斎藤工 主演の話題作『ヒヤマケンタロウの妊娠』制作秘話 監督インタビュー
妊娠・出産をテーマにしたNetflixシリーズ『ヒヤマケンタロウの妊娠』が4月21日(木)よりNetflixで全世界独占配信スタート。坂井恵理さんによる同名コミックスが原作となった本作品。ドラマの見どころや撮影秘話を箱田優子監督、菊地健雄監督に伺いました。
もしも男性が妊娠したら身体はどう変化していく?
箱田優子さん(以下敬称略) このドラマでは男性の身体である、桧山健太郎の変化のリアリティーをこまかく規定していきました。ひげが濃くなったり、おなかが大きくなっていったりするけれど、胸はどうするのか。出産は帝王切開にしよう、授乳はどうするのか、など。私には出産経験がありませんが、たくさんの妊婦さんに会い、スマホの中は妊婦情報だらけ。大事にしたのは、医療的な検証を重ねつつ、エンターテインメントであるこの世界の中でのリアルを突き詰めたことです。
菊地健雄さん(以下敬称略) 自分の妊娠がイメージできないからこそ興味深かったです。参加を決めたのは、わが家でも直近に妊娠出産を経験していたことも大きかったですね。斎藤さんは特殊メイクでおなかを大きくして重さもつけていきました。実際の重さを実感しながら演じていただくことで、普段できている動きができない、といった妊娠した方なら当たり前に感じることにあらためて気づかされました。
斎藤工と上野樹里、二人だからこそのケミストリー
箱田 デリケートな題材だからこそ、主演の斎藤さんや上野さん自身が感じたことも生かさざるを得ない作品でした。
“パーフェクトボーイ”の桧山を斎藤さんが演じることでリアリティーが増しました。上野さんともかなり話し合い、とくに桧山に妊娠を告げられたときの亜季の反応などは議論を重ねました。斎藤さんはジェントルマンで、上野さんは役に邁進するタイプ。演技的なアプローチもまったく違う二人だからこそ、作り上げられていくキャラクターが楽しかったですね。
菊地 斎藤さんは、彼自身がオピニオンリーダーの側面も持っています。映像業界はフリーランスが多く、最近では働き方改革が叫ばれており、出産育児にも課題が山積みです。斎藤さんは撮影現場に託児所を設ける活動を始めていて、この現場でも託児所を開設しました。社会のニーズに合わせて変えていくことは難しい部分もありますが、斎藤さんのようにコツコツと実際に行動を起こしていくことが大切なのだと思います。
「チーム出産育児」を考えるきっかけになれば
箱田 既婚、独身、子どもがいる・いないなど、さまざまな境遇のメンバーが集まり、出産や育児について議論を重ね、自分たちの身を削って作りました。それがそのままドラマに映っていたらいいなと。
菊地 僕も妻になかなか聞けないことを聞くことができたり、一方では、不用意な発言で女性陣から総攻撃にあう瞬間もありました。予想もしなかったことが起きて、それを何とか乗り越えなければならないことは誰にでも起こり得るのではないでしょうか。妊娠出産は人生の大きな転機ではありますが、そのことで女性が何かをあきらめなければならない時代ではないはずです。
箱田 この『ヒヤマケンタロウの妊娠』は、立場を逆転させて“妊娠出産”を違う視点に置いてみることによって、今まで気づかなかったところに気づいたりして、笑ったり泣いたりするのが見どころです。桧山が妊娠したことで二人を含め、まわりも揺らぎ、変わっていく。彼らを見てワーワーしゃべりながら、「チーム出産育児」に向けて、皆さんが考えるきっかけになるドラマになれたらと願っています。
取材・文/望月ふみ たまごクラブ編集部
男女の立場を逆転させて、現代の妊娠・出産問題を考察した社会派コメディードラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』。家族や友だちとドラマの感想を語りながら、「チーム出産育児」を考えるきかっけにしてみて。
参考/『中期のたまごクラブ』『後期のたまごクラブ』『初めてのひよこクラブ』『中期のひよこクラブ』『後期のひよこクラブ』2022年春夏号 たまひよ『チーム出産育児』Specialより
※掲載している情報は2022年4月現在のものです。
ヒヤマケンタロウの妊娠
STORY
舞台は性別にかかわらず妊娠・出産をするようになった世界。広告代理店勤務の独身男性・桧山健太郎(斎藤工)は、ある日突然、自分が妊娠していることを知る。キャリア優先のパートナー瀬戸亜季(上野樹里)とさまざまな問題に直面しながら、二人が妊娠・出産を通して成長する姿をコミカルに描く。テレビ東京とNetflixが共同制作。Netflixで4月21日より全世界独占配信。
箱田優子監督(はこたゆうこ)
PROFILE
CMディレクターを経て『ブルーアワーにぶっ飛ばす』で長編映画デビュー。『ヒヤマケンタロウの妊娠』は初の連続ドラマ作品
菊地健雄監督(きくちたけお)
PROFILE
映画『ハローグッバイ』、ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』『ショート・プログラム』等、精力的に作品を発表している。