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「俳優・斎藤工が妊娠⁉」男性が妊娠する世界で、私たちは何を思い葛藤するのか

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はじめまして。「妊活/妊娠/育児 × テクノロジー」の文脈で多くのサービスを取材してきた、編集者兼ライターの長岡武司と申します。普段はIT系Webメディアの編集長をやりつつ、今夏で4歳になった娘を共同養育で育てる一児のパパとして、日々楽しく生きています(離婚しているので共同養育という表現にしています。詳細はまた別の機会で)。

実は私は軽度の男性不妊症でして、「シリンジ法キットの活用」というアプローチによって、有り難いことに娘を授かったという経緯があります。そんなわけから、「適切な道具・テクノロジーを必要とする人が最適なタイミングで活用できる社会」であって欲しいと感じ、情報発信をするというメディアの世界で仕事をしています。

そんな私が今注目しているのが、2022年よりNetflixで全世界公開される映像作品『ヒヤマケンタロウの妊娠』。なんとこちら、「男性が妊娠する話」だといいます。

パートナーのお腹が日々大きくなる過程を共に見てきた一人の男として、「男性妊娠」という概念は、どことなく神秘的でありつつも、正直なところ“なんとも言えない違和感”を感じるのも事実です。少し前に天王洲アイルで企画展が開催された現代アーティスト・長谷川愛さんの作品展覧会にて、「イルカを産む女性」(※)の作品を観たときと同じような、「興味はあるし面白そうなんだけど、どこか下半身がきゅっとなるような感覚」を覚えるテーマだと感じました。
※作品名:I WANNA DELIVER A DOLPHIN…

現代アートならばともかく、Netflixということは、僕も含めた一般消費者がエンタメとして観る作品。それにしてはテーマが重くないか?そう感じたわけです。

一体どんな作品として仕上げようとしているのか。今回は、2021年11月10日に行われた「Netflix Festival Japan 2021」での舞台挨拶イベントにお邪魔してきました。イベント当日は犬山紙子さんによるゲストモデレーションのもと、桧山健太郎役の斎藤工さんと、そのパートナーである瀬戸亜季役の上野樹里さん、そして監督の箱田優子さんが登壇。作品に対する思いや撮影中のエピソードなどを語りました。

この“軽やかさ”があれば、本当の意味での問題提起になる

『ヒヤマケンタロウの妊娠』の主人公は、タイトルのとおり、広告代理店でバリバリと働くエリートサラリーマン・桧山健太郎です。この桧山という人物が妊娠をすることで、少しずつ世の中への視点を変えて精神的に成長いくという形で、物語は進んでいくといいます。

男性が妊娠をする映像作品自体は、実は真新しいものではありません。初めて脚本を読んだ時の感想を聞かれた斎藤さんは、「まずは映画『モン・パリ』やシュワちゃん主演の『ジュニア』を観た」と、過去作品をチェックして“男性が妊娠をすること”へのイメージを膨らませていったと言います。その中でキーワードとなるのは「軽やかさ」だと、斎藤さんは強調します。

「内容としては現代社会にアジャストしたものになっていて、とても社会派でありながら娯楽性もすごくある。この“軽やかさ”があれば、本当の意味での問題提起になると感じました」(斎藤)

妊娠のような生命の誕生にまつわるテーマを扱うと、どうしても重厚になる傾向があります。かつて日本テレビ系列で放送されたTVドラマ『14才の母〜愛するために 生まれてきた〜』(※1)では若年妊娠という禁忌なイメージのあるテーマを扱ったことで、大ヒットと同時に物議を醸しました。また最近だと、フジテレビ系列で放送された『隣の家族は青く見える』(※2)にて妊活に悩むアラサー夫婦の葛藤がメインプロットとして描かれ、「子どもを授かることとは?」という大きな命題が提示されました。
※1:2006年10月期水曜ドラマ/主演:志田未来
※2:2018年1月期木曜ドラマ/主演:深田 恭子 松山ケンイチ

ここ2年間はコロナ禍ということもあり、明るい話題の方が少ない時勢です。だからこそ、テーマとして根本的にもつ「重厚さ」を「軽やかさ」で包んであげることは、ロールキャベツよろしく、作品テーマをより味わい深くする上で重要な方針だと感じます。これについては監督の箱田さんも、演出を進める上で最も気をつけていたと、編集真っ最中の立場からコメントされました。

「この作品には原作があるのですが、そこではシリアスな部分が根底にありつつも、漫画媒体を通じてすごくポップにされていて、一気に読めるようになっています。今回配信される全8話では、それぞれ23分45秒くらいの尺がありますが、いずれも勢いとスピード感をもって楽しくいけるものにしている最中です」(箱田)

夫婦ともに成長していく物語

男性が妊娠をするという世界観の中で、もう一つ重要なことは、主人公たちの心の変化でしょう。特に個人的に気になったのは、桧山の妻である瀬戸亜季の変化です。作中の彼女はフリーランスとして頑張って生きているわけですが、そんな中で突然訪れた夫の妊娠に対してどう立ち居振る舞うのか。これについて亜季役の上野さんは、どんな人でも持っているであろう「固定観念」の存在について語りました。

「どう受け止めたら良いのか分からなくて、傷つけたり傷つけられたり。そんな中で、自分が親というものに対して固定観念を持っていたと気づかされながら、亜季自身も成長していく。そんな役どころとなっています」(上野)

役どころの難しさについては、桧山役の斎藤さんからも、妊娠をするという現象への自身の捉え方の変化が語られました。

「実際におなかが大きくなっていくというフォルムを、かなり忠実に再現していただけたので、自分の“行動の重心”が変わっていく様子を強く感じました。大事にするコアの部分が、ちょっとした動き含めて、よりおなかになってくるという。妊娠されている方はそれまでの日常がちょっとずつ変わっていく、ということを擬似体験させてもらい、僕自身も、フォルムが変化していくことで心境も変化していきました」(斎藤)

そんな難しい役作りとなったお二人ですが、現場では役者陣の意見を柔軟に取り入れる環境に恵まれたと上野さんは続けます。

「現場に入ると、もっとこうしたほうが良いよねというのが出てきて。新しいアイデアがどんどんと生まれていくという“ゆとり”を持たせていただきました。ずっとクリエイティブだなと感じる現場でした」(上野)

「誰かにとっての必然が生まれることを願っています」

新たな妊娠物語として、ただいま絶賛製作中のNetflixシリーズ『ヒヤマケンタロウの妊娠』。2022年に、世界190の国と地域で配信予定とのことで、最後に斎藤さんから、本作を楽しみにする私たちに向けてメッセージが送られました。

「この直前にもジェンダーバイアスに関するトレーニングやリスペクト・トレーニングなどを受けていまして、これを作ったことで、また一つの議論だったり、誰かにとっての必然が生まれることを願っています。一方で、軽やかな娯楽でもあるので、楽しんでいただけたら嬉しいです」(斎藤)

あらゆるコンフリクトは「想像力の欠如」から生まれると、私自身、常々感じています。現実ではあり得ない「男性の妊娠」を映像で擬似体験することが、ダイバーシティを許容する社会への第一歩となる。そんなことに期待したい作品だと感じました。


Profile/長岡武司
Webメディア「LoveTech Media」「xDX」編集長。大学卒業後、ドラマ・演劇制作、ITコンサルタント、婚活コンサルタントのマネジャーを経て、2018年に独立。“愛”を感じるテクノロジーサービスを日々追いかけつつ、一児の父としてパートナーとの共同養育を楽しんでいる。

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