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移住先のドイツで小児がんと診断された1歳6カ月の息子。余命宣告を受けるも絶対治ると信じ続けた母の思い【体験談】

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福井県で「こどもホスピス」の設立を目指し活動している女性たちのグループがあります。団体名は「ふくいこどもホスピス」。その代表・石田千尋さんは、夫の仕事の都合で行ったドイツで、ひとり息子の夕青(ゆうせい)くん(当時1歳6カ月)がステージ4の小児がんであることがわかり、ドイツのこどもホスピスでケアを受けました。
「もっと早くこどもホスピスを知っていれば、まったく違う闘病生活になったと思う」と言う石田さん。夕青くんの病気の発症からドイツでの治療の様子、ドイツのこどもホスピスでの体験、そして福井での活動などについて、3回にわたってお届けします。

特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも子育てしやすい社会になるようなヒントを探したいと考えています。

ドイツに着いて1週間後、子どもの首に異変が

ドイツで家族揃って。

「元気いっぱいだった息子が、ドイツに移住してたった3カ月後、『この子はもう亡くなるのを待つだけです』と余命宣告をされました。そして、こどもホスピスに行くことをすすめられたんです。
当時の私は『こどもホスピス』がどういうところか、全く知りませんでした。ただ、『ホスピス』という言葉から『治療をせずに死ぬのを待つ場所』だろうと思い、あきらめたくない一心で、そんな所にには絶対行かないと、強く拒絶しました」

そう振り返るのは、2018年9月、ドイツで働き始めた夫の学(がく)さんと一緒に暮らすため、当時1歳半の夕青(ゆうせい)くんを連れて福井から渡った石田千尋さん。夕青くんの様子に異変を感じたのは、ドイツに着いて1週間ほどした頃だったそうです。

「『抱っこー』と言って駆け寄ってきたのですが、顔は正面を向いたままで、目だけで私を見上げていたんです。顔が上げられないようで、首を傷めたのかもしれないと思いました」(千尋さん)

ドイツでは大学病院を受診するには紹介状が必要なため、家の近所にある医院を受診。ドイツ語はできなかったので、片言の英語でやりとりをしました。

「最初の医院では、触診だけして『問題なし』と言われました。さすがに不安で、すぐに別の医院へ。そこに行った時、夕青はおなかが痛いと泣いていていたのですが、処方されたのはなんとカモミールティ。『これを飲んでおいてください』と言われただけでした」(千尋さん)

「その程度の軽いものだったのか」と安心した一方で、やはりどこかすっきりしなかった千尋さん。念のためと思い、3つ目の医院も受診したそうです。

「そこでは『ドイツに来たばかりだから、お母さんの緊張や不安が子どもに伝わっているの。お母さんがもっとどんとしてないと駄目だよ』と言われました。それはあるかもしれないと感じ、早くドイツの生活に慣れようと思いました」(千尋さん)

3つの医院で大したことはないと診断され、やっと安心したと言う千尋さん。しかしその翌週、夕青くんの首が突然、大きく腫れ上がってしまいました。

「近所の医院に行った後だったので、地域の中核の病院で診てもらうことができました。先生が触診したとたん『大学病院を紹介しますから行ってください』と。『今すぐタクシーで』と言われ、わけもわからずその足で大学病院へ急ぎました。ただ、その時はまだ病気だとはまったく想像していませんでした」(千尋さん)

予想もしていなかった「小児がんでステージ4」の告知

小児がんとわかって闘病が始まった頃。

「大学病院に着くと、なぜか首ではなくおなかのエコー検査をされました。30分ほどかかってやっと終わり、帰り支度をしていたら、先生が看護師さんに『キャンサー』と言っているのが聞こえたんです。
『キャンサー』が『がん』のことなのは知っていたので、思わず先生に『この子、治るんですよね?』と聞きました。すると『数年かかかるかもしれないけど望みはあります』と肩をポンとたたかれました」(千尋さん)

その後、主治医から詳しい話をされたものの、専門用語ばかりでほとんどわからなかった千尋さん。ただ、夕青くんがニューロブラストーマ(神経芽腫/しんけいがしゅ)という小児がんであること、リンパに転移していてステージ4であることだけは理解できたそうです。

「夕青は生まれた時から本当に元気で、吐き戻しさえ一度もしたことがありません。その夕青が重い病気にかかるなんて、考えたことすらありませんでした。現実味が全くなくて、本当にわけがわからなくて……。
ただ、以前に近所の医院で『お母さんの不安が息子に伝わっている』と言われたことがすごく頭に残っていて、夕青が「ぼくは重い病気なの?」と不安にならないようにと、一生懸命ふだん通りにしていました」(千尋さん)

病気の告知に大きなショックを受けてはいたものの、その一方で「今は医療の進歩で小児がんは乗り越えられる時代だから大丈夫」とも思っていたと千尋さんは言います。
そのため、「日本に帰るなら今日か明日のフライトに。それ以降は機内で病状が悪化する恐れがあるので帰せません」と言われた時も、すぐにドイツで治療を受けることを選択しました。

「ドイツは医療レベルが高いですし、小児がんは治る病気になっているから、ここで治療を受けた方が良いと思いました。夕青は小児がんにはなったけれど、必ず治ると信じて疑ってはいませんでした」(千尋さん)

夕青くんは帰宅することなくそのまま入院。千尋さんもその日から泊まり込みの付き添いが始まりました。

治療スタートのわずか3カ月後に、突然の余命宣告

12月・入院中。病室でお父さんと車遊び。

すぐに抗がん剤治療が始まりました。最初はどんどん病状が良くなり、それまではだるそうに寝ていることが多かった夕青くんが、話したり食べたりできるように。順調に治療が進み、3回目の抗がん剤治療を終えて、自宅に帰ることが許さました。

ところが、自宅に戻るとすぐに鼻から出血が。救急外来を受診し、大きな問題はなく帰宅できたものの、その後も体調がすぐれませんでした。そして自宅療養を始めて10日目、突然夕青くんが大量の鼻血と嘔吐で苦しみ出したのです。

「救急車で病院へ運び、検査をしたところ、抗がん剤の効きが落ちてきていると言われました。そのまま入院し、他の抗がん剤に切り替えましたが、なかなか思うような効果は得られなくて、使える薬が少なくなってきていることを感じました」(千尋さん)

そして、初めて入院した時からわずか3カ月後の2018年12月31日、大晦日の午後に、千尋さんは突然、余命宣告をされてしまいます。

「お医者さんが洗濯機のような大きな機械を病室に運び入れてきて、急に検査を始めたんです。その後、『腎臓の状態は良くなってきているけど、がんが転移した肝臓の状態が悪くなっています。この子は亡くなるのを待つだけです』と……。英語でしたが、その言葉ははっきり理解できました」(千尋さん)

あまりに突然の宣告。そしてそれは、夕青くんは治るという希望を完全に否定し打ち砕くものでした。それまでずっと冷静さを保っていた千尋さんが、この時初めて取り乱したと言います。そして、「今すぐ手術してください!」と医師に迫ったそうです。

「お医者さんたちはすごく冷静に『ドナーがいないから手術はできません』って言うんですよね。それで思わず『目の前にいるでしょ!私から生まれたんだから、血液型は違っても肝臓は合うでしょ!』って叫んでいました。日本語で言っても通じるわけないのに……」(千尋さん)

千尋さんは別室に連れて行かれ、今までのレントゲンなどの資料を見せられて、夕青くんの病状がいかに厳しいかを淡々と説明されました。そんな医師たちの様子に強い不信感を覚えた千尋さん。「ここの人たちが助けてくれないなら、アメリカへ行って手術してもらう」と本気で考えたと言います。

さらに翌日、千尋さんの元に病院の副院長が訪ねてきて「ドイツには『こどもホスピス』というものがあり、最期の時間をそこで過ごすことをおすすめしています。1回行ってみてはどうですか?」と言われました。

「当時の私は『こどもホスピス』がどういうところか、全く知りませんでした。ただ、ホスピスという言葉から、終末医療をする所、『治療をせずに死ぬのを待つ場所』だろうと。
どうしたら夕青に生きるための治療を受けさせられるか、助けられるかと、そればかり考えていたのに、死ぬのを待つだけの場所になど行くわけがありません」(千尋さん)

その場で「治療を諦めてないので、こどもホスピスには行きません!」ときっぱり断わり、「病院が夕青を治してくれないなら、私たちで何とか方法を探す」と改めて強く決意したと、千尋さんはその時のことを振り返ります。

しかし、手の施しようがないことから、病院は夕青くんの治療をストップ。千尋さんの助けたいという強い思いと逆行するように、夕青くんの体調はどんどん悪化していきました。


写真提供/石田千尋 取材・文/かきの木のりみ たまひよ編集部

ドイツのこどもホスピスへ行くことを拒否した千尋さんでしたが、夕青くんのあるひと言がきっかけとなって、ドイツ・デュッセルドルフにある子どもホスピス「キンダーホスピス レーゲンボーゲンラント」へ向かうことに。
次回は「キンダーホスピス レーゲンボーゲンラント」へ行くことになった経緯と、そこで受けたケアによって夕青くんと千尋さんに起こった変化についてお伝えします。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

石田千尋さん

ふくいこどもホスピス代表
2019年、第一子の夕青くんが1歳半の時にドイツで神経芽腫という小児がんを発症。ドイツのこどもホスピスを利用し、重い病気と闘いながらも家族で楽しく過ごすことのできる環境の尊さを実感。帰国後、地元福井にて「ふくいこどもホスピス」を作るべく活動を続けている。

■ ふくいこどもホスピス:https://www.fukuikinderhospiz.com/

■ ふくいこどもホスピス Instagram :https://www.instagram.com/fukui.kinderhospiz/

■ ふくいこどもホスピス Facebook :https://www.facebook.com/fukui.kinderhospiz/

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