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プレコンセプションケアと性教育はとっても関係がある。その重要性とは?【専門家】

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●写真はイメージです
metamorworks/gettyimages

「将来どんな人生を生きたいか」を子どものころから考えることが「プレコンセプションケア(妊娠前管理)」の第1歩だといいます。妊娠を考える人はもちろん、子どもたちが若いうちから健康管理をきちんとして、妊娠にそなえるため、親世代は何をしたらいいのでしょうか。国立成育医療研究センターで日本初のプレコンセプションケアセンターの設立に尽力し、スタフォード大学に留学した三戸麻子先生に話を聞きました。

プレコンセプションケアを意識した性教育は、5歳ごろから

――「女性やカップルに、将来の妊娠のための健康管理を提供すること」を目的として始まった「プレコンセプションケア」ですが、どれくらいの年齢から意識したほうがいいのでしょうか。

三戸先生(以下敬称略) 将来の妊娠に備えたからだの準備が始まる前、つまり前思春期あたりから話をするといいと思います。9歳くらいからでしょうか?でも、もっと基本的なセクシャリティ教育という意味では、5歳前後から導入するといいでしょう。

――5歳とはかなり早いタイミングだと感じます。

三戸 子どもは、だいたい3~4歳くらいで「男女には違いがある」ことがわかるようになるといわれています。保育園や幼稚園に通うようになったら、「人の身体に触れるときはひと言同意が必要だし、嫌がられたらやめる」とか「水着で隠れる部分、いわゆる水着ゾーンは簡単に人に触らせてはいけない」という基本的な部分は教えていくべきだと思います。包括的なセクシャリティ教育をしたうえで、思春期の前くらいからプレコンセプションケアを伝えていくのがよいと思います。

どんな人生を生きたいか考えるのが第1歩

――現在の親世代は、性教育をきちんと受けていないと思います。家庭では話題に出しにくいと感じるのですが、どのようにしたらいいでしょうか。

三戸 そうですね。やはりプレコンセプションケアや性教育について、直接的な話を親子でするのは抵抗があるでしょう。まずは、子どもに「将来、どんな大人になりたいか、どんな人生を送りたいか、結婚したいのか、子どもが欲しいのか」といったことを聞いてみるのはどうでしょうか。さまざまな話をすることで、「もしそういう人生を送りたいならこうしたらいいかもしれないよ」とアドバイスがしやすくなると思います。

――たしかにそういう形であれば、話の糸口になりそうです。

三戸 こうした話を親子だけでなく、友だち、教師など、いろいろな人と共有する場面が増えるとさらにいいと思います。性教育を含めたプレコンセプションケアを得る場合、いわゆる「ヘルスリテラシー」といわれる正しい情報にもとづいた知識が大事になります。大人は子どもに比べ経験がある分、正しいアドバイスができる場面も多いはずです。また、子どもには「何かあったときに相談できる、信頼できる大人が最低3人いるといいですよ」と伝えるのもいいでしょう。複数の人がいることで、さまざまな情報を得られ、何かあったときにも1人で不安がらず、安心できるからです。正しい情報を伝えるためにも、子どもだけでなく大人も、ヘルスリテラシーを高める努力は必要です。

少しずつでもプレコンセプションケアを広げていきたい

――現実的に妊娠を考える世代の間では、プレコンセプションケアは広まっているのでしょうか。

三戸 当事者の間では、あまり広がっていない印象です。きちんとした調査があるわけではないのですが、大学などでアンケートをするとプレコンセプションケアという名前自体を知らない人がほとんどです。妊娠前に健康なのがいいのはなんとなくわかるけれど、普通に暮らしていてとくに不調を感じない場合、将来の妊娠出産に関するリスクを実感しにくいと思います。また、現時点では前思春期から20代の若い世代は、健康であることが前提となっているため、若い世代に対する健康診断や検査など、必ずしも充実していないのが実情です。

――妊娠を考えていない人もいると思います。そういう人たちにはプレコンセプションケアは必要ないのでしょうか?

三戸 スウェーデンのプレコンセプションケアの教科書には、男性同士のカップルに女の子の養子がいる家庭の例も掲載されています。「プレコンセプションケアは、人生そのものを考えるなかで、自分にとってパートナーやこどもを得ることが、どんな意味を持つのかを考えるものだ」という人もいます。後悔しないように知識を得て、自分らしい人生を選択していくということです。このように、プレコンセプションケアは決して妊娠・出産することがゴールではなく、妊娠・出産を選択しない人も、さまざまな理由でそれがかなわない人も、すべての人が健康に生きることを後押しするものです。

――国立成育医療研究センターの日本初のプレコンセプションケアセンターでは、検診やカウンセリングも行っているそうです。どんな人が受診していますか?

三戸 さまざまな人が受診してくださっています。すぐに妊娠は考えていないけれど、いずれは考えているというカップルもいれば、不妊治療中のケースもあります。親御さんと一緒に中学生、高校生も来院しています。
以前、中学生のカウンセリングをしたことがあります。2年後くらいに高校生になったその子が「高校生に入ったら、やせるためにムリなダイエットをする子がたくさんいます。私は以前、やせすぎるのは将来の自分によくないと先生から聞きました。プレコンを友人たちにもっと広げたいから、先生にインタビューさせてください」と連絡をくれました。これは本当にうれしかったです。やっぱり、若い人に当事者意識を持ってもらうことが大事だと思います。スタンフォード大学では、若い人が自分事として健康について学べるような工夫を取り入れた教育を学びました。それを応用して、日本人の若者がプレコンセプションケアを学べるプログラムを作っている最中です。少しずつでも広げていけたらいいなと感じています。

――プレコンセプションケアは男性にも必要でしょうか?

三戸 もちろん必要です。男性は妊娠について実感がわかず、当事者意識が低くなりがちです。でも、実は年齢が上がるにつれて妊娠率が下がる、赤ちゃんの染色体異常が現れるのは男性も当てはまります。だから、ひとごとと考えず、自分の健康状態が将来の自分の子どもにも影響するということを自覚し、パートナーと一緒にプレコンセプションケアに取り組んでほしいと思います。

お話・監修/三戸麻子先生

取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部

一般的に、妊娠というと女性のものという意識が強いものです。でも、性別も世代も関係なく当事者意識を持つことが大切でしょう。とくに男性はどうしてもひとごとになってしまいがちです。でも、男性も年齢を重ねることで不妊となる場合もあります。子どものころから正しい知識を持ち、健康で自分らしい生活を営むために、プレコンセプションケアは必要だといえるでしょう。

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