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離婚後も一緒に子育て? スウェーデン人はどうやっているの?

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父と息子の泡の屋外の眺め
Henrik Weis/gettyimages

「ワンオペ」「孤育て」など育児の大変さを象徴する言葉が次々と生まれてしまう日本…どうすれば子育てしやすい環境を作ることができるのでしょうか?
そのヒントを手に入れるべく、子育てに優しい国として有名なスウェーデンへ家族で移住したのは、『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』の著者である久山葉子さん。
育児・共働きを経験して感じたことを、自身の言葉で綴ってもらいます。連載【スウェーデンでのくらしが気づかせてくれた、大切なこと】第五弾は、「スウェーデンの離婚とその後の子育て」について。

スウェーデンの人々にとっての「離婚」とは

北欧は離婚率が高い――という話を聞いたことがある方は多いかと思います。
住んでみて、確かにそのとおりでした。娘が2歳で入った保育園には、クラスにはすでに3人もママとパパ が別れているクラスメートがいました。でも、そのことを特に気にせずみんなオープンにしていて、スウェーデンの人にとって「離婚」とは特別なことではないのだなと感じました。もちろんその背景には、事実婚を選ぶ人が多いことや、男女とも経済的に自立していることなどもあるようです。
そうはいっても、どこの国でも子どものいるカップルが別れるときは少なからず辛い思いをするのではないでしょうか?感情的な葛藤だけではなく、その後日常をどう進めていくかも切実な問題です。ただ、離婚後の日常は、日本とスウェーデンではかなりちがいました。
もともとママもパパとも同じくらい子どもと時間を過ごせる土壌があるスウェーデン。離婚したからといって、その点は変わりません。親は共同親権をもち、子どもは一週間ごとにママのおうちとパパのおうちを行ったり来たりして暮らすのが一般的です。どちらのおうちにも自分の部屋があり、なるべく同じぐらいの時間をそれぞれの親と一緒に過ごせるようにします。また、子どもの生活の変化を最小限にするためにも、離婚しても近所に住むことが多く、そうすることで、子どもはこれまでと同じ保育園や学校に通うことができます。その場合は普通、養育費のやりとりもありません。親は子どもが自分のところで暮らす分の費用を負担するだけ。洋服などはどれをどちらが買うか話し合って決めます。
なんらかの事情で両親が離れて住む場合は、平日はママの家、週末はパパの家、(もしくはその逆)というパターンが多いです。それもできないくらい遠い場合は、普段はママと暮らし、夏休みの二ヶ月間はパパと暮らすこともあります。完全に半々でなくても、こうやってなるべく均等に両方の親と過ごす工夫がされています。
娘が保育園に入ってすぐにできた親友は、生まれたときにはすでに両親が別れていました。なのでその子は生後三か月のころから一週間ごとにママとパパのおうちをいったりきたりしていたそうです。
このパパは夜や週末も開いているガソリンスタンドを経営していました。だから子どもはパパが仕事のときはパパのお姉さんに預けられていました。その子が風邪を引いて熱を出してもパパはガソリンスタンドの店頭に立たなければいけなくて、代わりにお姉さんが看病していることもありました。それを聞いたママはさすがに怒って、自分が子どもを預かる週じゃないのに迎えに行きました。子どもをかわいそうに思って、ママが迎えにいった気持ちはよくわかります。それだけ聞くとひどいパパですよね。病気の子供を預けて自分は仕事に行くなんて。でも、それほど仕事が忙しくても必ず隔週で娘を引き取りたいというパパの愛情も感じました。このように、パパもママも自分の子どもとなるべくたくさん一緒にいたいと思うのはスウェーデンでもすごく当たり前のことだ、とひしひしと感じました。
自分がもし離婚して娘と一週間会えなかったら、寂しくて寂しくてたまらないだろうと思います。そのママも、娘が5歳になった頃、に言っていました。「今でもパパのところに送っていくときは、生後3ヵ月のときに初めて送っていったときと同じくらい寂しい。何年やっても、その寂しさに慣れることはないわね」と。それを聞いたとき、わたしももらい泣きしてしまいました。

私が考える、子どもがいない期間を持つことのメリット

私が考える、子どもがいない期間を持つことのメリット
一方で、隔週で子どもがいない生活を送ることにはメリットがあるようにも思います。その一週間は子どものお迎え時間を気にすることなく仕事に打ち込むことができます。シングルマザーもしくはシングルファーザーだからって仕事をセーブする必要はないのです。それに友達と会ったり、新しいパートナーを探す余裕だってできます。わたしの周りの離婚したママ・パパ たちはほとんどが1年以内、遅くても3年以内には新しいパートナーを見つけていました。先述のママも、2年ほどで職場の同僚とカップルになり、息子が二人生まれて、いつの間にやら五人家族に。郊外に古い大きな一軒家を購入、それを夫婦でリノベーションしながら素敵に暮らしています。
こうやって異母兄弟・異父兄弟ができることも珍しいことではありません。スウェーデンではもう何十年も前からわりとよくあることで、今さらそれを恥ずかしいとか隠すべきだという感覚はないようです。みんな堂々と「この子はパパと新しいパートナーの間に生まれた弟」だというように紹介します。新しいパートナーを「パパ」や「ママ」と呼ばせることもありません。その子にとっての親はあくまで本当の親で、親のパートナーとは別。だけど大切な家族だ、という考え方のようです。最近では親のパートナーは「ボーナス・パパ」や「ボーナス・ママ」と呼ばれ、「パパに加えてボーナス・パパまでいるんだ!」と、なんだかお得な気分になります。
スウェーデンでも、「離婚は子どもにとっても親にとってもつらい経験」と私は認識しています。けれど、離婚後、子どもが両方の親としっかり堂々と絆を深めていける環境があるのはなによりも素晴らしいことだなと感じました。
(文・久山 葉子)

「離婚」に対するスウェーデンの人々の考え方について知ることができました。子ども・ママ・パパにとって何がベストなのかを、みんなで一緒に探していく、という考え方もあるのだなと思いました。
(構成:たまひよONLINE編集部)

Profile●久山葉子(クヤマヨウコ)
1975年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部英文科卒業。スウェーデン在住。翻訳・現地の高校教師を務める。著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない(移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし)』を執筆、訳書にペーション『許されざる者』、マークルンド『ノーベルの遺志』、カッレントフト『冬の生贄』、ランプソス&スヴァンベリ『生き抜いた私 サダム・フセインに蹂躙され続けた30年間の告白』などがある。

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