「飲酒」と「喫煙」どれぐらい妊娠の妨げになるの?「プレコンセプションケア(妊娠前管理)」
たばこも大量飲酒もどちらも妊娠の妨げになることがわかっています。もしあなたが妊娠を希望しているなら、副流煙などによる健康被害についても知っておきましょう。
生活と体を見直す基本講座「プレコンセプションケア」の視点で、「飲酒と喫煙」について産科医・医学博士の太田寛先生に教えてもらいました。
「妊娠する前から知ってほしい 飲酒と喫煙」 プレコンセプションケア講座 #6
※参考:「妊活たまごクラブ 2020-2021年版」
健康な子どもを産み育てるために今日から夫婦で努力しましょう
「妊娠を望む男女にとって、たばこは極めて有害です。妊娠率の低下や胎児への影響もあります」。
太田先生によると、たばこを吸わなくてもその煙(副流煙)で赤ちゃんの呼吸器系にダメージを与えてしまい、ぜんそくなどの原因になるといいます。
「また、たばこの煙が消えたあと、壁や衣服などに染み込んだ煙成分の有害物質によって健康被害を受ける『サードハンドスモーク(残留受動喫煙)』も最近注目されています。いずれにしても、妊娠前に禁煙する、喫煙所には近づかないなどの対策が必要です」。
一方、飲酒については、「妊活中なら楽しく、適度な量であれば、ストレス解消に役立ちます。ただ、妊娠してからは少量でも避けたほうが無難です」
ヒ素やダイオキシンも!副流煙でも気になるたばこに含まれる有害物質
「たばこの煙の中には、健康に悪影響を及ぼす250種類以上の有害物質が含まれています。ニコチンは知っていても、ヒ素やダイオキシンなどが含まれていることを知らない人が多いのです」(太田先生)
「さらに、たばこの成分は空気清浄機や消臭剤を使っても、消えることはありません。妊活を機にぜひ2人で禁煙に取り組んでください」
●タバコの煙に含まれる有害物質は250種類以上!
・毒薬として使われてきた【ヒ素】
・殺虫剤の成分【ニコチン】
・ガソリンの成分【ベンゼン】
・ゴミ焼却時に発生する【ダイオキシン】
・殺鼠剤(さっそざい)に使われている【青酸ガス】
・死体の防腐処理に使われている【ホルマリン】
上記をはじめ、健康に悪影響を及ぼす250種類以上の有害物質が含まれています。
※厚生労働省:タバコ煙の成分分析について(概要)より
喫煙は百害あって一利なし。女性の喫煙は妊娠中の歯周病リスクが高まります
「一般的に、妊娠すると女性ホルモンの影響で歯肉炎にかかりやすくなるといわれています。その上、喫煙している女性は歯周病にかかりやすいため、妊娠すると歯周病が重症化する恐れがあります。妊娠を望んでいるなら、早めの今から必ず禁煙しましょう」(太田先生)
吸っていない人も妊活中に一度、歯科検診を受けることをおすすめします。
アルコール依存症が原因の胎児性アルコール症候群。控えることが大切です
妊娠中の習慣的なアルコール摂取によって生じる「胎児性アルコール症候群」。発育障害や脳障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)などを引き起こす場合があると言われています。
「これは重度のアルコール依存症が原因であって、妊娠初期にうっかり飲んでしまったというものとはまったく別物です。習慣的な飲酒は子どもへの影響が大であることを忘れないでください」(太田先生)
電子たばこなら大丈夫?いえいえ、免疫細胞への影響が確認されています
電子たばことはマイクロプロセッサで制御された電熱線の加熱で、霧状化して出てくるものなどがあります。従来のたばこに比べると有害性が低いといわれていますが、「まだ歴史が浅いので、安全性については研究段階です。妊娠を望んでいるのに、わざわざ余計なリスクを背負うことに賛成はできません」(太田先生)
【Check!】なかなか減らない!女性の喫煙率はほぼ横ばい
「2018年全国たばこ喫煙者率調査」によると、成人男性の喫煙者は約1400万人。ピーク時に比べ、年々減少し続けているものの諸外国と比べると、まだ高い状況にあります。一方、成人女性の喫煙率はほぼ横ばい。
「喫煙者の肌は黒くなり、シワが深くなるというデータもあります。美容と健康のためにも禁煙を」(太田先生)
【監修】太田寛先生
医療法人社団レニア会 アルテミス ウイメンズ ホスピタル産婦人科医長。医学博士。妊娠や出産の専門家であり、子宮や卵巣の病気の専門家でもある。gooヘルスケアなどネットで妊娠・出産に関する情報も発信している。
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●撮影/大森忠明
●スタイリスト/シダテルミ
●ヘア・メイク/榊美奈子
●モデル/優季
●構成・文/飯田由美(BEAM)