喫煙やアルコールなどの影響よりはるかに高い!? 赤ちゃんを早産から守る妊婦の歯周病ケア【歯科医師】
妊娠中は、ホルモンバランスの影響で虫歯や歯周病になりやすくなっています。妊婦さんが歯周病になると、赤ちゃんが低出生体重児になるリスクが高くなることも! 歯科受診の重要性や、正しいセルフケアについてお伝えします。
歯周病は低出生体重児&早産のリスクが高くなる!
妊娠すると、ホルモンバランスの変化で口腔内の細菌が増加しやすくなります。また、妊娠を維持するためのエストロゲンという女性ホルモンが歯肉を腫れやすくし、歯周病原細菌の増殖を促すこともわかっています。これは、もともと歯のトラブルが少ない人や年齢に関係なく起こり得ること。歯肉が腫れている、歯みがきのたびに出血するなど、気になる症状があれば早めに治療を受けましょう。
歯周病が進行すると、低出生体重児や早産のリスクが高くなることも知られていて、喫煙やアルコールなどの影響よりはるかに高いというデータ結果も!
妊娠中はホルモンの影響で虫歯菌が増殖しやすい
妊娠中は、ホルモンの影響で唾液の分泌量が減り、口の中の酸性度が高くなっています。酸性度が高くなると、虫歯菌が増殖しやすい状態に。また、免疫力も低下しているので、口の中の炎症が起こりやすく悪化もしやすいため、妊娠したら今まで以上にしっかり歯を磨き、お口の健康ケアを心がけましょう。虫歯や歯周病の原因となる歯垢を減らすことは、風邪やインフルエンザ予防になることもわかっています。新型コロナウイルスの原因菌も、歯垢に付着する性質があるため、日ごろから正しくケアをして歯の健康を保つことは、感染症対策にもつながります。
セルフチェックしてみよう
□ つわりで歯を磨くのがつらい
□ つわりが長引いている
□ 口の中がネバネバする
□ マスクをしているときに口呼吸になりがち
□ 歯を磨くと出血する・したことがある
□ 歯ぐきが赤く腫れている
□ 口臭が気になる
□ 定期的に歯科健診を受けていない
1つでも当てはまるものがあればすぐに歯科受診&ケア方法をCheckしよう
妊娠したらなるべく早く歯科健診へ。妊婦の“歯科受診基本のき”
【初期】体調がよいときに早めに受診を!
妊娠初期はつわりや体調不良などで、思うように外出ができない時期。でも、歯の健康維持のためには早めの受診がポイントです。体調がいいときやつわりが落ちついたら、早めに受診しましょう。歯の磨き方などをチェックしてもらうと、日ごろのケアにも生かせます。
【中期】体への負担も少ないのでなるべく早く受診を
妊娠16週〜27週ごろは、おなかもあまり大きくなく、体勢などの負担も少ない時期。時間を見つけて早めに受診しましょう。口腔内をチェックしてたとえ悪いところが見つかっても、この時期からであれば、無理のない治療計画を立てられます。
【後期】治療中の姿勢がつらいときは伝えましょう
おなかが大きい後期は、治療中に姿勢がつらく感じることも。気分が悪くなったら、遠慮せずすぐに伝えましょう。いすの角度や治療時間の調整が可能です。ただ、症状によっては妊娠中に治療が終わらないケースもあるので、気になることがあればすぐに受診しましょう。
歯みがききグセによる磨き残しを減らす正しいブラッシング方法
虫歯や歯周病の予防には、磨き残しなく歯を磨くことが大切です。でも、多くの人が自分流の磨き方で、磨き残しを起こしているそう。正しいブラッシング法のポイントをお伝えします。
【Point1】順番を決めて一筆書きのイメージで磨く
スタート地点は上・下どちらの歯でもOK。上の歯の外側→上の歯の内側→下の歯の内側→下の歯の外側、というように順番を決め、一筆書きをするイメージで磨くのがベストです。正しく歯を磨いて歯垢を減らせば、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなどの感染症対策にも!
【Point2】歯ブラシを小刻みに動かす
歯ブラシをペンと同じように持ち、振動させるように小刻みに磨くのがポイントです。歯と歯ぐきの境にブラシを軽く当てたら、2〜3本ずつ、10回程度を目安に磨きましょう。
【Point3】歯の裏側は、横・縦磨き!
磨き残しやすい歯の裏側はとくによく磨いて。奥歯はブラシを横に、前歯はブラシを縦に当てて、汚れをかき出すように磨きます。舌で触ってザラザラしているところは磨き残しなので、ツルツルになるまでしっかり磨きましょう。
つわりで歯磨きがつらいときは…
つわり中は、よりラクにできる方法を見つけて、可能な範囲でできる限りの歯のケアを行って。以下の方法を参考に、自分にあったやり方を試してみましょう。
小さなヘッドブラシに替える
歯ブラシを口に入れるのがつらいときは、ヘッドが薄いものや小さいものを選ぶと、異物感が多少ラクになることも。反対に、面積の大きい歯ブラシにして手早く磨くのも手。より自分にあった方法を試してみましょう。
気分がいいときにしっかり磨く
歯磨きは毎食後にするのが理想ですが、つわりでつらいときは難しいことも。つわり中は食後でなくてもいいので、気分がいいときにしっかりと磨くと、それだけで違います。
歯磨き粉なしで磨く
歯磨き粉には汚れを落とす洗浄効果がありますが、つわり中は歯磨き粉の香りがつらいことも。その場合は歯磨き粉を少量、もしくはなしで磨いても構いません。
磨けないほどつらいときは
どうしても歯ブラシを使うのがつらい場合は、食後すぐに強めのブクブクうがいをしましょう。抵抗がなければ、マウスウォッシュなどを使ってもOK。
監修/児玉実穂先生&代田あづさ先生 文/早田佳代、たまごクラブ編集部
妊娠中の歯科健診は「いつまでに行く」などの指示があまり明確でないため、いつ行けばいいか迷ってしまう妊婦さんも多いようです。でも、妊娠中に歯周病が進行すると低体重児や早産のリスクが高くなることがわかっています。妊娠したらなるべく早めに歯科を受診し、虫歯や歯周病のチェックを受けましょう。
参考/『たまごクラブ』2021年6月号「妊婦の歯周病ケアが赤ちゃんを早産から守る」
児玉実穂先生・代田あづさ先生
Profile
日本歯科大学附属病院 マタニティ歯科外来 歯科医師。日本医科歯科大学附属病院では、妊婦さんが安心して治療を受けられる環境を整えた、マタニティ歯科外来を設立。