お産で後悔しない!マタニティライフの過ごしかた
どうして妊婦健診が大切なの?
妊娠したら、今までと生活を変えたほうがいいのかな?なんて思ったりしませんでしたか?それまでは不規則な生活を送っていたり、仕事を頑張りすぎていたりする人は心配になることもあるでしょう。確かに妊娠したらお母さんだけの体ではありません。お母さんの食べた食事や体調は、赤ちゃんに影響を与えます。おなかの赤ちゃんを守れるのもお母さんだけ。できれば無理をしないで自分の健康管理を大切に考えて、妊娠・出産に主体的に取り組んで過ごしてほしいと思います。
そこで重要なのが妊婦健診です。妊婦健診では赤ちゃんの成長や状態をもちろん診ますが、ママの健康状態もきちんとチェックしています。母子健康手帳に記載される血圧検査、尿検査、体重増加の結果などには大切な健康状態の指標です。
たとえば血圧検査を行うのは「妊娠高血圧症候群」の早期発見のため。妊娠高血圧症候群は予防が難しく、突然発症したり重症化することもあり、場合によっては母子ともに危険な状態になることもある注意すべき合併症です。血圧が上昇しても、症状がないことが多く、健診で測定することはもちろん血圧が高めの人は自宅でも血圧測定をするとよいでしょう。
また、尿タンパクや尿糖の有無からお母さんが「妊娠高血圧腎症」や「妊娠糖尿病」の兆候を診ています。「妊娠糖尿病」に関しては、別にスクリーニングの糖負荷試験を行っています。定期的に妊婦健診を受け、検査の内容や結果を把握し、妊娠中の自分の健康や体の変化に積極的に向き合うようにしましょう。
医師との上手なコミュニケーションのとりかた
妊娠中は体の健康だけでなく、心の健康も大切です。不安や気がかりは早めに解消して過ごしたいですね。そのためのポイントとしては、医師や助産師の説明はしっかり聞いて理解し、信頼関係を築くことです。わからないことがあったら、その場で確認するのがベスト。
また限られた健診時間の中で医師や助産師に質問し、その場で回答を得たいときは、①何を聞きたいのか事前に整理をしておくこと、②聞きたいことが複数ある場合は、それを最初に伝えておくといいですね。質問のタイミングがわからない人は、事前に母子健康手帳にメモしておいたり、付せんに書いてはっておいたりするのもおすすめです。
そして、自分の体の状態、受けている検査の結果などはきちんと理解をしておきましょう。薬を処方された場合、飲むのに不安があったらその場で医師にその気持ちを話したり、もらった薬に間違いがないかの確認を。病院でもらった資料も帰る前に目を通して、不明点があったら聞いて帰りましょう。
赤ちゃんの命の誕生をサポートしてくれる医師や助産師とは上手にコミュニケーションをとり、出産までに信頼関係を築いておきたいものですね。
満足のいくお産とは?
出産が近くなるといろいろと不安な気持ちになってしまうかもしれませんが、頑張るのはお母さん1人ではありません。赤ちゃんも生まれるために一生懸命頑張って産道を進んできます。親子一緒に頑張ろう!という気持ちで出産に臨むといいでしょう。
また最近は立ち会い出産がとても増えて、私の病院でも9割程になっています。パートナーに立ち会ってもらい、新しい家族のスタートを一緒にきってもらうのもいいですね。
ただ分娩方法自体に、あまりこだわりを持つのは考えものです。たとえば自然分娩にあまり強くこだわってしまうと、途中で帝王切開分娩になったときに、気持ちを切り替えられないことがあります。出産の進行中でも、赤ちゃんの状態が悪くなり緊急帝王切開術が必要となることもありますので、最後の最後まで希望の分娩方法で産めるかはわかりません。
帝王切開分娩も分娩様式の一つであって、母体や赤ちゃんのいちばんの安全を考え、選択した結果が帝王切開術だったのなら、それは立派な出産なのです。どんな状況になったとしても、医師や助産師の説明やアドバイスを受け入れ、気持ちを切り替えて最後まで頑張るのが主体的なお産であって「自分で産む!」ということになるのです。きっとよい出産ができるはずです。
主体的なお産がもたらすもの
妊娠するまでの経過は人それぞれで、不妊治療をしてやっと授かった場合もあるでしょう。それでも妊娠・出産はゴールではありません。その後に続く育児が、おそらくいちばん大変な長く続く道のりです。すぐには解決できない困難なこともあるかもしれません。さまざまな選択肢の中から決断しなければいけないことも少なくありません。
しかし、主体性を持ち自分たちで出産するという意識で妊娠経過を過ごした人は、その後の子育ても、自分たちが育てるという意識を持って臨むことができると、私は思います。子どもを出産した経験は、育児を行っていくうえでの勇気と自信につながるはずです。
ただ育児も頑張りすぎは禁物。育児は思いどおりにはいかないものなので、お母さんだけがすべてを背負い込む必要はありません。まわりの多くの人にサポートしてもらい、みんなで子どもを育てていけばいいのです。お母さんが疲れをため込んでしまうと、長い育児を続けていく気力もなえてしまいます。親には、子どもの成長をそばで見守っていく責任があります。
親子の時間を健やかに過ごしていけるよう、産後もお母さんは身も心も健康でいる努力をすることを忘れないでいてくださいね。
監修:笠井靖代 先生
日本赤十字社医療センター 第三産婦科部長
専門は高年出産や出生前の遺伝カウンセリング、母乳育児。著書「35歳からのはじめての妊娠・出産・育児」(家の光協会)「はじめての妊娠・出産 毎日ケアBOOK」(朝日新聞社)など。NHK「すくすく子育て」のコメンテーターとして出演。 「出産はゴールではなく、長くつづく育児のスタートラインにたつことでもあります。妊娠出産の経過はひとそれぞれ違いますから、あまり他の人とくらべすぎずに、ご夫婦で主体的に出産にするという意識を持つことが大切です。そして、楽しく希望を持って育児をしていただきたいです。」
※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。