キンタロー。さん夫婦 「妊活は女性だけの問題じゃない!男性不妊のことをきちんと知って」妊活振り返りインタビュー
2020年1月に第1子が誕生したキンタロー。さんご夫婦。
2月にはテレビ番組内で不妊治療の体験を明かし、話題を呼びました。不妊の原因は夫の精子の問題。妊娠に至るまでの道のりと“夫婦で妊活"のホンネをたっぷり語っていただきました。
オンラインでの取材インタビュー前後編のうち、今回は<前編>をお届けします。
妊活振り返りインタビュー キンタロー。さん&キンタロー。旦那さん「妊活は女性だけの問題じゃない!男性不妊のことをきちんと知ってほしくて公表しました」 #1
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2020-2021年版」
仕事を優先して妊活が先送りに
――キンタロー。さんご夫婦は、テレビマンとお笑いタレントというカップル。仕事を通して知り合い、2015年に結婚。キンタロー。さんが34歳のときでした。
●キンタロー。さん(以下キンタロー。) 35歳から高齢出産になるので「すぐにでも子どもが欲しい」と思いましたが、私の仕事が多忙な時期でした。2015年12月に結婚したのですが、翌年6月に舞台が決まっていて、「舞台が終わるまでは子づくりできないね」。その舞台が終わるころに、今度は年末のミュージカルが決まりました。その後はTBS『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』の番組内企画で社交ダンスの世界選手権に出場することに。その間は子づくりができず、どんどん妊活が先送りになっていきました。
●キンタロー。旦那さん(以下旦那) 妻に「この仕事やっていい?」と聞かれると、芸能人として活躍したい気持ちはわかるから「いいよ」と。結果的に3年間は子づくりを我慢せざるをえなかった。最後のミュージカルが終わったころ、僕の中には「そろそろ子どもが欲しい」という確固たる気持ちがありましたね。
●キンタロー。 私は女芸人の先輩たちから「キンちゃんは年齢も年齢だから、検査だけでも受けておいたほうがいいよ」と言われていました。「妊活を始めるときにすぐスタートできるように、先に検査を」って。そこで検査を受けたところ、結果は異常なし。すぐにでも妊活が始められるなと思っていました。社交ダンスが終わって、いよいよ妊活をスタート。まずは自己流でタイミング法から始めました。でも授からない。そんなとき、番組収録でお会いした東尾理子さんから「キンちゃんの年齢だと、タイミング法を2回くらい試して授からなかったら、夫婦2人で検査を受けたほうがいいよ」とアドバイスを受けて。ちょうどそのときタイミング法を2回試していたので、「じゃあ旦那も調べたほうがいいな」と。でも旦那は検査をイヤがって…。
●旦那 僕は典型的な面倒くさがり屋。単に病院に行くのが面倒だった。
●キンタロー。 「え~、大丈夫だろ」と言うから、「いやいや大丈夫じゃないから。検査するよ!」って。それでも「病院なんかにおれのスケジュールは渡せない」みたいな感じだったので、私は病院で「夫がどうしても病院に来たがらないんですけど、どうにかなりませんか」と相談。容器を渡されて、「これに精液を入れて持ってきて」と言われました。旦那のしりをたたいて、朝「出すぞ!」としぼり取って(笑)。病院に提出して、検査結果を待ちました。
●旦那 自分では「悪いはずはない」「そんなに大ごとにはならないだろう」と思ってた。今にして思えば完全に慢心ですね(笑)。
●キンタロー。 まだ2人とも軽い気持ちだったから、私1人で結果を聞きに行ったら、診察室に入った瞬間から空気が重い。先生がすごく深刻な顔をしているから、「え、なんですか !?結果を教えてください」と言ったら、「旦那さんはいらっしゃらないんですか?」「これは旦那さんの検査結果なので、ご本人以外にはお伝えできない」と言われました。びっくりした私が「急いだほうがいいですか?」と聞くと、「できるだけ急いだほうがいい」なんて言う。「何か問題でもあったんですか?」と聞いても、「ちょっと申し上げられないんですが…」。ただならぬ空気を感じました。「委任状があれば家族にも教えられる」と言うので、夫に連絡してすぐに委任状を書いてもらい、病院に戻りました。
●旦那 「委任状を書け」と言われたときもまだ、検査結果を伝えてもらうために必要なだけであって、自分がヤバい状態であるとは思いもしなかった。
●キンタロー。 私は診察室で1人、めちゃくちゃドキドキしていたら、医師から「旦那さんの精子に問題がある。瀕死の精子が1匹しか見当たらない」と告げられて。「え? え!?ちょっと待って」みたいな。
●旦那 「精子がいないよ」と妻から聞かされても、僕はまだぴんとこない。先生から直接言われたわけじゃないし、「その日はたまたま調子が悪かっただけなんじゃないかな」なんて思っていました。
男性不妊なのに女性の負担が大きい!?
――突如突きつけられた「男性不妊」という現実。なぜか余裕を見せる夫に対し、妻であるキンタロー。さんはすぐに行動に移しました。
●キンタロー。 最初に通っていた病院は男性不妊には対応していなかった。精密検査をしなければならなかったので、東尾理子さんがすすめてくれた不妊治療専門クリニックの門をたたきました。
●旦那 さすがに僕も覚悟を決めて、新しいクリニックにはあまり抵抗なく行けました。
●キンタロー。 男性不妊担当の先生から、治療をどう進めていくのかを詳しく説明していただいて。夫の検査と同時進行で、私も血液検査や不育症の検査などを受けました。
●旦那 精子の検査を4回くらい受けたんですが、やはり「数が少ない」。先生が早々に「顕微授精でいきますよ」と方針を示してくれました。
●キンタロー。 私はそれまで男性不妊についてあまり知らなかったけれど、知った瞬間からインターネットで調べまくって「顕微授精じゃないと授かれない」という情報を得ていたので、顕微授精と聞いたときは「そうだよね」という感じ。
●旦那 僕は「どんな方法でも、子どもができればいい」と思った。先生に「子ども、できますかね?」と聞いたら、「大丈夫です。頑張りましょう」と。「1匹でも元気な精子がいれば、子どもはできます」と先生が言ってくれたのが心強かった。
「男性不妊とわかっても、夫を追い詰めたりしたくなかった。いつもと変わらない日々を心がけていました」(キンタロー。さん)
――クリニックに通いながら、キンタロー。さんは“妊娠しやすい体づくり”にも取り組んだそう。
●キンタロー。 私は甲状腺ホルモンの数値が低く、不育症につながるかもしれないということで、甲状腺ホルモンを上げる薬を飲むことに。そして顕微授精に向けて卵子をたくさん採らなきゃいけないから、自己注射も始めました。この注射、12時間おきに自分で打たなくちゃいけない。私はズボラなので、それが大変でしたね。だんだんアザもできてくるし…。男性不妊で治療しているのに、実際は女性の負担が大きい。私は健康オタクで、お酒もそんなに飲まず、タバコもやらずに生活してきたのに「私、薬づけやん」ってイライラ。旦那がケータイをいじったり気楽にしているのを見ると腹が立って、わざと目の前で注射を打ったりもしました(笑)。
●旦那 それを見た僕はもう、いたたまれない気持ちですよ。乏精子症(精液の中に精子はいるけれど、その数が少ないという症状)であることにショックは受けたけれど、僕は精子を出したらあとは見守るしかない。自分に原因があるのに妻がずっと注射を打ったりしているのを見て、ホントにいたたまれない気持ちになりました。僕なりにネットで調べてみると、不妊治療中に夫婦のバランスがとれなくなってギクシャクしてしまうという記事がバーッと出てくるわけです。結局、男性側がやることがなくなって、女性側の負担が大きくなることが原因ですよね。だから何をすればいいかをさらにネットで調べたら、「妻のご機嫌をとる」みたいなことしか書いていない(笑)。だから、ごはんを食べに行ったり、夫婦で出かける回数は増えたと思います。あまり「やってあげている」感を出さずに、なるべく普通に過ごすように努めていましたね。
●キンタロー。 私も、男性不妊だからといって旦那を追い詰めたりはしたくなかった。深刻にならないように、いつもと変わらない日々を心がけていたかな。
キンタロー。さん&キンタロー。旦那さんの妊活インタビュー、続きは<後編>でお届けいたします。
キンタロー。さんの妊活History
●34歳
結婚番組で知り合ったディレクターと結婚。キンタロー。さんの仕事が忙しく、約3年間は妊活できず。
●36歳
妊活スタート最初は自己流のタイミング法から。
クリニックで検査を受け、夫の精子に問題があることが判明それでも夫は「そんなに大ごとではないだろう」と思っていた。不妊治療専門クリニックに転院本格的な不妊治療を始めることを決意。
●37歳
顕微授精にトライついに妊娠が判明!
●38歳
長女を出産!
キンタロー。 Profile
1981年生まれ、愛知県出身。社交ダンスの講師などを経て2011年、お笑いタレントに転身。一人コントやモノマネなどで人気に。芸人としての活動以外にも舞台、ドラマ、声優など、幅広く活躍中。2015年に結婚、2020年1月に長女を出産。妊活体験や育児を綴った夫婦それぞれのブログも好評。
●撮影/長野奈々子
●取材・文/本木頼子