おせちで感じる母のありがたさ【御手洗直子のコマダム日記】
今回はまさにお正月のお話。大センセーションを巻き起こした「婚活コミック」著者、御手洗直子さんが結婚して2児の姉妹の母に。あいかわらずのつっこみどころ満載の日々、渾身のひとコママンガ&エッセイでお送りします。「つっこみが止まらないコマダム日記」#51
子どもの味覚って…
お正月にはおせちが食べたい。特におせちが好きなわけではない。昆布巻きとか田作りをノルマとして皿に乗せられると『ウヘァ』となるし、紅白かまぼこもそんなに好きなわけではない。でもお正月にはおせちが食べたい。
私の母は前半まじめな専業主婦だったので、私たちが幼いころにはかなりまじめなおせち料理を作っていた。しかし幼児たちは当然昆布巻きや田作りを喜んで食べるわけもなく、母のおせちは次第にエキセントリックな方向へ進化していった。
昆布巻きや田作りが消え、エビフライやとんかつやポテトサラダが追加されていった。普通にお弁当である。お弁当チックではあるが、栗きんとんやなますがあるのでおせちなのである。セーフ。たぶん。そんな変則的ではあるが手作りの母の味を食べて毎年新年を迎えていたため、お正月にはおせちが食べたいのである。しかしこれが難しい。
おせちが食べたいと言っても私が食べたいのはお店などで売っている本格的なおせちではなくおせちっぽいお弁当なのである。そして売っているきんとんではなく家のきんとんなのだ。かなりめんどくさい。だとしたら自分で作るか母にタカるしかない。
しかし母も私達が実家を出ておせちを作らなくなったので、そこへわざわざおせちを作らせるのも申し訳なくなり最終的に自分で作ることになった。なったが芋を蒸してつぶしてアッ水飴が無い…栗買ってきた時に一緒に買えばよかった…となってめんどくさくなり芋はバターと砂糖をまぶして栗はそのまま食べた。とてもおいしい。そして翌年には栗の甘露煮だけを買ってきてそのまま食べたのであった。栗の甘露煮はいつだっておいしい。
一番好きな栗きんとんでさえこの有様なので食べたいけどそれほど食べたくもないなますなどは食べたいなァ(作るほどではない)とつぶやきながらグダグダとクダを巻くしかないのである。
そう考えると誰も食べないかもしれない昆布巻きや田作りや焼きエビなどをせっせと作っていた母は本当にありがたい存在であったのだなあ、と大人になってしみじみ思うのであった。(おわり
御手洗直子
Profile pixivで大人気。累計閲覧数1100万を誇る爆笑コミックエッセイスト。なんでそんなにネタ満載人生を・・・という謎の人。既刊に「31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる」「31歳ゲームプログラマーが婚活するとこうなる」(共に新書館)、「腐女子になると、人生こうなる!~底~」(一迅社)、「つっこみが止まらない育児日記」「さらにつっこみが止まらない育児日記」(ベネッセコーポレーション)など。たまひよのサイトで、数話限定公開中。
御手洗直子twitter:@mitarainaoko