつらさをやわらげたり、鼻水やせきを鎮める薬が処方されたりすることも。1才以上であれば、抗インフルエンザウイルス薬を飲ませます。発症後48時間以内に服用することで重症化を防げます。持病のある場合は、かかりつけの医師と相談をしましょう。
当然ですが、医師の診断を受けて処方してもらった薬は、指示通り飲みきらなくてはいけません。また、インフルエンザに感染しているときに、アスピリン(成分名:アセチルサリチル酸)、ボルタレン(成分名:ジクロフェナク)、ポンタール(成分名:メフェナム酸)という解熱鎮痛剤を使うと、インフルエンザ脳症を誘発することもあるため、医師の指示なく薬を使うのは厳禁です。
・1才未満:生後2週以降の赤ちゃんには、症状により医師の判断でタミフルを処方
・1~4才:第一選択としてタミフルを処方
受診の目安は?
発熱だけならあわてて受診することはありません。早すぎてもインフルエンザの診断ができないことがあります。ただし、容体が急変することもあるので、サインを見逃さないで。
●診療時間内に受診
・38~40度以上の高熱やせきなどの呼吸器症状が1日以上続く
夜間でも病院へ行くべき?
赤ちゃんは、症状が急に悪化する場合もあるので、以下のような場合は、夜間でも病院へ連れて行きましょう。
●診療時間外に受診
・3カ月未満の赤ちゃんで38度以上発熱やせきなどの呼吸器症状がある
・3カ月以上の赤ちゃんで40度以上の高熱がありぐったりして機嫌が悪い
●救急車で受診
ぐったりして様子がおかしい
けいれん(ひきつけ)や意識がない
家での対処法は?
家では処方された薬を飲ませて、保温・保湿を心がけ、水分補給(離乳食開始前の赤ちゃんは、母乳・ミルクでOK)をこまめに行います。食欲がなければ無理に食事を与える必要はありません。けいれん(ひきつけ)を起こす、ぐったりして反応が鈍い、3~4日たっても熱が下がらない、ほかの症状がひどくなったときは再度受診をしましょう。
インフルエンザにかかったママの母乳を赤ちゃんが飲んでも大丈夫?
母乳にインフルエンザのウイルスは移行しないので、インフルエンザに感染しているママの母乳を飲ませても大丈夫です。ただし、密着するほど、赤ちゃんにうつる可能性が高くなるので、ママは授乳の前に手をしっかり洗い、マスクを着けて授乳をすると安心です。
インフルエンザの予防法
かかってしまうとつらいインフルエンザ。予防法や予防接種について紹介します。
家族ができる予防法
保育園児や2才までの子どもがいる場合は、家族で予防接種を受けるといいでしょう。
ウイルスを家の中に持ち込まないためにも、次の予防策に気を配りましょう。
・外出時のマスク着用
・帰宅時の手洗いやうがい
・人込みに連れていかない
・室内の温度や湿度、換気の環境を整える
ウイルスが付着した手で顔や口を触ると感染するので、赤ちゃんの手や顔をぬらしたガーゼでよくふく習慣をつけましょう。
赤ちゃんの予防接種
流行前に予防接種をしておくと、体の中に免疫がつくられ、インフルエンザにかかりにくくなります。感染しても肺炎やインフルエンザ脳症を併発するような重症化を防ぐ効果が期待できます。とくに集団生活をしている子どもはできる限り受けたほうがいいでしょう。接種対象は6カ月以上の赤ちゃんですが、月齢が低いと効果が持続しにくいことや、そのほかの予防接種を受ける時期との兼ね合いもあるので、1才未満の子はかかりつけ医と相談しましょう。副反応として、軽い発熱や接種部位の腫れが出ることがありますが、1~2日で自然に回復します。
まとめ
毎年大流行するインフルエンザ。大人がかかってもつらいので、赤ちゃんにはつらい思いをさせたくないですよね。予防接種をしても完全に防ぐことはできませんが、軽症で済むことが多いです。家族みんなでできるだけの手だてを打って、元気に冬を乗りきりたいですね。(取材・文/ひよこクラブ編集部)