妊婦が安心して過ごせる社会を目指して 「マタニティケアラー」資格がスタート!
マタニティ&ママのため鍼灸マッサージサロン「天使のたまご」代表で、現在44才で第3子を妊娠中の藤原亜季さんが、妊娠中の女性が安心して過ごせる社会を目指して、「マタニティケアラー」という資格検定制度を立ち上げました。
「どういう人に向けた、どんな検定なの?」「妊婦にとってのメリットは?」という基本情報から、藤原さんが考える「妊婦にやさしい理想の社会」についてまで、たっぷり話を聞きました。
妊婦さんにかかわる人や手助けしたいと思っている人に向けて、正しい知識を伝えたい!
――「マタニティケアラー」という資格検定制度を立ち上げたということですが、どんな人に向けた、どんな資格でしょうか? 立ち上げようと思ったきっかけも教えてください。
藤原さん(以下敬称略)「妊婦さんが困っているときにすぐ手を差し伸べてあげられる人」になることを目標とした資格です。妊婦さんの接客をする人、たとえば、ホテルや航空会社、ブライダル関連業などで働く人たちが、自信を持って妊婦さんのサポートができたら、妊娠期間を安心して過ごせる妊婦さんがたくさんいるのでは…という思いで立ち上げました。
きっかけは素朴な疑問から。妊婦さんって、電車でも、街を歩いていても、日本中どこにいても遭遇する機会が多いのに、「妊婦さんをサポートできる専門知識を持っている人ってどのくらいいるんだろう…」と思ったんです。
実際に、仕事で出会ったブライダル企業の方へ、現場で働く人たちへのヒアリングをお願いしました。ふたを開けてみると、挙式をする人の3~4人に1人は妊婦さんらしいのですが、現場のスタッフは妊娠・出産経験がない人も多いとのこと。「妊婦さんの接客は気を使うようにはしているけれど、常に『大丈夫かな?』と不安を感じる」という声も聞こえてきたんです。
そこで、接客に携わる人たちに、妊婦さんの体のしくみや変化、症状や妊娠周期に応じてどう接するのが正しいかを教えてあげることができたら、もっと自信を持って接客できるし、接客を受ける妊婦さんも安心できるんじゃないかな…と。「それを広めるにはどうしたら…」と考えたときに、資格をつくって、多くの人がその資格を持っていたら、安心して過ごせる人が増えるのでは…と考え、資格検定制度をつくることにしました。
1人でも多くの人に資格を取ってほしいから、気軽に受講できるシステムに
――研修の内容や検定の問題などは、どのようにして考えたのでしょうか? こだわったことなどはありますか?
藤原 資格を取るための研修や検定の内容は、医療的な専門知識というよりは、一般の人が妊婦さんと接するときに生活の中で必要になりそうなことを医学的根拠も織り交ぜながら盛り込んでいます。講師でもある私、私の夫で産婦人科医の日下 剛、同じく産婦人科医の竹内正人先生の3人で考えました。
「妊婦さんが食べてはいけないもの」「どういう栄養を積極的にとるといいのか」という基本情報から、「妊婦さんが体調悪そうにしゃがんでいたらどう接すればいいか」など。とくに「困ったときにすぐ手を差し伸べられるように」ということを意識していて、「妊婦さんに『病院に連絡してください』と言われたときに、母子健康手帳のどこを見たらいいか」などが具体的にわかるような内容にしています。
なるべく多くの人に資格を取ってもらいたいから、だれでも気軽に受講して資格が取れるということにもこだわっています。
研修はすべてオンラインで受講でき、5~10分程度の短い動画を13本見るだけなので、自分の都合のいいすき間時間などで受講できるし、期間中は何度でも視聴できるようになっていて、いつでも復習ができます。ソムリエバッジのように目印があったほうが、妊婦さんからも声をかけやすいかな…と思い、資格取得後は「マタニティケアラー」の資格バッジが付与されるんですが、その費用も全部入れて1万円で資格取得ができます。また、アートディレクター山城葉子氏を起用して、ロゴジュエリーもつくりました。
航空会社や、ブライダル企業、ホテルやレストランなどのサービス業に携わる人たちに受けてもらえたら…と思っていましたが、育児用品店や保険会社、保育園で働く人からも問い合わせがきていて、私たちが思っている以上に、妊婦さんと接する人はたくさんいるんだと感じました。もちろん、仕事ではなく、「困っている妊婦さんがいたら助けたい」という人や、「家族や身近な人が妊娠したから」という人にも受けてもらえたらうれしいです。
妊婦さんが幸せな気持ちで出産できるようにケアをしたい!
―――藤原さんご自身も、今、第3子を妊娠中とお聞きしました。ご自身の妊娠・出産経験なども、「マタニティケアラー」の立ち上げのきっかけになっているのでしょうか?
藤原 私自身、2年前に42才で15年ぶりに第2子を出産して、今44才で第3子を妊娠中です。もともと、私はマタニティ専門の鍼灸マッサージサロン「天使のたまご」を通して、ずっと現場で妊産婦さんのケアをしてきました。第2子の出産後は以前よりもサロンに立てなくなったこともあり、企画を考えたり、講演やトークイベントに誘っていただいたり、これまでとは違う仕事をするように。異業種の人と会う機会も増えました。
以前から鍼灸師さんや助産師さんなどの医療従事者に向けて妊婦さんへの施術を教えるスクールを主宰していましたが、もっと多くの人に妊婦さんのケアの大切さを知ってもらう機会が増えれば、直接じゃなくても妊婦さんを幸せにすることができるのかな…と思うようになったのです。
それに、どんどん少子化が進んでいる日本では、妊娠・出産・育児って、社会全体で取りくんでいくべき問題だと思うので、いろいろな業種の人たちと協力して「子どもを産んで育てやすい社会」をつくることができたら…という思いも。女性の幸せのあり方も多様化しているから、結婚して出産することだけがすべてではないですが、「産みたいと思える人が産める」「産んだ人がもう一人産みたいと思える」社会になれば、少しは少子化に歯止めがかかるんじゃないかなぁと。
私はマタニティケアの専門家だから、妊婦さんを理解してケアして社会で守っていけるように「マタニティケアラー」という資格検定制度をつくったけれど、障がいがある人、闘病している人、シニアの人…いろいろな「ケアラー」があってもいいのかなって。「助けを必要としている人がいるけれど、わからないから助けてあげられない」ってことは意外と多いと思うんです。「手を貸しましょうか?」と声をかけたくても何もできなかったという経験がある人もいるのではないでしょうか。
お互いが思いやりを持って支えていけるような社会になってほしいな…という願いを込めて、まずは妊婦さんのための「マタニティケアラー」を広めていくことが私の使命だと思っています。
妊婦が安心して過ごせる社会を目指して…
「マタニティケアラー」のイメージビジュアル。1人でも多くの人に知ってほしい…そんな願いでつくりました。
マタニティケアラーの研修イベントも開催
10月に「マタニティケアラー」の研修イベントを初開催。アンバサダーの望月芹名さんとトークショーをしました。
「マタニティケアラー」のオリジナルジュエリーも
「マタニティケアラー」バッジとは別に、賛同者の意思表示としてのオリジナルジュエリーも販売。山城葉子氏のデザインです。
「マタニティケアラー」の講習内容は、産婦人科医の夫と考えました
産婦人科医の夫と、第2子の“てんちゃん”と。「マタニティケアラー」の講習内容は、お産のプロでもある夫にも考えてもらいました。
お話・写真提供/藤原亜季さん 取材・文/渡辺有紀子、たまごクラブ編集部
もうすぐ2才になるお子さんの育児をしながら妊娠中もパワフルに挑戦し続ける藤原さん。第2子を授かるまでは不妊治療を経験し、異所性妊娠や流産も経験するなどの苦労があったそうです。そして、44才で授かった第3子はなんと自然妊娠とのこと!
藤原さんの話からは「妊婦さんを幸せにしたい」という熱い思いが伝わってきました。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
藤原亜季さん(ふじわら あき)
PROFILE
「天使のたまご」グループ代表。医学博士、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、アロマセラピスト。1978年京都生まれ。大学卒業後に鍼灸マッサージ師の資格を取得。自身の妊娠・出産経験を活かして、産婦人科内でマタニティケアに携わり、2006年に銀座で「マタニティ&ママのための鍼灸マッサージ院 天使のたまご」を開院。2020年に第2子を出産、現在第3子を妊娠中。